349 / 450
第16章 そして、パーティーが始まる
343★皇弟は苦悩する1
しおりを挟むアルファードの感想に、その場に居た者達は黙って頷く。
内心では、色々と思っていても、それを表に出す程、馬鹿ではなかったから………。
本音を言えば、魔力量が少ない女性を愛した時の保険として【子宝結晶石】を欲しいと思っていた彼らだったりする。
が、欲しいと言える雰囲気ではないので、黙っていた。
そんな新しい情報について会話していると、会場内に流れていた演奏曲の曲調が変わった。
それは、妃達や皇帝が、パーティー会場に入場するから、注目しなさいという意味の演奏曲だった。
ルーセア大公アスラン達が、パーティー会場の皇族専用通路に着いた時に戻して見てみると………。
華やかに着飾った皇帝アルフレッドの妃達が、それぞれの侍女と騎士達を連れて後宮から出て、パーティー会場の皇宮に入ったとの連絡を受けた。
もう少しで妃達の姿を確認できると知った時、ルーセア大公アスランとその側近と侍従や騎士達の瞳は暗く光った。
アスラン達は、皇帝アルフレッドが、西の妃《番》以外の妃を義務と理性と根性と気合と魔力降下剤の多寡《たか》はあっても、それを飲んで子供を作る相手だったのを知っていたから………。
それ故に、アスランは皇弟なのに何も出来ないコトを苦悩していた。
アスランは唯一絶対の《番》と出会い、愛し合ってしまった。
その結果、政略結婚が出来なかったから………。
アスランには、自分の《番》に認識阻害の魔法を掛けて、他の女を娶るだけの強い精神力が無かったのだ。
そして、そのコトを皇帝アルフレッドが、許してくれた時のコトを思い出していた。
最愛の妻であり《番》でもある神聖魔法師団の団長で、ヴァイアス公爵家の嫡子オルディス・ハーラン・ヴァイアスの同腹の妹ジークリンデ・グレイスと結婚したいと告げた時、アルフレッドは言った。
「おめでとうアスラン
お前だけでも《番》と幸せに暮らせ
その代わり、たんと
子供を作ってもらうぞ、良いな」
幸せな婚姻を嬉しそうに祝う兄アルフレッドに、アスランは罪悪感(減りすぎた皇族の数を増やす為に、皇弟として何人もの妃を娶る政略結婚をする義務を放棄した)で泣きそうな顔になりながら答えた。
「はい」
それなのに、ワルター以外の子供は出来なかった。
今も頑張っているが、その兆しはまったくと言って見えない。
アルフレッドが、15人もの皇子と皇女を作ったのに………その負い目は、どうしてもアスランの中から消えはしない。
そんなアスランに、アルフレッドは人の悪い笑顔で言う。
「アスラン、そんなに気にするな
私達は、まだまだ若いんだぞ
オスカーやマクルーファなんぞは
今は亡き父上と同い年なのに
まだ独身でいる
それを考えれば、お前は、婚姻して
跡取り息子がいるだけましだぞ」
魔力量が多すぎて婚姻相手がいない2人を、負け犬扱いするアルフレッドに、アスランも笑って言う。
「そう言えばそうですね」
自分と同じコトを考えているアスランに、アルフレッドは黒いオーラを纏って言う。
「だから、ワルターには
たんと嫁を娶ってもらい
子宝自慢の男になってもらおう」
自分の代わりに、何人もの妻を娶る息子を思って、ついアスランは言う。
「それで良いんでしょうか?」
それに対してアルフレッドは、冷たく笑ってみせる。
そして、アルフレッドは、ワルターが生まれたときから、政略結婚の駒にしようと思っていたコトを告白したのだった。
「アスラン、私はお前が可愛い
だがな、あえてワルターとは
会わないようにしていた
それは、あれに対して
情がわかないようにする為だ」
23
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる