私と玉彦の学校七不思議

清水 律

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第十一章 てんまつ

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 色んな事があった日曜日を乗り越えた月曜日。

 私は登校中の車内で、疲れていた。
 甘えても良いのなら今日は学校を休みたかったけれど、前週全てを休んでいるのでそうもいかなかった。

「私、今日は流石に放課後は真っ直ぐ帰りたいんだけど、玉彦は部活出るの?」

「出る」

 玉彦だって疲れているはずなのに、普段通りだ。

「お迎えに上がりますよ、比和子さん」

「でも南天さんだって昨日からずっと運転ばかりだし……」

「慣れていますので大丈夫ですよ」

 そんな南天さんの言葉に甘えて、私は授業が終わると学校祭の準備に大わらわなクラスの皆に謝って正武家へと帰った。


 昨日はお父さんよりもお母さんが怒っちゃって大変だった。
 最後には泣き出しちゃうし。
 会えなくなるわけではないのにさ。
 玉彦は黙ってお母さんの話を聞いては、誠実に受け答えをしてくれていた。
 そんな彼の様子にお母さんも段々懐柔されて、帰る頃にはすっかり玉彦のことを気に入っていた。
 それもそのはずで、前に荷物を取りに来た時にお母さんは将来の義息子がイケメン過ぎると笑っていたし。

 両親が怒っていた理由は話が早急すぎて、私たちの意思ではなく澄彦さんが勝手に強引に進めたんじゃないかと思っていたから。
 澄彦ならばやりかねない、とお父さんが言えば、玉彦は苦笑していた。

 そして難関だと思っていた小町は、日曜で守くんとお出掛けをしていたので会えずじまいだった。
 でもメールで話があると送れば、帰って来るなと返事が来たので大体はもう解ってしまっているらしかった。
 もしかしたらいつの間にか守くんと連絡先を交換していた玉彦が前振りをしたのかもしれない。
 そんなこんなでトントン拍子に話が進んでしまって、夜鈴白へと帰る車中で豹馬くんから、余計なこと言ってごめんというメールを見た私はもう、疲れて眠ってしまい返事をするのを忘れていた。


 そして私は今。
 週末の疲れを癒しつつ。
 正武家の地下にある書庫にて、読み物をしている。

 最初は古いものから読んでいたけれど、今日から新しい時代から遡っている。
 一番新しいものは玉彦が南天さんと須藤くんと猪狩りをして帰って来たもので、山の怪を払いに出ていたそうだ。
 詳細が淡々と見事に筆書きで記されていて、最後に玉彦の名と拇印が押してあった。

 次に記されていたのは『終六隠廻り』とあった。
 内容を読めば玉彦の目線から語られる六隠廻りで、客観的なそれは確かに的確なんだけれど人間味がない。
 それは澄彦さんの案件も同様だったけど、最後の個人的感想という一言が面白かった。
 その一言だけを辿って遡り読んでいくと、ある一件で目を閉じた。

 例の走る二ノ宮金次郎が書かれていた。やっぱりあの二人だった。小学生の南天さんもいる。
 書き記す人によって、小説みたいだったり、いつどこで誰が何をしたとだけ記している人もいて、個人の性格が良く解かる。
 読み進めて行けば、私の知らない玉彦の四年間のお役目のところまで辿り着いた。
 今日はここまでにしておこうか。
 時間は予定外だったけれど沢山出来たし。

 本を元の位置に戻そうとすると、ふわりと石鹸の香りが私を包んだ。
 地下へと続く入り口を見ても、彼は居ない。

 なんだろう?

 私が書庫の奥へと足を踏み入れ辺りを見れば、そこに誰かがいた。
 ……誰も居るはずがないのに。
 だって私がここに来た時は書庫に灯りは無く、手にしていた本は入り口の近くにあったのだから。
 その人は白い着物を着て、背は玉彦くらいで、髪は長く赤い紐で結わえていた。
 どこからどう見てもお役目に行く格好の正武家の人だ。
 彼はこちらに背を向けていて、顔が見えない。
 かなり集中して昔の本を読んでいる。

「あのぅ……」

 思い切って声を掛けると、驚いたように振り返ったその人は玉彦だった。
 今の、ではない。
 もう少し年を重ねた二十代半ばの玉彦。

「比和子か!」

「玉彦、だよね?」

 彼は本を投げ出して私に駆け寄り肩を掴んだものの、素通りした。
 何度も何度も私に触れようと必死になる姿をみて、悲しくなった。

「玉彦、どうして透けているの?」

「透けているのはお前だ、比和子」

「玉彦だよ。私はここにいるもん、学校から帰って来てからずっといたもん」

「……学校?」

 玉彦は再び驚いて、悔しい顔を隠しもせずに座り込んだ。

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