426 / 454
第十話 誰かこの暴君を殴ってくれ!
06
俺はどうにか三初を酔わせてバグらせ、ここぞとばかりに天邪鬼スイッチをオフにしたいという計画を目論んだ。
三初が洗い物を終えてシンクを洗っているのを横目に、スッとケツポケットから小瓶を取り出す。
これは、暴君印のナイスなプレゼント。
安全性保証付きの、貰いたてほやほやな媚薬であった。
クックック、渡した自分を恨むんだな。
普段俺に媚薬入りローションやら興奮剤やらを使って更にショッキングな道具でコラボさせているのだから、仕返しされても文句は言えまい。
酒の力で気が大きくなり、なんだったらバレても締め落とすくらいの気概を見せる俺は、無敵だった。
やり口は完全にチンピラのそれである。
酔わせてヤるという目的も、完全にそれである。
そーっとサングリアが入った三初のグラスを手に取り、数滴が目安だという小瓶をとにかくシェイクして三分の一ほど投入した。
だいたい、十倍ほど。
いや、だって三初だぜ?
象も殺すなんていう毒を盛られても「ちょっとだるいですかね」とか言って薄ら笑いを浮かべていそうな、あの三初だぜ?
「は。股間爆発させる気じゃねぇとな」
キュッと小瓶の蓋を閉めて、元通りポケットの奥へ封印する。
素知らぬ顔でグラスも三初の席へ戻すと、俺はミッションコンプリートの清々しい気分で自分のグラスに注いだ清酒を煽った。
勝利の美酒に酔いしれるにはまだ早い。
が。もう貰ったも同然の勝負だ。
シンクを磨き終えた三初が酒盛りを再開するために席に戻ってきたのをじっと見つめながら、おかわりを注ぐ。
テーブルに行儀悪く肘をついた三初はグラスを手に取ったが、それに口をつける前に俺を見つめ返して目を細めた。
「なぁにメンチ切ってんですか」
「切ってねぇ。黙って飲んでろ」
「生意気な口のきき方だなぁ……普通に酔ったら強情度が倍増するんですよね」
「うるせぇ。噛むぞ」
低い声でしょっぱく突き放す。けれど三初がダメージを負った様子はない。
俺が飛び切り冷たくしたって、三初はむしろ嬉々としてそれを崩す遊びを始めるだけだと知っている。
(チッ。興味が酒から俺になっちまう。これだからいじめっ子は面倒だぜ。顔面を掴んで飲ませちまいてェ……)
過激思考になっている俺は、三初から逸らした視線をなかなか飲まれることのないサングリアのグラスへ移した。
無味無臭で無色透明のいかがわしい薬は、酒の色を変えずにそこにあるままだ。
薬が入っていなければ俺が飲み干したいが、俺の酒のキャパシティはもうこの最後の一杯でおそらく限界を迎えるだろう。経験上。
そんなのはダメだ。全然ダメだ。
グラグラと揺れる頭が眠気を訴える。
眠気を首を振って振り払い、俺は自分が抱えているもう残り少ない一升瓶を、こちらを出方を伺う三初にチラリと見せつけてみた。
「これ、飲んだら俺は、たぶんまずい。もう限界な感じだ」
「でしょうね。いつもこの後黙って揺れ始めて、口を開くとバグってますから」
「ほざけ、クソが。……だから、お前にこれをやる。この最後の一杯をやるから、グラス貸せ」
「あらら。珍しいじゃないですか」
不本意ながらグラスを空けさせるために自分の酒を差しだすことにした俺の言葉に、三初は愉快気に口角を上げる。
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。