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いつもより早めに鳴らしたアラームに起こされる。朝は苦手。
やっぱりまだ起きたときの気だるさはあるけど、初日よりはましだった。気持ち的なものもあるかもだけど。
夜叉姫くんが、早めに起きて早めに薬飲んだほうがいいよっていうから、早めに起きた。昨日様子見で休んだけど、結構いけそうだったから今日は大学に行くつもり。
朝ごはんを食べて、薬を飲む。しばらくぼんやりしてるうちに、だるさは減って、頭も軽くなる。医学の進歩に感謝しながら家を出て電車に乗る。
そういえば、一ノ瀬さんに時間あるときちょっと会いたいって言われてたんだった。ちょうどヒートのときに連絡もらったから後回しにしてた。
『今日大学行くけど、時間ある?』
『サークルあるけどその前なら!』
即レスすぎてびっくり。一ノ瀬さんもちょうどスマホ見てたのかな。
『別に今日じゃなくても暇だよ、俺』
『んー、なぎぎがいいなら今日がいいかも』
『じゃあ今日で』
『どっかはいる?』
『なんでもいい』
『カフェとかどう?』
『大学のなかのとこ』
大学の中にカフェ入ってるんだった。なんか、安くておいしいって噂だけど、一人で行く気にもならなくて行ったことない。
『いこ』
…猫のスタンプが送られてきた。めっちゃ目つき悪いんだけど、これでいいのかな。女子ってかわいいの使うイメージある。サンリオ?とかもかわいいのが多いじゃん。こいつ、目つき悪すぎる。でも、黒猫だし、なんかちょっと先輩に似てる気がしてきてかわいく見えてくる。
「白瀬。体調どうだ?」
教室でぼんやりしてたら、神崎に話しかけられた。そっか、この授業は神崎もとってたっけ。
「元気だよ」
「そうか」
「どうしたの?」
「それだけだ」
え、俺の体調聞くためにわざわざ最前列からここまで来てくれたの?
「…神崎って優しいね」
「…気のせいだ」
「そう?うれしかったよ」
「…そうか。なんかあったら頼れよ」
「?ありがと」
神崎って、ツンデレキャラなのかな。相変わらずニコリともしないけど、わざわざ会いに来てくれるとかめっちゃいいやつじゃん。神崎が動くのってほとんどないから、周りもチラチラ見てるし。レアイベント発生って感じ。
最後の授業が終わって、カフェの方に向かう。一ノ瀬さんはすでに来てて、店の外で待ってた。
「ごめん。待たせて」
「ううん!ごめんね時間取らせて」
「べつにいいよ」
カフェの中はそれなりに人はいたけど、2人で座る席はいっぱいあったから簡単に席を取れる。
「なんか頼む?」
「一ノ瀬さんはここ来たことあるの?」
「うん。結構来るよ」
「おすすめないの?」
「んー、チョコラテおいしいよ」
「あとはね、パフェ」
「そっか。じゃあチョコラテ?にする」
「そんな簡単に決めていいの?」
「もっとメニュー見なよ」
「見ても決められないから」
「おけ」
一ノ瀬さんは慣れた感じでパフェと紅茶を頼む。
「なんか、あったの?」
一ノ瀬さんに何かしたかな。
「えっとね、ちょっとお願いがあってね」
「うん」
「宵紗先輩に、学園祭に出てほしいの」
「それの交渉手伝ってくれないかなって」
「俺が?」
「無理強いはしないよ!もちろん」
「でも、なぎぎが頼んでくれたら確率上がるから」
「先輩が出るって何するの?」
「バンドして欲しいの」
「…先輩って楽器できるの?」
「高校のときギターやってたって」
「そうなんだ」
先輩ってギターできるんだ。かっこいい。でもちょっと意外かも。なんか、どっちかって言うとドラムとかベースとかやってそうだと思ってた。
「やっぱ、難しいよね」
俺が黙ったから、一ノ瀬さんは申し訳なさそうな顔で微笑んだ。
「ううん。俺も見てみたいから頼んでみる」
「まじ?!」
「うん」
「神!なぎぎ神!」
一ノ瀬さんは目を輝かせて身を乗り出してくる。突然の勢いについ驚く。
