私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

文字の大きさ
34 / 450
第5章 魔の森にて……

034★閑話 恵里花と兄大和のある日の会話2 後編

しおりを挟む



 恵里花にズバリを聞かれて、お兄ちゃんは眼を見開いてから、だぁ~っていう顔をして、大きく溜め息を吐いてくれた。
 もしかして、聞いたら不味かったかな?
 でも、聞きたいから、恵里花はお兄ちゃんの瞳を真っ直ぐに見る。
 こうすると、お兄ちゃんはたいてい諦めるから………。

 「はぁ~それかぁ~…………」

 困ったという表情のお兄ちゃんに、畳み掛けるように言う。
 こうすれば、恵里花に甘いお兄ちゃんは嫌って言えないから…………。

 「お願い教えて」

 恵里花の言葉に、ついにこの日が来たかという表情で、唐突にお兄ちゃんは言い始めた。

 「親父は、遊び人だった…
 来る者拒まず…去る者追わずって…

 最低野郎だったんだ…
 ただし、避妊はきっちりする男だった」

 流石に、パパの素行がそんなに悪いはずは無いとおもうんだけどぉ~………。
 でも、お兄ちゃんが恵里花に嘘を言うはずないから、何か理由でも有ったのかな?
 一応、反論しておこう。

 「えっぇ~そんな感じないよぉ~
 パパって、きっちり生真面目
 って感じしかしないけど?」

 恵里花がそう言うと、お兄ちゃんはニヒルに嗤って答えてくれた。

 「そりゃ~…おふくろにとっ捕まって
 女に幻滅したセイだ」

 「えっ?」

 「親父は、結婚する気が無かった
 セックスは遊びの1つだったんだよ」

 もしもしぃ~……なんか…考えていたモノと全然違う方向に話しが行くんですけどぉ~……パパがそういう男?

 「うぅ~ん…なんか…最低男な感じが……」

 恵里花の感想に、お兄ちゃんは………。

 「避妊に気を使っていても
 女がゴムすり替えたら、意味ねぇーんだ
 って、言ったら理解(わか)るだろ、ソレ」

 「それって…………」

 ママってば、男の敵……姑息だわ………。
 パパ、自分の二の舞にならないようにってことかな?
 お兄ちゃんにだけは、教えたのかな?
 お姉ちゃんには、教えてなさそう………。

 「子供が、出来たから結婚してって言われて
 親父はあっさり結婚したんだよ」

 はぁ~……ママの自己申告で、結婚したの?
 マジで?そんな簡単に、人生の墓場に…………。
 パパって馬鹿なの?
 いや、定番の言葉を聞いてみよう………。

 「えっとぉ~…最低男だったら…
 堕ろせって言うんじゃないの?」

 「堕胎って、腹の中の子供を殺すコトだろ?」

 「うん」

 「それに、子殺しって………
 殺人の片棒を背負い込むのは
 嫌だったってさ」

 ああ、やっぱりパパって優しいんだなぁ~……。
 ママの自分勝手な悪さも許しちゃったんだ。

 「パパって優しいんだぁ~」

 「堕胎って、後々身体にひびくって
 親父は知っているから
 それは言いたく無かったって……」

 「あっ……確かに、失敗すると
 妊娠できなくなるって……

 でも…ママがパパと結婚したくて
 ワザと他の人と子供を作って

 パパの子だって嘘付いた
 って、思わなかったのかなぁ?」

 でも、自分の子だって、なんで素直に信じたのかな?
 恵里花には、理由がわかんないけど…………。

 「それについては、親父のヤツ
 絶対の自信が有ったらしいよ

 おふくろが、自分以外の男の子を
 押し付けたりしないってさ

 だから、責任とって…
 結婚したんだって言ってた…」

 なるほど、そこにパパの愛は無かったんだ。
 ママの一方的な愛に、子供で出来たならいっかなんていう安易な考えで、結婚しちゃったんだ…………。
 で現在進行形で、苦労のしまくりだなんて、ちょっと不憫かも………。
 って……あれ?……じゃあ恵里花ってどうやって出来たの?
 どうせだから、お兄ちゃんに聞いちゃえ。

 「お兄ちゃんとお姉ちゃんは
 双子だからその時の勢いの子供でしょ…

 でも…恵里花は違うよね…
 何で…生まれたのかな?」

 お兄ちゃんは、ソレにもあっさりと答えてくれた。

 「おふくろが、媚薬を盛ったからだってさ」

 流石に、聞いた内容が……お陰で、言葉遣いが………。

 「マジで?」

 確認するよう言えば、お兄ちゃんがさらりと続けて言う。

 「親父は、防衛大から
 海上自衛隊に入ったから
 艦に乗るだろ」

 「うん…1回…海にでたら……」

 パパってば…認識力低下していたんだね……不憫な。

 「おっ…気が付いたな…
 そう…家に帰って来たとき

 何か…溜まってたらしくて…
 ついやったらしい…

 それでも…しっかり自前のゴムを
 つけていたんだけどぉ~」

 いや、夫婦なんだから、当たり前の行為だろうけど、やっぱり避妊はしていたんだ………。
 なんか、話しが見えたけど……本当に、ソレだけ?

