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第8章 エリカは聖女候補達と一緒に学校に通いたい
097★大事な話しほど、よれるモノです
しおりを挟むオスカーの言葉を黙って聞いていたエリカは、アルファードを振り仰いで言う。
「アル、私、その魔法学園に通ってみたい」
そんなエリカのお強請りに、アルファードは困ってしまう。
〔うっ…そんなうるうるの瞳で見られたら
ダメって言えない……けど…予定は……〕
エリカと居る時間を出来るだけ削られたくないアルファードは、自分でも往生際が悪いと思いつつも、エリカに言う。
「あっと…そのな…エリカは、魔法騎士団
預かりだから、魔法騎士団で色々と習う
予定になっているんだ
勿論、他の聖女候補達も、それぞれの
所属する騎士団で、色々と習うことに
なっているんだ
一応、騎士団としてのバランスと護衛に
就く者が決まって…………」
そのセリフを聞いた聖女達が、ハモッて叫ぶ。
「「「「「「えぇ~それってすっごく嫌だぁぁ…
ストーカー視線の中で、色々な勉強なんて
絶対に無理ぃー……」」」」」」
綺麗にハモった内容に、エリカだけじゃなく、アルファードもオスカーもマクルーファやギデオンやレギオンまで、眉を顰める。
いや、その部屋に居た騎士達全てが…………。
代表して、同じ聖女候補のエリカが聞く。
「ねぇー…そのストーカー視線て何?」
聞かれた聖女候補達が顔を見合わせた後に、撫子が代表して言う。
「うん、あのね…エリカさんを、そこの
美少年な団長さんが馬から抱き降ろして
そのままお姫様抱っこで、こっちの本部に
立ち去った後ね
すっごい、ねっとりとした……
そう、まさにストーカー視線が……
うぅ~……気持ち悪い……」
その撫子に言葉に、エリカを抜かした他の5人も同感だとコクコクしながら、無意識に自分の腕や首筋などを擦るように撫でる。
ようするに、そういうところに視線を感じたらしい。
が、そもそもそのストーカーという言葉の意味が理解(わか)らないアルファード達は、困った顔でエリカに聞く。
「あのさ…エリカ…そのストーカー視線て
どういうモノを言うんだ?
視線と付くのだから、見るってことは
理解(わか)るんだけど……」
そう聞かれたエリカは、ちょっと小首を傾げて答える。
「えっとね…そもそもストーカーって……
ストーキングとも言ってね…いわゆる……
そう…追っかけって言えば良いのかな?
簡単に言えば、自分が好意を持った女の子や
男の子を追い回す行為のことなんだ
勿論。恋人関係にあっても、その行為は
やり過ぎればストーカーって言われるの
そういう人達の中には、妄想に入っちゃって
彼女(または、彼)は自分と愛し合っている
とか言い出して、自分が付きまとう行為を
正当化するの…………」
そこまで聞いたオスカーは、大きく納得顔で頷く。
「ああ、理解(わか)りました、はい
でしたら、確かに、聖女候補の姫君方が
感じたモノは確かにそういうモノですね」
オスカーの言葉に、今度は牡丹が勇気を振り絞って聞く。
「あ…あの…納得って…何かあるんですか?
《召還》された私達が、あんな気持ち悪い…
その…視線を受けるのって………」
不安そうに言う牡丹に、オスカーは優しく微笑みを浮かべて言う。
勿論、自分の微笑みの効果を知っていてやっているのだ。
「ええ、先ほども、姫君にそのことを
確認していたのですが…………
まだ、その様子ですと、聖女候補とは
と、いう話しを聞いていないようですね」
オスカーの確認するような発言に、鈴蘭が少しか細い声で言う。
「ワルター神官様から、試練の森で守護獣と
《感合》して手に入れなれば聖女になれない
というお話しと、精霊魔法と剣と乗馬とかを
習うというお話しは聞きました」
それに優しく頷いてから、1つ大きな溜め息を吐く。
「では、その聖女候補である姫君達の
内包する《魔力量》が、生まれる子に
確実に遺伝し、強い《魔力》を保有する
というお話しは聞いていないんですね」
オスカーのセリフに、エリカ以外の聖女候補は、その意味を正確に把握できてしまい、全員がムンクの叫びのポーズでハモって叫ぶ。
「「「「「「ええぇ~…うそぉ~…それって
狙われるってこと…最悪ぅ~……」」」」」」
その聖女候補の様子から、全員が意味を把握したと理解したオスカーはちょっと瞠目する。
〔おやおや、今回の聖女候補達は、全員
そういう意味での状況判断や機転とかが
効く利発な姫君達らしいですね
自分達の置かれている状況をこれだけで
きちんと把握するのですから…………〕
「ええ、ですから、各騎士団預かりで
守護騎士をきっちりと付けることになって
いるんですよ
まったく、いくら王城内だとて、野心家な
馬鹿は大勢いるというのに…………
預かった聖女候補の側を離れるなんて
言語道断ですね……まったく」
怒るオスカーに、すっぱりしているだけに気が割りと良い蘭がつい庇うように言ってしまう。
「いや、その…騎士様達から離れたの
私達………」
そんな蘭に、にっこりとアルカイックに笑って、アルファードが言う。
「それでもだ…聖女候補の側から離れる
というコトは警護するという職務を放棄
したのと同義語になる
本来ならば
『姫君、煩わしいでしょうが、これも
貴女の心身を守る為です
お側にいることを御許し下さい』
ぐらいは言って、何者からも守れるように
びったりと側に居るものだ
まったく、職務怠慢だな、そう思わないか
オスカー、マクルーファ」
最後の方は、魔法騎士団の団長として、底冷えするような怒りを抑えた声だった。
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