私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

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閑話

 ◆エリカのお願いは叶えられるか◆結局エリカの智慧でもぎ取りました

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 最終的には、皇家の色をまとうアルファードが皇帝になるのは決定しているかのように言うオスカーに、首を振る。

 「むっ…俺は…エリカと…
 魔法騎士団の団長で…伯爵で充分だ

 皇帝なんて面倒だ…やりたくない
 それに、どうせ…あの国が
 いちゃもんつけるんだから……」

 ※アルファードは、魔物討伐で手にした《魔石》や肉、毛皮やアイテムを国に納めた結果、爵位を手にいれました。
 
 アルファードの口調から、元の世界でさんざん日本が近隣の国からちょっかいかけられていたコトを思い出し、エリカはついぽつりと言う。

 〔パパが、艦から降りてグチる時、何時も

 『毎回毎回、ふざけやがって……
 あいつらの艦艇なんて中古なんだから
 エンジントラブルってコトですませて
 撃沈してやりたい』

 って、言っていた、アノ国とかと
 一緒なのかな? そんなに立場が弱いの?

 なにか弱みでも握られてのかな?
 もしかして、ハニートラップ?〕

 「ねぇ…それって、内政干渉?
  って、ことよね、何かあるの?」

 エリカが正確に、自分達から聞いた話しだけで現状を理解していることにびっくりしつつ、オスカーは深い溜め息混じりに言う。

 「この国の岩塩が取れなくなり
 輸入している先が、皇妃の故国なんです」

 〔あっ…それで皇妃の座を取ったんだ
 なるほど、祖国の後ろ盾が…岩塩か……
 だったら……〕

 「海は無いの?」

 エリカの意図を察して、苦笑いをしながらオスカーは答える。
 まぁそこに思考がいきますよね的な口調で………。

 「内海があります
 一応、塩水湖なんですが………」
 そこで、オスカーはつい言葉を途切れさせてしまう。
 エリカは不思議そうな表情で聞く。

 「オスカーさんにしては
 歯切れが悪いですね」

 珍しいモノを見たような表情のエリカに、オスカーも情けない表情になって言う。

 「やたらと出るんです、魔物が……
 それも大型の面倒なモノが……

 瘴気が濃くなって魔物討伐が増えた
 大変な時期に、それは不可能なので……

 ざっくり言えば、ムカついています
 あの国と皇妃に」

 岩塩を盾に、言いたい放題してくれて……と、いう言葉が滲むオスカーに、エリカはちょっと考える。

 〔あっ…良いこと思いついちゃった……
 一応、オスカーさん…アルと一緒に

 学校に通うの許してくれたけど
 確約してもらってないから………〕

 「う~ん、簡単に考えれば良いのに」

 エリカの表情と言葉に、何度も何度も厭な思いをしてきたアルファードが食い付く。

 「エリカ…何か考えがあるのか?」

 アルファードの食い付きに、エリカは悪戯っ子な表情で笑いながら言う。

 「私、高校1年生だったの………
 あのね、高校の3年間って青春って感じで
 生涯の友人を作るって時期なの………

 だから…魔法学園で3年は学生をしたいな
 他の聖女候補の子達と…………

 勿論、聖女としての仕事はするから…………
 でっ…アルと一緒に通いたいの………

 それを許してくれるなら………
 確約してくれるなら
 良い方法を教えてもイイよ」

 そのエリカのセリフに、皇妃の嫌がらせに辟易していたアルファードが、オスカーを見て言う。
 俺、もうイヤだというニュアンスを込めて………。

 「オスカー…仕事を………
 ちょっと、控えてもイイか?」

 オスカーとしても、皇妃のやりたい放題にどうにか対処しなければと思っていたので、良い智慧があるなら、アルファードの為(いや、可愛いエリカの為です)それぐらいの時間を捻出しても構わないという気分だったので快諾する。

 「ええ、良いですよ
 今の団長なら《魔力》の暴走は無いでしょう

 それに、普通の貴族の子弟として
 学園を楽しむのも良いでしょう

 貴方は、子供時代が
 ほとんど無かったんですから………
 姫君と勉強を楽しんで下さい

 その分は、マクルーファとギデオン様や
 レギオン様にやらせますから……」

 エリカから見て、魔法騎士団一の権力者である、オスカーからの言葉に、嬉しそうに言う。

 「やったー…ありがとう…オスカーさん……」

 全身で嬉しいのを表すエリカに、オスカーはにっこりと笑う。

 「いえいえ…聖女候補の中に
 生涯の友となれる人がいると良いですね

 団長…貴方も…他の兄弟と交流して
 遊ぶか、からかうか、苛めるか

 利用するか、敵とするかなどの使い道を
 考えるのも良いと思いますよ」

 ガッツリと腹黒いことを言うオスカーに、エリカと通うことを許されたアルファードが嬉しそうに言う。

 「ああ…色々と見極めてみるよ
 ありがとうオスカー…マクルーファ…
 ギデオン、レギオン頼んだぞ」

 「「「はい」」」

 さて、これで話しはまとまったとばかりに、オスカーはエリカに向き直って聞く。

 「さて、姫君、塩を手にする方法を
 教えていただけますか?」

 そんなオスカーに、エリカはあっさりと答える。

 「帝国内に塩水湖があるなら
 単純に考えれば良かったのよ

 その塩水湖の上で、風魔法を使って
 大きな竜巻を作るのよ
 そうすると塩水を吸い上げるでしょう

 それを…水魔法で集めるの………
 集めたら…火と風の魔法を使って
 水分を蒸発させるの…………

 そうすると塩が残るから…………
 ただし…魔物も混じるかもですけど

 この方法だと沢山の良質な栄養を含んだ塩が
 1回で取れますよ」

 自然災害の多い日本に住んでいたエリカは、竜巻の原理というモノを知っているので、当然のようにソレを言うのだ。
 もちろん、エリカには自衛隊の艦艇に乗るパパからの海についての知識もあるのだ。
 だから、エリカは絶対的な知識の差と言うモノには、気付いていなかった。
 単に、大人になって頭が堅くなったので、オスカー達が思いつかないだけだと思っているのだ。

 そんな基礎知識の差による発言に、その場に居た者達は瞠目する。
 確かに、言われてみれば、わりと簡単な手法で塩が手に入る事実に、アルファードは今までの頭痛の種(皇妃とその祖国)が、簡単に排除できることを知って、とても爽やかに笑って言う。

 「ありがとう、エリカ
 後でやってみよう」

 何時も何時も、皇妃に絡まれることに耐えていたアルファードが、嬉々としている姿を見ながら、オスカーは深い溜め息を吐き出す。

 「そんな方法、誰も思いつかないですね」

 異世界の聖女の知識が欲しいと、何時も魔法使いや神官達が騒ぐ理由を、たった今、目の当たりにしたオスカーは、その至宝(聖女)を抱き締めるアルファードの幸せそうな姿に、ゆったりと微笑む。
 その隣りでは、何時の間にかちゃっかりと側に戻って来たマクルーファが、ポツリと呟いていた。

 「流石は、異世界の聖女様だ」

 こうしてエリカは、小さな智慧のひとつと交換で、アルファードと魔法学園に通うコトを、オスカーに許可されたのだった。
 






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