 「ママがすり替えたの?」

 「いや、今度はすり替えじゃなかったらしい
 親父の警戒を察して、手法を変えたんだよ

 穴開けたゴムと交換できないことを想定して
 ゴムを捨てるゴミ入れに

 がっつりと凍らせた保冷剤を
 ゴミの下に入れておいて………
 って、ことらしいぜ」

 ありえなぁ~い……恵里花って使用済みから生まれたのぉ………。
 なんか、パパが可哀想になってきた。
 それでも、パパは恵里花のことを愛してくれるんだから、優しいんだよねぇ………。
 それに比べて……パパ、とんでもないババを引いたね……。
 ババ…いや、魔女かな?……お姉ちゃんもやりそう………。
 お兄ちゃんは、大丈夫なのかな?

 「ママって…ど最低な女だよね
 でも、その結果が恵里花だから…

 何にも言えないけどさ………
 パパが可哀想になるなぁ~……」

 恵里花がそう言えば、優しいお兄ちゃんは、何時だって慰めてくれる。

 「気にすんなよ…親父は…
 おふくろは、大嫌いだけど

 俺や恵里花を産んでくれたから…
 邪険に出来ないって言ってるんだぞ」

 パパ…だから、つけこまれるんだよ………ママに。
 でも、そんなパパに愛されているのがわかるから嬉しい。

 「パパってば…………」

 何時でも、パパは恵里花の味方してくれる。
 お兄ちゃんも、甘やかしてくれる。
 でも、そっかー……そういう理由で結婚したのか………。
 てっきり情熱的な相思相愛が冷めたモノかと思っていたんだけど………。
 最初から、ママに対する愛情は無かったのか、なら、あの対応も納得出来るな。

 「お前が可愛くてたまんないだよ、親父は
 だから…当分…男は作るなよ
 親父にいたぶり殺されるぞ」

 どこを見てそう言うんだか?
 お兄ちゃんもパパも目が腐っていると思うな。
 平均より小柄で、ぽっちゃりだし…………。
 でも…けして、デブじゃないもん…たぶん、きっと。
 容姿は、お姉ちゃんやママとなんて比べられない、平凡な顔だし………。
 ぱっとしないから…どうせ、ブスだし……あっ…落ち込んじゃいそう。
 
 「うん…って、言うか…ブスだから…
 結婚しないかもしれないよ…」

 そんな恵里花の発言に、お兄ちゃんは真剣な顔で言う。

 「馬鹿…言うな…聖治も悟も譲も健治も…
 俺のダチや部下は………

 たいてい、お前を狙ってるんだぞ………
 もっとも…俺に勝たない限り

 交際を申し込むのは
 禁止にしているけどな…」

 うぅ~ん…もしかして、本気で言ってる?
 やっぱり、お兄ちゃんの目は腐っている。
 ダメだわ…参考にならないわ……。

 「信じらんないよぉ~………
 お兄ちゃんの部下や友達の
 リップサービスだよ」

 「違うって…………」

 あの後、変な方向に話が曲がってしまったけど…………。
 パパとママの馴れ初めと恵里花が出来た理由を聞けた分だけマシかな?
 恵里花みたいな、ぽっちゃりブスを好きになってくれる人っているのかな?

 ブス専って変わった趣味の人ぐらいかも…………。
 なんか、それはそれで嫌だなぁ~。
 でも、何時か、運命の人に出会えたら…イイなぁ~………。

 なんて、考えていたのは、恵里花が聖女候補《召還》に遭遇するまでのこと………。
 今は………本人には言うつもりないけど、お兄ちゃんよりも美少年なアルファードに絆されて来てるかも………。
 何時か、自分に自信が持てるようになったら………。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今日の更新は、これでお仕舞いです。
一人称って、使い慣れていないので…………。
明日の更新から本編に戻ります。

恵里花がチートで順風満帆に見えるかも知れませんが、家庭は複雑で色々と有ったんです。
命にこだわるのは、自分を可愛がってくれた、父方のお祖父ちゃんやお祖母ちゃんが亡くなっているからです。

余力が有ったら、また、閑話を入れるかも…………。
今日は、ここまで…………。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

処理中です...