そこに頼んだやつが届く。チョコラテは甘い香りで美味しそう。飲んだら、思ったよりチョコの苦みがあって、風味が強くて美味しい。
「おいしい」
「そ?よかった」
一ノ瀬さんはニコニコしたままパフェを食べ始めてる。ギャル?の見た目にイチゴのパフェが似合ってる。
「なぎぎも食べる?」
「何を?」
「これ」
一ノ瀬さんはパフェを指し示す。
「え?いいよ」
「申し訳ない」
「えー?私はいいよ」
「ほら、スプーン」
スプーンを差し出されて、なんか断りづらくて受け取っちゃった。
「ほら、とって」
「…いただきます」
端っこをもらうと、カスタードとイチゴの味がしておいしい。
「ど?」
「おいしい」
「だよね」
「よかったの?俺食べて」
「シェアハピー」
一ノ瀬さんに満面の笑みとピースで言われて、なんかわかんないけど楽しい人だなって思う。いるだけで周りが明るくなってすごい。あんまり近くにいなかったタイプ。明るい人って賑やかなことが多かったから。
「なんで宵紗先輩がバンドしてたって知ってるの?」
俺と違って一ノ瀬さんはよく人に囲まれてるし、顔が広そうだから、噂とかで知ってるのかな。先輩がバンドしてたっていうのは有名な話なのかも。
「えっとね…」
急に一ノ瀬さんは目線をそらして口をゴニョゴニョさせてる。いつでもハキハキしゃべるんだと思ってたから、見たことない姿。
「初恋なんだよね」
「え?」
「中学のとき先輩のこと好きでさ」
まさかの告白でびっくり。
「学校一緒だったの?」
「ううん」
「何で知ったの?」
「話聞いてくれるの?」
「一ノ瀬さんが話してくれるなら」
「ほんと?じゃあ話していい?」
「うん」
なんかわかんないけど、一ノ瀬さんの初恋エピソードを聞かせてくれるらしい。
「あたしの学校のグラウンドで、サッカー部の練習試合みたいなのをしてたのね」
「対戦相手が先輩のいる学校でさ、一目ぼれ」
一ノ瀬さんはちょっと照れてるけど、にこにこしてるからきっといい思い出なんだろうな。
「ほんとかっこよくてさ、どんどん点とるの」
「先輩運動できるんだ」
「そーだよ!10番だったんだから」
「…10番?」
「知らない?」
「サッカーわかんない」
「エースナンバーだよ!一番上手い人がつける背番号」
「先輩エースだったってこと?」
「そう!マジかっこよかったんだから」
「見てみたかったな」
「…動画あるよ」
「…盗撮?」
「え!違うよ!」
「あたしの学校のやつ撮りたくて!仲いい人いたし!」
「あたしマネージャーの子と仲良くて!」
一ノ瀬さんはすごい慌てて弁明し始める。いや、そんな深い意図はない発言だったんだけど。
「いや、気にしないで」
「冗談」
「そうだよね!」
「見る?」
「見たい」
「待ってね。探す」
一ノ瀬さんはスマホを出してちょっと操作してすぐこちらに向ける。今の速さは、探したわけじゃなさそう。初恋って言ってたけど、今も好きなのかな。そうじゃなきゃ中学の時の映像とかすぐには出てこないんじゃないかな。
「これ」
「マスクしてない」
「そう!高校からつけ始めたみたい」
動画の中の先輩はマスクしてなくて、ピアスも一個もない。中学生だから当たり前か。いつも長袖黒尽くめって感じだから、青いユニフォームが見慣れない。でも、1人だけおっきくて、骨から強そうな感じは変わってない。前髪がめっちゃ長くて目元が見えないのも。
パス回されたら、確実にゴールを決めてる。サッカーは何も分かんないけど、多分うまいんだと思う。いつものそのそしてる先輩が、すごい俊敏に動いてるから別人みたい。
「すごいね。ありがと」
「かっこいいでしょ」
「それから追ってたってこと?」
「ん?そうだね」
「高校も同じとこ受けようと思ったんだけどさ、あたしバカすぎてやめた」
「そうなの?」
「うん。先輩めっちゃムズいとこ行くんだもん」
「だから高校3年間はめっちゃ勉強してさ、絶対同じ大学行くんだって」
「それでここにしたの?」
