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第4章 魔法騎士団の団長のもとへ
023★魔法騎士団・団長様まで一直線……その前に
しおりを挟む《結界》の補修と一部の張り直しを、恵里花の望み通りに、魔法師団と神聖魔法師団に強引に押し付けた(界渡りの甘味とワインの入ったホットワインと引き換えに)後に、オスカー副団長は、各騎士団に色々と厭味と指示を出した。
それは、《結界》に開いた穴の為に、魔物が侵入している可能性が有るコトを示唆し、通常の巡回よりも繊細にサーチを掛けて丁寧に確認し魔物を排除するようにと……厭味ったらしく言うのだった。
実際に神殿の中庭に魔物が出現したのを排除した魔法騎士団の副団長の情報(=提言)なので、近衛騎士団・団長や帝都騎士団・団長は、ちょっとむっとしながらも頷いた。
勿論、オスカー副団長が持ち込んだ貴重なホットワインを飲む為に、ぐっと堪えたと言う説もある。
東域騎士団・副団長と西域騎士団・副団長と南域騎士団・副団長と北域騎士団・副団長と中央騎士団・副団長は、同じ副団長なので、オスカー副団長からの情報(=提言)素直に感謝して聞いた。
その上で、聖女からの贈り物?ご褒美?のホットワインをもらえたのでご機嫌になっていた。
そして、さっさと巡回を済ませて、ホットワイン(魔法で冷めないようにしてあります)を飲もうとワクワクしていた。
なお、4人の辺境伯爵が率いる辺境守護騎士団(この騎士団だけは、名前と違って、騎士と歩兵の混合集団です。詳しくは団長が出ましたら、組織紹介として出します)には、オスカー副団長に連絡するように指示された神聖魔法師団から、水鏡通信によって情報の連絡だけが入れられました。
そう、この騎士団だけ、何ももらえませんでした。
辺境だけあって、恵里花の居る帝都から距離が有り過ぎたので、届けるコトが出来ませんでした。
なお、辺境守護騎士団は帝都に支部を置いておりません。
辺境伯爵が、余分な仕事を押し付けられないようにと、あえて作らなかったんです。
ですが、辺境伯爵達は、恵里花のホットワインをもらい損ねたコトをのちに知ってしまい激しく後悔することになる。
そして辺境伯爵達は、帝都に滞在している(士官学校や魔法学園や帝都にある色々な学校に通っている自分の身内や寄り子の貴族の身内)に、交代で辺境守護騎士団支部を運営するように命令したというオチが付きました。
なお、実際に運営するのは、子供達に付いて来た守護騎士達や執事達です。
恵里花のちょっとした行動が、様々な波紋を呼んだ最初の事例とも言えることでした。
もっとも、そんなコトを気にする余裕の無い恵里花とオスカー副団長達は、王城内に有る魔法騎士団本部の隊舎前で騒いでいた。
恵里花の自己申告(乗馬が出来る)により、オスカー副団長は馬の手配を指示していた。
ちなみに、恵里花用にと用意される馬は、魔法騎士団の団長が個人所有する替え馬だったりします。
オスカー副団長は、自分のところの団長の性格をよぉ~く知っているので、騎士団所有とか、騎士個人所有の馬は選択しなかったのだ。
〔自分の馬じゃないのに乗せたって、絶対に
怒るに決まっていますからね………
ただ、団長の馬って性格が少し………
大丈夫かなぁ?
