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第19章 パーティーは、まだ終わらない
412★絶対に、聖女候補の誰かと婚約せねば………
しおりを挟むバルディア侯爵と当たり障りの無い会話をしたアルバードだった。
内心で後何人から、この忠告を受けるのだろうと思いながら………。
たとえ、聞き飽きた忠告でも、初めて聞いたかのようにみせかけ、その忠告に関心してみせてお礼を言うというルーティンを………。
アルバードに忠告をする為にやって来る人間達は、あとどのくらいいるのだろうか?と思うアルバードの表情は、ブラックな会社に勤める社畜のように疲れて暗いものだった。
その表情を見ている側近達は、遠い空を黙って見詰めるのだった。
そう彼らには、何も言えない。
身分が違うから………。
それでも、こころから応援しているのは確かなコト。
誰だって、仕える主の妻はひとりの方が楽なのだから………。
自分の気が済むので話すだけ話したバルディア侯爵が帰った後に、アルバードはついつい持ち込まれたワインに手を出す………が。
そんなアルバードに乳兄弟のセドリックが話し掛ける。
「アルバード様、この頃はストレスの為に、酒量が増えております
まして昼酒は身体にこたえます、お止め下さい
この後、我が母達やバルディア侯爵夫人が
いらっしゃる可能性がございますので………」
セドリックのごもっともとしか言いようの無い忠告に、一瞬だが、アルバードはチベット砂狐のような表情を浮かべた。
そして、深ぁ~い溜め息を吐き出して言う。
「わかった、当分は禁酒するよ
はぁ~………なぁセドリック
聖女様の誰かと婚約するまで、ずっと言われるのかな?」
『………』
セドリック達の沈黙に、アルバードは更にチベット砂狐の顔になる。
こうして、アルバードの受難は続く。
聖女を手に入れるまで………。
それに付き合うセドリック達の胃痛を伴う神経にくる辛い日々は続く。
アルバードのやつれに対するフォローが、ストレスに対するフォローが続く限り………。
彼らの胃の為にも、アルバードが優しい聖女様と結ばれるコトを真剣に祈る彼らだった。
主であるアルバードの婚約が決まらないと、彼らの婚活は始まらないから………。
彼らは、誰もが自分の妻がアルバードの子供の乳母となり、乳兄弟になるコトを夢見ているのだ。
そう、聖女様の子供の乳兄弟という憧れの地位を………。
彼らは、貴族の御曹司ではあるが、次男も三男もそれ以下もいる。
彼らにだって、忠誠心の他に野心と打算はあるのだから………。
切実な彼らの祈りとアルバード自身の祈りは、神に届くのか?
そして、運命のパーティーの日が刻々と近付いて行くのだった。
だから、今日のアルバードは、気合が入っていた。
このパーティーで聖女候補の美少女達と良い関係になり、婚約に持ち込むぞ、とこころに誓っていたから………。
聖女候補の美少女達の男性の好みが、果たしてアルバードをストライクゾーンに入れてくれるかは、まだ誰も知らない。
そして、聖女候補の美少女達に近付こうとしているアルバードを目ざといオスカーが見付ける。
「アルバード様、どうぞこちらへ」
オスカーに呼ばれたアルバードは、すかさず兄であるアルファードの隣りへと歩いて行く。
直接、聖女候補の美少女達に声を掛ける勇気は、残念ながらアルバードには存在していなかった。
アルバードは、結婚適齢期の貴族令嬢も年上の貴族夫人もはっきり言って苦手だったりする。
騎士見習い時代の酷い経験の為に………。
貴族の女性は身内であっても苦手という、立派なコミュ障のアルバードだった。
そんなちょっと疲れている上に、枯れた感じがするアルバードに果たして聖女候補の美少女達をナンパ?出来るのだろうか?
それは、神のみぞ知るという………。
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