「うん。あたしがやりたいことできる学部あったし」
「すごいね」
「ストーカーまがいだけどね」
「一ノ瀬さんなら許されるんじゃない?」
「何基準?」
「ウケる」
「ねぇ、一ノ瀬さんはさ、今も好きなの?先輩のこと」
「んー、」
「好きだよ」
「…そうなんだ」
一ノ瀬さん、俺が先輩にベタベタしてるの嫌だったかな。あれだけ噂になったし、たぶん一ノ瀬さんの耳に入ったこともあると思う。たぶん、嫌だよね。
「でもさ、気にしないでほしいの」
「もう諦めてる」
つい俯いてたけど、顔を上げたら一ノ瀬さんは笑顔のままだった。
「なんで?」
「叶わないもん。先輩はあたしのこと好きじゃない」
「そうなの?」
「うん。1回ね、告ったの」
「でも、恋人として愛してあげられないかもって」
相手のこと考えて振るの、先輩らしいかも。来るもの拒まず去るもの追わず、みたいな雰囲気あるけど、こういうことはちゃんとしてる人だから。告白されたから好きじゃないけど付き合うみたいな、雑な恋愛しない人なんだ、きっと。
「…先輩らしいね」
「でしょ?もっと好きになっちゃった」
「諦めちゃうの?」
「うん」
「あとね、先輩には番持ってほしいなって」
そっか。一ノ瀬さんはαだから。α同士は番になれない。α同士の恋愛とか結婚とか、いっぱいいる。でも、番にはなれないんだ。
「…そっか」
「ちょっと!そんな顔しないの」
「え?」
「なんでなぎぎが苦しい顔するの」
「あたしは先輩のこと見てられるだけでいいの」
「一ノ瀬さんって、結構ピュアなんだ」
「そーかも。ずっと初恋拗らせてるもん」
一ノ瀬さんは強い人だな。叶わないって割り切って、相手の幸せを願えて。叶わないって思った恋でも大事にできて。
「なぎぎはさ、先輩のこと好き?」
「…どうなんだろ」
「先輩としては好きかな」
「なぎぎのこと見る先輩の目、めっちゃメロいの」
「そうなの?」
「うん。だから、あたしのこと気にして距離とったりしないでね」
「…ありがとう」
「一ノ瀬さんって、すごくいい人」
「えー?そう?」
「まぁ、頼ってくれれば手は貸せるよ」
「頼もしいね」
「そ?」
「うん」
パフェを食べてる一ノ瀬さんはすごく可愛いけど、同時にすごくかっこよかった。
やっぱりまだ起きたときの気だるさはあるけど、初日よりはましだった。気持ち的なものもあるかもだけど。
夜叉姫くんが、早めに起きて早めに薬飲んだほうがいいよっていうから、早めに起きた。昨日様子見で休んだけど、結構いけそうだったから今日は大学に行くつもり。
朝ごはんを食べて、薬を飲む。しばらくぼんやりしてるうちに、だるさは減って、頭も軽くなる。医学の進歩に感謝しながら家を出て電車に乗る。
そういえば、一ノ瀬さんに時間あるときちょっと会いたいって言われてたんだった。ちょうどヒートのときに連絡もらったから後回しにしてた。
『今日大学行くけど、時間ある?』
『サークルあるけどその前なら!』
即レスすぎてびっくり。一ノ瀬さんもちょうどスマホ見てたのかな。
『別に今日じゃなくても暇だよ、俺』
『んー、なぎぎがいいなら今日がいいかも』
『じゃあ今日で』
『どっかはいる?』
『なんでもいい』
『カフェとかどう?』
『大学のなかのとこ』
大学の中にカフェ入ってるんだった。なんか、安くておいしいって噂だけど、一人で行く気にもならなくて行ったことない。
『いこ』
…猫のスタンプが送られてきた。めっちゃ目つき悪いんだけど、これでいいのかな。女子ってかわいいの使うイメージある。サンリオ?とかもかわいいのが多いじゃん。こいつ、目つき悪すぎる。でも、黒猫だし、なんかちょっと先輩に似てる気がしてきてかわいく見えてくる。
「白瀬。体調どうだ?」
教室でぼんやりしてたら、神崎に話しかけられた。そっか、この授業は神崎もとってたっけ。
「元気だよ」
「そうか」
「どうしたの?」
「それだけだ」
え、俺の体調聞くためにわざわざ最前列からここまで来てくれたの?
「…神崎って優しいね」
「…気のせいだ」
「そう?うれしかったよ」
「…そうか。なんかあったら頼れよ」
「?ありがと」
神崎って、ツンデレキャラなのかな。相変わらずニコリともしないけど、わざわざ会いに来てくれるとかめっちゃいいやつじゃん。神崎が動くのってほとんどないから、周りもチラチラ見てるし。レアイベント発生って感じ。
最後の授業が終わって、カフェの方に向かう。一ノ瀬さんはすでに来てて、店の外で待ってた。
「ごめん。待たせて」
「ううん!ごめんね時間取らせて」
「べつにいいよ」
カフェの中はそれなりに人はいたけど、2人で座る席はいっぱいあったから簡単に席を取れる。
「なんか頼む?」
「一ノ瀬さんはここ来たことあるの?」
「うん。結構来るよ」
「おすすめないの?」
「んー、チョコラテおいしいよ」
「あとはね、パフェ」
「そっか。じゃあチョコラテ?にする」
「そんな簡単に決めていいの?」
「もっとメニュー見なよ」
「見ても決められないから」
「おけ」
一ノ瀬さんは慣れた感じでパフェと紅茶を頼む。
「なんか、あったの?」
一ノ瀬さんに何かしたかな。
「えっとね、ちょっとお願いがあってね」
「うん」
「宵紗先輩に、学園祭に出てほしいの」
「それの交渉手伝ってくれないかなって」
「俺が?」
「無理強いはしないよ!もちろん」
「でも、なぎぎが頼んでくれたら確率上がるから」
「先輩が出るって何するの?」
「バンドして欲しいの」
「…先輩って楽器できるの?」
「高校のときギターやってたって」
「そうなんだ」
先輩ってギターできるんだ。かっこいい。でもちょっと意外かも。なんか、どっちかって言うとドラムとかベースとかやってそうだと思ってた。
「やっぱ、難しいよね」
俺が黙ったから、一ノ瀬さんは申し訳なさそうな顔で微笑んだ。
「ううん。俺も見てみたいから頼んでみる」
「まじ?!」
「うん」
「神!なぎぎ神!」
一ノ瀬さんは目を輝かせて身を乗り出してくる。突然の勢いについ驚く。
そこに頼んだやつが届く。チョコラテは甘い香りで美味しそう。飲んだら、思ったよりチョコの苦みがあって、風味が強くて美味しい。
「おいしい」
「そ?よかった」
一ノ瀬さんはニコニコしたままパフェを食べ始めてる。ギャル?の見た目にイチゴのパフェが似合ってる。
「なぎぎも食べる?」
「何を?」
「これ」
一ノ瀬さんはパフェを指し示す。
「え?いいよ」
「申し訳ない」
「えー?私はいいよ」
「ほら、スプーン」
スプーンを差し出されて、なんか断りづらくて受け取っちゃった。
「ほら、とって」
「…いただきます」
端っこをもらうと、カスタードとイチゴの味がしておいしい。
「ど?」
「おいしい」
「だよね」
「よかったの?俺食べて」
「シェアハピー」
一ノ瀬さんに満面の笑みとピースで言われて、なんかわかんないけど楽しい人だなって思う。いるだけで周りが明るくなってすごい。あんまり近くにいなかったタイプ。明るい人って賑やかなことが多かったから。
「なんで宵紗先輩がバンドしてたって知ってるの?」
俺と違って一ノ瀬さんはよく人に囲まれてるし、顔が広そうだから、噂とかで知ってるのかな。先輩がバンドしてたっていうのは有名な話なのかも。
「えっとね…」
急に一ノ瀬さんは目線をそらして口をゴニョゴニョさせてる。いつでもハキハキしゃべるんだと思ってたから、見たことない姿。
「初恋なんだよね」
「え?」
「中学のとき先輩のこと好きでさ」
まさかの告白でびっくり。
「学校一緒だったの?」
「ううん」
「何で知ったの?」
「話聞いてくれるの?」
「一ノ瀬さんが話してくれるなら」
「ほんと?じゃあ話していい?」
「うん」
なんかわかんないけど、一ノ瀬さんの初恋エピソードを聞かせてくれるらしい。
「あたしの学校のグラウンドで、サッカー部の練習試合みたいなのをしてたのね」
「対戦相手が先輩のいる学校でさ、一目ぼれ」
一ノ瀬さんはちょっと照れてるけど、にこにこしてるからきっといい思い出なんだろうな。
「ほんとかっこよくてさ、どんどん点とるの」
「先輩運動できるんだ」
「そーだよ!10番だったんだから」
「…10番?」
