新緑の光と約束~精霊の愛し子と守護者~

依羽

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4.再会

side:レオ

 今日、最近ではすっかり恒例になったルカの手作り弁当を持ち、いつも通り狩りに出かけた。ここ数年は鍛錬も兼ねて、ひとつ山を越えた先にある森まで範囲を広げている。――ルカに迎えに来てもらえない距離になってしまったことは寂しいけれど、効率よく強い魔物を狩れる方が都合がいい。
 狩りをし、解体をし、ハンターギルドで換金する素材と自分たちが食べる分の肉を別に分ける。昔は獲った魔物を担いで帰っていたけれど、今では地道に貯めた金貨で買った魔法バッグに全て収納することができる。高い買い物だったが、これのお陰で随分と楽になったものだ。
 ある程度作業を終え、ルカの弁当――今日は卵とレプス肉のサンドイッチだ――を食べていた頃、雲行きが怪しくなってきた。ハンターギルドに寄るのは明日にして今日は真っ直ぐに帰ることを決め、帰り支度を急いだ。

 
 *
「うわああああぁっ」

 案の定、雨が降り始めて来たので少し駆け足で家に向かっていると、家まであと数キロというところで誰かの叫び声が聞こえた。思わず声が聞こえた方に向かうと、少年がウルルスに襲われていた。ウルルスは、四つ足の魔物とは違い二本足で立つ魔物だ。全長2m以上あるものも多くて、皮膚が硬く力も強い。また、走るときには四つ足になるため足も早く、1度狙われてしまうと困難な厄介なやつだ。

「逃げろ!!!」

 矢を射りながら叫ぶと、少年がこちらに気付く。水魔法を纏わせた矢がウルルスの腕に刺さり、ウルルスもこちらを見た。が、それも一瞬だけですぐに少年の方に向き直す。どうやら狙いを変えるつもりはないらしい。
 仕方がないので、地魔法を使いウルルスの足を固定し時間を稼ぐ。

「何をしている!早く逃げるんだ!」

「あ……あ……、っ」

 どうやら腰を抜かしてしまっているらしい。あれだけの巨体に襲われてしまったら無理もないが、あの状態の少年を助けるとなると早急にウルルスを倒すしかない。もう1度、今度は先ほどよりも強い水魔法を纏わせて矢を射る。
 それが胸に命中し、ウルルスが倒れた。ホッとして少年の元に駆け寄る。

「大丈夫?」

「お陰様で……すみません、助けてくださりありがとうございます」

「気にしないで。困ったときはお互い様だからね。でも、何があったの?」

「ちょっと……家にいるのが辛くて。気分転換に外に出たんですけど、山に入ったら道がわからなくなってしまって。雨が降って来たし早く帰ろうと思ったんですけど……アイツが、現れて」

「そっか。怖かったね、でももう大丈夫。ずぶ濡れだし、1回俺の家においでよ。ここ、真っ直ぐ行ったらすぐだから」

 そう言って、手を差し出したとき――

「危ない……っ!」

 背中が、熱くなった。一瞬、何が起きたかわからなかったが、後ろを振り向くとウルルスが手を振り上げ、もう一度こちらに振り下ろそうとしているところだった。
 咄嗟に弓を引く。魔法を纏わせる余裕はなかった――はずだった。弓を射るとき、今まで見たことのない緑色の光が矢を覆う。それは一直線にウルルスに向かい、すごい勢いで頭を撃ち抜いた。

 ――覚えているのは、そこまでだった。そこで意識は途切れ、気が付いたら目の前にルカ天使がいた。
 泣いているルカを宥めながら状況を聞くと、どうやら俺は気を失い、家まで背負われてきたらしい。だが、背中をえぐられる痛みを感じた記憶はあるのにどこも痛くない。破れたはずの服にも、傷ひとつないのはどうしてなんだろう。

「レオにぃ、痛いとこない?」

「うん、どこも痛くないよ。君、ここまで連れて来てくれてありがとう。大変だったでしょ?ごめんね」

 レオの頭を撫で安心させながら、祖父母と並んで立ったままでいる少年に声を掛ける。

「い、いえ!僕の方こそ、助けていただきありがとうございます。貴方が助けてくださらなかったら僕は死んでいました……っ危ない目に合わせてしまい、申し訳ありませんでした」

「わ、やめてよ!顔を上げて。ほら、俺はもう大丈夫だから。ね?」
 
 膝と手を床につき、額をこすりつけるように謝罪する少年に慌ててしまう。あれは、油断した自分の責任だ。
 反省していると、祖母がタオルと着替えを2人分持ってきてくれた。着替えをしつつ、恐縮しながら着替えを受け取っている少年の顔をじっと見る。……どこか、見覚えのある少年の顔。燃えるような赤い髪。見覚え、というか、面影、というか……。
 
 
 *
「ところで、君の名前は?」

 祖母が出してくれた温かいスープに一息つきながら、改めて少年と向かい合う。

「あ、申し遅れました。僕はフェリクス。フェリクス・フラムベルトと申します」

「――っフェリクス・フラムベルト……」

 少年の後ろで、祖父母も息を呑む。フラムベルト……それは、俺の生家であり。フェリクスは、俺の弟の名前だった。
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