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第8章 エリカは聖女候補達と一緒に学校に通いたい

107★異世界には、ゴムも存在してませんでした

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 エリカの言葉に、アルファードは瞳をキラキラさせる。
 が、それは塩を作れるかも知れないの期待か、お米というモノを食べられるかも知れないという期待の輝きかはさだかではない。
 オスカーは、エリカの提案というか建設的な塩を作る方法に瞠目する。

 なぜなら、自然災害の多い日本に住んでいたエリカには、竜巻の原理というモノを知識として知っているので、当然のようにソレを言うのだ。
 もちろん、エリカには自衛隊の艦艇に乗るパパからの海についての知識もある、そういう知識の蓄積による提案だった。

 だから、エリカにしろ、聖女候補の6人にしろ、日本の四季と気象に慣れきっているので、そういう意味での絶対的な知識の差と言うモノがあった。
 が、勿論、エリカ達は全然気付いていなかった。

 単に、大人になって頭が堅くなったので、オスカー達が思いつかないだけだと思っているのだ。

 そんな基礎知識の差による発言に、その場に居た者達は瞠目する。
 確かに、言われてみれば、わりと簡単な手法で塩が手に入る事実に、アルファードは今までの頭痛の種(皇妃とその故国)が、簡単に排除できることを知って、とても爽やかに笑って言う。

 「ありがとう、エリカ…後でやってみよう」

 何時も何時も、皇妃に絡まれることに耐えていたアルファードが、嬉々としている姿を見ながら、オスカーは深い溜め息を吐き出す。

 「そんな方法、誰も思いつかないですね
 しかし、あの塩水湖の水を運んで、塩田
 とかいうモノを作るという発想は
 有りませんでしたね

 やはり、お米とかいうモノを栽培している
 からでしょうか?

 姫君の知識は侮れませんね
 だから、あれらも無理と無茶を承知で
 シオババアの命令に従ったんでしょうね」

 異世界の聖女の知識が欲しいと、何時も魔法使いや神官達が騒ぐ理由を、たった今、目の当たりにしたオスカーは、その至宝(聖女)を抱き締めるアルファードの幸せそうな姿に、ゆったりと微笑む。
 その隣りでは、何時の間にかちゃっかりとエリカの側に寄って来たマクルーファが、ポツリと呟いていた。

 「流石は、異世界の聖女様だ」

 そんな中、6人の聖女候補達も小さく言い合っていた。

 「本当に、侮れないわ、彼女のスーツケース
 あのエレベーターを待っていたホールで
 すっごく重そうに押していたけど…………」

 「いったい、どんなモノがあのスーツケース
 に入っているのかなぁ?」

 「いやいや、荷物を詰め込んだって判る
 大きなリュックも背負っていたよね」

 「うん、あと腰にもウエストポーチを
 着けてなかった?」

 「あと、ショルダーバックも肩に掛けていた
 気がする……彼女インパクトあったから……」

 「うん、すっごい大荷物だったから、きっと
 下に行ったら、タクシーでも拾って
 乗るんだろうなぁーって思っていた」

 などという会話をしていた。
 それを、レギオンとギデオンは詳細に、ただ黙って聞いていたりする。
 後で、聖女候補達の会話に含まれるモノを見聞する為に。
 本人達は、何気ない会話のつもりでも、どこに聖女候補の知識が転がっているか判らないのだ。

 〔みんなそれぞれの思考に入っているみたい
 だけど、やってみないと判らないし…………
 試行錯誤は必要たと思う

 それに、その塩水湖っていうのに
 私も行ってみたいし…………帝都からだと
 馬で何日で塩水湖に行けるのかな?
 オスカーさんに聞いてみれば良いかな〕

 エリカは、聖女候補が会話している内容を気にするコト無く、自分の知りたいコトをオスカーに聞くのだった。

 「えーと、オスカーさん
 帝都から塩水湖に行くとして
 馬でだったら何日かかりますか?」

 エリカの素朴な質問に、オスカーは笑って答える。

 「帝都からだと、馬でも5日はかかりますよ」

 返って来た答えに、エリカはちょっと小首を傾げて、更に聞く

 「馬でだと、5日ですか……
 馬車だったら何日かかりますか?」

 エリカの聞きたいコトを理解したオスカーは、きちんと答える。

 「12日から15日ぐらいですね」

 その答えを聞いたエリカは、再び小首を傾げる。

 「馬の方が確実に速いですね」

 エリカの実感のこもった感想に、オスカーは肩を竦める。

 「馬車は道を選びますから…………」

 そう言ってから、オスカーは更に言う。

 「馬なら、整備されていない草原を
 突っ切るコトも出来ますからね
 もう1日旅程を減らすことが出来ますよ」

 少しの無理でもう1日早く着けると聞いて、エリカは車にそれを例える。

 「う~ん、四輪駆動のジープや軍用車と
 アスファルトの道路しか走れないセダン
 って感じかなぁ?」

 その具体的な説明に、エリカとオスカーのやりとりを黙って聞いていた聖女候補達はやっと理解する。

 「うん、なるほどね」

 そう桔梗がぽつりと言えば、蘭が小首を傾げながら聞く。

 「素朴な疑問なんだけど
 馬車の車輪ってゴム使ってるの?」

 聞かれたオスカーは、再び自分の知らない単語が出て来たので、好奇心という瞳で聞き返す。

 「ゴムってなんですか?」

 その返答に、エリカまで聖女候補達と声をハモらせてしまう。

 「「「「「「「えっぇ~ゴムって無いの?」」」」」」」

 7人の聖女候補の言葉に、オスカーは淡々と答える。

 「そう呼ばれているモノは無いです」






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