「知らない?」
「サッカーわかんない」
「エースナンバーだよ!一番上手い人がつける背番号」
「先輩エースだったってこと?」
「そう!マジかっこよかったんだから」
「見てみたかったな」
「…動画あるよ」
「…盗撮?」
「え!違うよ!」
「あたしの学校のやつ撮りたくて!仲いい人いたし!」
「あたしマネージャーの子と仲良くて!」
一ノ瀬さんはすごい慌てて弁明し始める。いや、そんな深い意図はない発言だったんだけど。
「いや、気にしないで」
「冗談」
「そうだよね!」
「見る?」
「見たい」
「待ってね。探す」
一ノ瀬さんはスマホを出してちょっと操作してすぐこちらに向ける。今の速さは、探したわけじゃなさそう。初恋って言ってたけど、今も好きなのかな。そうじゃなきゃ中学の時の映像とかすぐには出てこないんじゃないかな。
「これ」
「マスクしてない」
「そう!高校からつけ始めたみたい」
動画の中の先輩はマスクしてなくて、ピアスも一個もない。中学生だから当たり前か。いつも長袖黒尽くめって感じだから、青いユニフォームが見慣れない。でも、1人だけおっきくて、骨から強そうな感じは変わってない。前髪がめっちゃ長くて目元が見えないのも。
パス回されたら、確実にゴールを決めてる。サッカーは何も分かんないけど、多分うまいんだと思う。いつものそのそしてる先輩が、すごい俊敏に動いてるから別人みたい。
「すごいね。ありがと」
「かっこいいでしょ」
「それから追ってたってこと?」
「ん?そうだね」
「高校も同じとこ受けようと思ったんだけどさ、あたしバカすぎてやめた」
「そうなの?」
「うん。先輩めっちゃムズいとこ行くんだもん」
「だから高校3年間はめっちゃ勉強してさ、絶対同じ大学行くんだって」
「それでここにしたの?」
「うん。あたしがやりたいことできる学部あったし」
「すごいね」
「ストーカーまがいだけどね」
「一ノ瀬さんなら許されるんじゃない?」
「何基準?」
「ウケる」
「ねぇ、一ノ瀬さんはさ、今も好きなの?先輩のこと」
「んー、」
「好きだよ」
「…そうなんだ」
一ノ瀬さん、俺が先輩にベタベタしてるの嫌だったかな。あれだけ噂になったし、たぶん一ノ瀬さんの耳に入ったこともあると思う。たぶん、嫌だよね。
「でもさ、気にしないでほしいの」
「もう諦めてる」
つい俯いてたけど、顔を上げたら一ノ瀬さんは笑顔のままだった。
「なんで?」
「叶わないもん。先輩はあたしのこと好きじゃない」
「そうなの?」
「うん。1回ね、告ったの」
「でも、恋人として愛してあげられないかもって」
相手のこと考えて振るの、先輩らしいかも。来るもの拒まず去るもの追わず、みたいな雰囲気あるけど、こういうことはちゃんとしてる人だから。告白されたから好きじゃないけど付き合うみたいな、雑な恋愛しない人なんだ、きっと。
「…先輩らしいね」
「でしょ?もっと好きになっちゃった」
「諦めちゃうの?」
「うん」
「あとね、先輩には番持ってほしいなって」
そっか。一ノ瀬さんはαだから。α同士は番になれない。α同士の恋愛とか結婚とか、いっぱいいる。でも、番にはなれないんだ。
「…そっか」
「ちょっと!そんな顔しないの」
「え?」
「なんでなぎぎが苦しい顔するの」
「あたしは先輩のこと見てられるだけでいいの」
「一ノ瀬さんって、結構ピュアなんだ」
「そーかも。ずっと初恋拗らせてるもん」
一ノ瀬さんは強い人だな。叶わないって割り切って、相手の幸せを願えて。叶わないって思った恋でも大事にできて。
「なぎぎはさ、先輩のこと好き?」
「…どうなんだろ」
「先輩としては好きかな」
「なぎぎのこと見る先輩の目、めっちゃメロいの」
「そうなの?」
「うん。だから、あたしのこと気にして距離とったりしないでね」
「…ありがとう」
「一ノ瀬さんって、すごくいい人」
「えー?そう?」
「まぁ、頼ってくれれば手は貸せるよ」
「頼もしいね」
「そ?」
「うん」
パフェを食べてる一ノ瀬さんはすごく可愛いけど、同時にすごくかっこよかった。
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