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第10章 緑の魔の森にて

144★嫌われるのが怖いので内緒です

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 今の自分が言うべきこととするべきことを判断したオスカーは、とりあえずアルファードに言う。

 「では、このまま姫君が納得するまで
 黙って…いいえ、気配を消して静かに
 待ちましょうね、団長」

 オスカーの提案に、アルファードは嫌そうな顔をする。

 〔えっ? このまま、エリカの下着姿を
 黙ってここで見ていろって言うのか?

 できれば、今すぐにでも、俺の着替えを
 手渡してやりたいんだが……

 でも…オスカーの言葉を聞いておけと……
 父上やお祖母様に言われていたからなぁ~

 それに、怒らせると後々とても祟るし……
 ここは、従うしか無いか?

 いや、でもちょっと言ってみても……〕

 「それでは、まるで覗きをしているようで
 いやなのだが…………」

 そう言うアルファードの表情に、オスカーは苦笑する。
 が、自分の意見を引っ込めたりしない。

 「しょうがありませんよ
 着替えの途中というか最中なんですから……
 ここは…おとなしく待ちましょう
 じゃないと、姫君に嫌われますよ」

 そう言って、見守りの意見を曲げないオスカーに、言葉を変えてアルファードはイヤだと言う。

 「待つしか無いのか?」

 ダダコネとは違うのだが、言い聞かせるのも面倒になったオスカーは、ちょっと逃げを打ってしまう。

 「姫君が自分で納得するまでは
 待っていた方が良いですね
 私は、姫君に嫌われたくありませんから

 というコトで、危険もなさそうなので
 私は騎士達に口止めに行きます

 早く来ていたとバレたら、姫君に
 口をきいてもらえなくなりそうですから

 勿論、お1人で大丈夫ですよね
 ねっ団長?」

 オスカーの言葉に、アルファードは苦笑して許可する。

 〔ふっ…オスカーの言う通りだな
 騎士達に、俺達がここにいたということを
 エリカにバラされたら困ったことになる

 ここは、オスカーを逃がしてやるか
 それに、あのツタは討伐されているから
 大丈夫だろう〕

 「ああ大丈夫だ、さっさと行って
 騎士達の口止めして帰って来い」

 「はい」

 アルファードから許可されたので、オスカーはさっさと騎士達の元に戻ることにして頷く。
 立ち去って行くオスカーを見ながら、アルファードは溜め息を吐き出した。

 〔早く、エリカの無事を自分の手で
 確認したい……けど……〕

 そんなコトを考えながら、アルファードは、視線をエリカに戻した。
 その視線の先では、スカーフで出来たワンピースに着替えて、空中に停止しているエリカがいた。

 〔ああ…着替え終わったんだったら
 気配を出して走りよってもイイよな
 もう、我慢できない
 早く、エリカを自分の手で感じたい
 無事だと確認したい

 洞窟の少し手前まで1度戻ってから
 走りながら、エリカに声をかけよう〕

 アルファードは、自分でもちょっと姑息と思いつつも、そっと洞窟の入り口のかなり前までもどった。
 そして、殺していた気配を、そのままに戻してエリカに向かって走り出した。
 花々が咲いている場所に着いたアルファードは、エリカの名前を呼んだ。

 「エリカー大丈夫かぁ~……エリカー……」
 
 その気配と声に、エリカは振り向いた。
 そして、アルファードの姿を認めた途端、エリカの表情はぱぁーっと明るくなった。
 
 「アルぅーここよー」

 空中でエリカは嬉しそうに笑って手を振った。
 そんなエリカに、爽やかに笑いながらアルファードが質問する。

 「エリカ、なんで、騎士服じゃないんだ?
 それと、その衣装はどうしたんだ?
 それと、なぜ空中にいるんだ?
 あのツタは?」

 アルファードの矢継ぎ早な質問に、エリカは頬を赤く染めながら答える。

 「あのね、服は紫のツタに裂かれちゃったの
 だから、スカーフで洋服を作ったの

 それと、ツタは魔法で処分したけど……
 本体って言うか、根っこは処理していないから

 また、出現したら怖いから、空中にいるの
 あっ…アルファードも気を付けてね

 あの博識なオスカーさんでさえ、詳しくは
 知らないモノだったみたいだから……」

 エリカの答えに、アルファードは地中に探索をかける。
 すると、けっこう大きな根っこ?が見付かった。
その根っこに向かってアルファードは走りより、飛び上がりながら剣を抜いて高温の炎をまとわせて一気に地面に突き刺した。

 その衝撃は、紫ツタ本体と洞窟にかなりの衝撃を与えた。
 結果、苦しむ根っこの動きと地面に打ち込まれた衝撃が合わさって、洞窟内がぐらぐらと揺れた。

 が、そんなコトに構う気が無いアルファードは再度攻撃をかける。
 アルファードにすれば、愛しいエリカを攫い、恐怖を与えて下着姿にして羞恥心を刺激しまくった諸悪の根源でしかない根っこに、使う気遣いなんて無かったから







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