いやいや、団長の為にも言い聞かせるっ
姫君には、団長の馬に乗ってもらわないと
私の命にかかわる………〕
その他に、移動中に魔物と遭遇する可能性があるので、恵里花が纏える甲冑を用意していた。
それは、幼少期より有り余る《魔力》の為に、魔法学園で面倒を見れないと拒否された魔法騎士団・団長が、その身に纏っていたモノだった。
ドラゴニアンの末裔である団長と違い、純粋な人間である恵里花に、甲冑は重すぎると思いオスカー副団長が【重量軽減の魔法】を掛けたモノだった。
勿論、その当時団長が使っていた剣や槍なども用意されていたが…………。
携帯する武器についてオスカー副団長が、恵里花に話し掛ける。
「姫君、我々が付いていても
どんな危険があるかわからないので
武器を携帯して欲しいのですが……」
そのセリフに、恵里花はケロッと言う。
「武器? ここに持っているわよ」
オスカー副団長に話しかけられた恵里花は、足元に置いていたリュックサックから、日本刀を取り出して見せた。
鞘に入っていても、騎士達が持っている両刃の剣の本身よりも細い日本刀に、困惑した視線を送る。
その視線に気が付いた恵里花は苦笑する。
〔大柄な民族って
ごっつい重さで切る剣を使うのよねぇ~
バイキングしかりって感じだもんねぇ~
でも、島国という限定空間で育つ日本人は
食料事情と個人空間の狭さの為に
どうしたって小柄なのよ
小柄な人間が扱えるのは軽い武器って……
理に叶っているし…
刀って…切れ味が世界最高なのだから……〕
自分の持つ日本刀に、批判したいだろうに、黙って見ている騎士達を見た恵里花は、安心させる為にあるモノを用意してもらうことにした。
「オスカーさん、訓練で使う
模擬剣を用意してくれますか?」
「はぁ~?…用意出来ますが?
フェリックス」
「はい、フレッド持って来なさい」
「はい」
フレッドが模擬剣(刃の部分を丸くしているだけの剣で、身体に当たっても切れることは無いが、当たりどころが悪いと骨折する代物)を持って来るのを待っている間に、恵里花はさっきの騎士達のやりとりを思う。
〔恵里花がオスカーさんに頼んだことが
オスカーさんからフェリックスさんに
そして、フレッドさんにって
伝って行くのを見て………つい、あの
建築関係の発注を思い出してしまったわ
元受から親受け…それから孫受けって……
でも…パパの艦に、見学に行った時見たのと
あんまり変わらないって思ってしまうなぁ~
軍隊ってどこでも一緒なのかしら……〕
恵里花が、思考の海に浸ってぼんやりしている間に、フレッドが剣を持って戻って来た。
それをオスカーが受け取って、恵里花にごっつい剣を差し出した。
「姫君…模擬剣です」
「ありがとう」
お礼を言って受け取った恵里花は、模擬剣を鞘から出して、傷や錆びの有無を確かめる。
〔流石に、模擬剣でもズッシリね
恵里花が振り回すのは無理ね〕
「うん…ひびは入っていないし…
錆びてもいない
手入れのされた良い剣ですね
個人所有の剣じゃないのに
ちゃんと手入れがなされているのは
魔法騎士団の騎士達に
余裕があるってコトですね」
そう恵里花に褒められて、魔法騎士団の騎士達は心が熱くなる。
「では、私は小柄なので、しゃがんで
剣を横に突き出すように
持ってもらっても良いですか?」
恵里花のお願いに、さっと反応して剣に手を出したのはマイケルだった。
すかさず、恵里花はマイケルに剣を差し出した。
そして、マイケルは言われたとおりにしゃがんで、剣を身体の真横に突き出すように差し出した。
すると恵里花は、日本刀を居合いの型を取り構える。
その隙の無い流れるように美しく動く様に、オスカー副団長達は眼を見張った。
と、軽やかなチンという音が、聞こえた。
その後に、石畳の上に落ちた剣の刃先の立てるキンという金属音が続いた。
マイケルは握っていた剣を切り落とされたのに、手に何の衝撃も無かったことに驚いてしまう。
魔法騎士団の騎士として、魔物と日々戦い剣を折られるコトも経験していた彼等だが…………。
恵里花のしたように明らかに衝撃が無いのに、剣を切られたコトは無かった。 余りの衝撃的な出来事に彼等はしばし呆然としてしまう。
そんな彼らに恵里花は微笑んでみせるだけだった。
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