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第7章 帝都にて、それぞれの時と思い
070★皇妃リリアーナの焦燥3
しおりを挟む淡々とした口調で、皇妃リリアーナの自尊心と確固たる縁(よすが)を抉るような事実を口にする。
「何故じゃ…私は皇妃じゃ………
この国の皇帝は、全て皇妃の産んだ
皇子のみと聞いておるぞ」
皇妃の子供が皇太子になると思い込んでいたと判る言葉に、皇妃守護騎士長のピョートルは魔術師エルダールを気の毒そうに見る。
その視線を感じつつ、勉強不足以前の皇妃リリアーナの発言に、頭痛を覚えつつも、確固たる事実だけを口にする。
「はぁ~……姫様、真面目に授業を
受けていませんでしたね
側室の皇子が皇太子となる時
皇妃の養子となし………
必ず…皇妃の皇子が皇帝となったという
形式を踏襲しているだけなのです……」
帰国して、王になんと説明したらいいやらと思いつつ、魔術師エルダールは本当に勉強をなさってなかったんですねぇ~と、首を振る。
〔はぁ~…アンジェロ様がご誕生した後
あの色を見て、次こそは皇帝の色を
纏った子を産みたいと言わなかったのは
次のお子を、陛下と頑張らなかったのは
勉強していなかったからですか…………
そこに、気付きませんでした
しかし、色々とやり過ぎていますからねぇ
第1皇子とは、完全に不仲ですし
その手も使えないんですよねぇ……
本当に、困ったものです〕
そう説明しても、まだ納得出来ない皇妃リリアーナは、継承順位を口にした。
「なんじゃと、したが……
あの子供(アルファード)の皇位継承権は
第3位となっておるぞ」
食い下がる皇妃リリアーナに、故国から付いて来た魔術師エルダールは、深い溜め息を吐いた後に、首を振って言う。
「姫様、そのような順位など
なんの意味もございませんよ」
「……?……?……」
言われた意味が理解(わか)らないという表情の皇妃リリアーナに、魔術師エルダールは、自分でも知っているんですけど…と、心の中で思いながら説明する。
「このドラゴニア帝国の皇帝になる為には
かならず、もっとも《魔力》があるという
意味で、魔法騎士団の団長になる必要が
あるのです
そして、皇太子とは、銀髪で紫紺の瞳を
持つ者でなければなりません
この国の皇帝は、全員、銀髪紫紺の瞳を
持つ者のみでした」
そこまで言われて、やっと皇妃リリアーナは、自分の皇子が本当の意味で皇太子と認められていないということを知る。
「それでは、私のアンジェロは
次の皇帝になれぬではないか………
なんとしても…あの邪魔な……
子供(アルファード)を………」
どこまでいっても、アルファードを排斥しようとする発言を控えない皇妃リリアーナに、魔術師エルダールは別の提案をする。
「今はそのようなことに手を出す時では
ございませぬよ、姫君
あちらが手に入れている、聖女候補を
こちらの手に入れるのです
まさしく、聖女様ならば、その姫君を
アンジェロ様の妃にすることが肝心です
たとえ、皇帝の色を纏っていなくても
過去に、聖女を手にした者が
皇帝になっておりましたので
アンジェロ様に、本物の《力》ある聖女を
さすれば、アンジェロ様は時期皇帝である
皇太子の座は安泰ですよ」
魔術師エルダールの言葉に、皇妃リリアーナは瞳を輝かせて言う。
いや、いささか狂気じみた色を滲ませた双眸を妖しく細めて………。
「おおそうか…名案じゃなエルダール
では、聖女の好むものを与え陥落させよ
さすれば、アンジェロが皇帝となれよう」
こうして、なんとか皇妃リリアーナの機嫌を取った一堂だった。
そして、エリカの受難が始まる?のだった。
異世界に来て、唯我独尊になりつつあるエリカに、皇妃からのあの手この手が通用するかは、流石にサラディール王国1番の魔術師エルダールにも判らなかった。
が、なんとか宥めて、ホッとしたのは、確かな事実だった。
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