私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

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第7章 帝都にて、それぞれの時と思い

069★皇妃リリアーナの焦燥2

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 「姫様とあの陛下の御子だというに
 ほんに覇気の薄い」

 内心そのままの魔術師エルダールのセリフに、皇妃リリアーナも困ったものだという表情で言う。

 「あの凛々しい陛下の子じゃというに、何故
 あの子供(アルファード)に遠慮するのじゃ

 アンジェロは、皇太子なのに………
 ああ、アンジェロの身体が弱かったゆえに…
 ほんに、何時までも覇気が無い

 ここは、皇妃であり母である
 私がなんとかせねばな」

 皇妃リリアーナのセリフに、魔術師エルダールが言う。

 「姫様、では、あの子供(アルファード)より
 聖女候補を……」

 「取りあげたりせぬよ……
 アンジェロの手元にいる聖女候補と
 交換させるだけじゃ………

 それならば…構うまいよ
 陛下を煩わせるは、本意ではゆえな」

 魔術師エルダールにそう言ってから、皇妃リリアーナは女官長カレーニナへと向き直って命令する。

 「今日、何が何でも、聖女候補達を
 一同にかいする夜会を開くのじゃ…良いな

 カレーニナ、女官長として宰相に……
 そなたでらちがあかねば…私が……」

 強気でごり押ししようとする皇妃リリアーナに魔術師エルダールが待ったをかける。

 「しばし、お待ちを姫様」

 「なんじゃ、エルダール?」

 怪訝そうな表情で、小首を傾げる皇妃リリアーナに、魔術師エルダールは首を振る。

 「今日は、無理かと思われます
 各騎士団の団長が揃っておりませぬ

 全騎士団の団長が揃うまでは
 夜会は無理と突っぱねるでしょう」

 エルダールの言葉に、皇妃リリアーナは、むっとした顔になる。
 が、女官長カレーニナや侍女長のマーリカ、皇妃守護騎士のニコラス達も、エルダールの言葉に賛成する。
 そして、代表して、皇妃守護騎士長のピョートルが言う。

 「皇妃リリアーナ様、ここは
 ドラゴニア帝国でございます

 皇帝陛下の次に、権力を持つは
 魔法騎士団の団長です

 その下に、魔法師団と神聖魔法師団で
 その更に下に、各騎士団があります

 その騎士団と同等と言われておりますのが
 四つの辺境守護騎士団となっております

 ドラゴニアンの国ゆえに
 《力》無き者の意見は通りません

 まして、今は、瘴気が溢れ返り
 魔の森より魔物達が溢れ出ております

 それゆえに、宰相殿よりも
 魔法騎士団の団長の権力が
 遥かに上になります

 ですから、団長であるアルファード様が
 夜会を開くことを拒否なされば
 開くことはかないません

 それをひるがえす権力をお持ちなのは
 皇帝陛下のみでございます

 陛下を煩わせることを
 良しとなさいますか?」

 そこまで丁寧に説明込みで言われても、皇妃というモノが絶対の権力だと思い込んでいる、皇妃リリアーナは、憤慨して言う。

 「私は、皇妃ぞ」

 私(皇妃)をないがしろにするのかという意味を込めてそう言う、皇妃リリアーナに、皇妃守護騎士長のピョートルが淡々と言う。
 熱く言うと、逆切れされる恐れがあるからだ。

 「それは、平時の時に有効な
 身分でございます」

 現在の状況では、皇妃という立場は有効に使えないと、淡々とした口調で言った後、皇妃守護騎士長のピョートルは溜め息混じりに言う。

 「せめて、アンジェロ様が中央騎士団の
 団長でありましたなら………

 少しは、アルファード様に
 対抗できたのですが………

 やっと、隊長になったばかりですから………
 格が違いすぎますので………

 聖女候補の処遇に口を出す隙は
 残念ながら、ございますまい

 エルダール殿…貴方から…もう少し……」

 皇妃守護騎士長のピョートルが、ドラゴニア帝国に嫁いで来る時に、教育をしなかったんですか?的なニュアンスで魔術師エルダールを見る。
 その視線の意味に気付き、内心で舌打ちしながらも、冷静な表情で皇妃リリアーナに言う。

 「姫様、我が国とドラゴニア帝国は
 法律も多々違います
 そして、権力のありかも、また違います

 本来は、魔法騎士団の団長を務める者が
 皇太子なのですよ

 また、アンジェロ様の髪の色と目の色では
 皇太子となることは、無理です」






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