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Episode 1
出会いは涙と 6
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その夜。
神奈川県七橋町いろは坂地区。
木造二階建てのアパート『サンライズ七橋』201号室が八神映奈の実家である。
アパートのどの部屋もメゾネット式であり、一階に玄関、リビングダイニング、カウンターで仕切られたキッチン、トイレや浴室などの水回りがあり、玄関の真正面にある階段を登れば部屋が三部屋。ベランダに向かう二部屋のうち一部屋が両親、もう一部屋が映奈の自室、ベランダから遠い部屋はウォークインクローゼット兼ちょっとした物置となっている。
机にタブレット端末を置き、映奈はアイドルグループの事務所『株式会社ステラプロダクション』社長、白峰高雄とオンライン面談していた。
「どうだ、久しぶりの地元の生活は?」
「そうですね。あまり変わっていないのがとても落ち着きます」
映奈はアイドルグループを運営している芸能事務所を退所してはいないものの、アイドルはおろか芸能人として活動しなくなったため実家に戻っている。かつての芸能活動の都合上、高校はオンライン/アーカイブ受講が可能な通信制高校に進学していた。
「友達はどうだ? 出かけたりとかは?」
「それが、アイドルやってるうちに疎遠になっちゃいまして。だからアコギ一本でストリートライブやってます。あ! 友達とストリートライブって言えば、今日のライブで出会った女の子と友達になりましたよ。その子がすごく可愛くて、もう抱きしめ甲斐があるって言いますか抱きしめちゃいまして!」
「きっ……、きみはロリコンだったのか?」
「違います! ロリじゃなくて同い年です! で、その子が不思議なんですよ。アイドルだった時からわたし推しで、配信では学生には大変な額を課金してくれて、今日のわたしの弾き語りを滝のように涙を流しながらほめてくれて、友達になった途端にまた泣いて。趣味は男の子っぽくって、プラモデルとかミニ四駆とか大好きみたいで。自転車の修理もお手の物、教材の防災ラジオなんてクラスで一番早く作り上げちゃう根っからの技術屋! 何かもう、いろんな意味で可愛くて可愛くて!」
「そうか。いい友達ができたようだ。大切にしてもらいなさい」
「えっ? 大切にして『あげなさい』ではなくてですか?」
「大切にしてもらうんだ。きっとその子にとってきみは泣くほど心の救いであったように、友達と疎遠になったと言う今のきみにとってもその子は必要な存在だからね」
「なるほど確かに。ありがとうございます、社長!」
「うん。また好きな時に連絡してくれて構わない。ではお元気で」
「ありがとうございます。お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした」
互いにテレビ電話アプリを閉じ、映奈は椅子の背もたれに背を預けて「うーん!」と伸びをする。電池を交換していない壁掛け時計はある日を境に止まっていた。タブレット端末のデジタル時計を開くと、時刻は九時四十七分。
「……社長、働き過ぎでは?」
神奈川県七橋町いろは坂地区。
木造二階建てのアパート『サンライズ七橋』201号室が八神映奈の実家である。
アパートのどの部屋もメゾネット式であり、一階に玄関、リビングダイニング、カウンターで仕切られたキッチン、トイレや浴室などの水回りがあり、玄関の真正面にある階段を登れば部屋が三部屋。ベランダに向かう二部屋のうち一部屋が両親、もう一部屋が映奈の自室、ベランダから遠い部屋はウォークインクローゼット兼ちょっとした物置となっている。
机にタブレット端末を置き、映奈はアイドルグループの事務所『株式会社ステラプロダクション』社長、白峰高雄とオンライン面談していた。
「どうだ、久しぶりの地元の生活は?」
「そうですね。あまり変わっていないのがとても落ち着きます」
映奈はアイドルグループを運営している芸能事務所を退所してはいないものの、アイドルはおろか芸能人として活動しなくなったため実家に戻っている。かつての芸能活動の都合上、高校はオンライン/アーカイブ受講が可能な通信制高校に進学していた。
「友達はどうだ? 出かけたりとかは?」
「それが、アイドルやってるうちに疎遠になっちゃいまして。だからアコギ一本でストリートライブやってます。あ! 友達とストリートライブって言えば、今日のライブで出会った女の子と友達になりましたよ。その子がすごく可愛くて、もう抱きしめ甲斐があるって言いますか抱きしめちゃいまして!」
「きっ……、きみはロリコンだったのか?」
「違います! ロリじゃなくて同い年です! で、その子が不思議なんですよ。アイドルだった時からわたし推しで、配信では学生には大変な額を課金してくれて、今日のわたしの弾き語りを滝のように涙を流しながらほめてくれて、友達になった途端にまた泣いて。趣味は男の子っぽくって、プラモデルとかミニ四駆とか大好きみたいで。自転車の修理もお手の物、教材の防災ラジオなんてクラスで一番早く作り上げちゃう根っからの技術屋! 何かもう、いろんな意味で可愛くて可愛くて!」
「そうか。いい友達ができたようだ。大切にしてもらいなさい」
「えっ? 大切にして『あげなさい』ではなくてですか?」
「大切にしてもらうんだ。きっとその子にとってきみは泣くほど心の救いであったように、友達と疎遠になったと言う今のきみにとってもその子は必要な存在だからね」
「なるほど確かに。ありがとうございます、社長!」
「うん。また好きな時に連絡してくれて構わない。ではお元気で」
「ありがとうございます。お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした」
互いにテレビ電話アプリを閉じ、映奈は椅子の背もたれに背を預けて「うーん!」と伸びをする。電池を交換していない壁掛け時計はある日を境に止まっていた。タブレット端末のデジタル時計を開くと、時刻は九時四十七分。
「……社長、働き過ぎでは?」
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