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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

195★不審な視線?

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 翌日、桜は和輝の溜め息と独り言で目を覚ました。

 ぅん? なんなのぉ?
 せっかくとても気持ち良く
 寝ていたのにぃ~

 あっ…もう…和輝は…
 起きてしまうの?

 もっと、この素肌に
 張り付いていたいのになぁ~

 そんな桜の内心を知らない和輝は、寝起き1番で、自分が再び全裸で、やはり全裸の桜にべったりと縋られていたコトを知って、ふかぁ~い溜め息を吐いていた。

 「はぁ~……またかよ…

  なんでこう…桜は、俺の
  パジャマや下着を取って

  裸で抱き合って寝る
  クセがあるんだよぉ~

  これだから、恋人の居る
  女は困るんだよなぁ……

  はぁ~あ…まして桜の相手は
  あのハリウッドで活躍している
  紅夜だもんなぁ

  いっくら、ダメだって言っても
  馬の耳に念仏なんだもんなぁ~

  紅夜のあほったれ
  さっさと帰って来いよ
  桜を1人にするんじゃねぇ~よ

  俺はペットシッターなんだよ

  はぁ~ぐずっても仕様が無いな
  ここは、さっさと起きて
  意識を切り替え用

  そして、今日の朝飯の準備と
  〈レイ〉と〈サラ〉の散歩に
  行くとするか………」

 自分にいい聞かせるようにそう言って、心の切り替えを済ませた和輝は、桜の眠るベッドから静かにそぉ~っと降り、下着やパジャマを身に着けてから寝室から出て行った。
 勿論、その後を静かにお尻尾をふりふりしながら、2頭のボルゾイが付いて行く。

 そして、当然のコトながら、和輝は深夜に、自分がされた淫らな行為のコトは、何一つ覚えていなかった。
 勿論、その開くはずのない左側のドアが開き、当主がほんのひと時、一時帰国したコトも知らなかった。

 リビングに出た和輝は、手早く自分達の朝食の準備と2頭のご飯を用意する。
 当然、前日同様に、たっぷりのおにぎりを握ってから、落合のリクエストを思い出して、おかずのタッパーを余分に作る。
 朝食とお弁当の準備をすませた和輝は、その合間に用意した、パウンドケーキのタネをあたためておいたオーブンに入れて、時間をセットする。

 「よし、これでOK
  んじゃ行こうか?
  〈レイ〉〈サラ〉」

 名前を呼ばれた2頭は、昨日の朝、和輝に褒められたので、自分達用の首輪の付いた引き綱を咥えてくる。

 「本当に、お前らって
  良い子だなぁ

  よし、行こう

  つっても、途中で
  俺の部屋に寄ってからな

  このパジャマ姿じゃ
  散歩に行けないからな」

 和輝の言葉が理解できたらしい二頭は、お尻尾をふりふりおとなしく待つ。
 毎日のお散歩など、2頭にとっては夢のまた夢だったコトを知らない和輝は、散歩は毎日すると思っていたので、律儀にドアを開き、散歩に出かけるのだった。

 ペットハウスから出た和輝は、2頭を連れて借りた家の自室へと行き、そこでパジャマからジャージに着替えて、昨日の朝と同じ散歩コースへと向かった。
 双子の妹達を竜也と輝虎に預けてある為、行動に何の支障も無い和輝は、昨日と同じ散歩コースへと出た。
 そして、途中で、和輝はなんとも言えない感覚に首を何度も傾げるのだった。

 う~ん……やっぱり…
 可愛いよなぁ~ボルゾイって

 今回の住み込みのバイトで
 寂しい思いをさせるからって

 2人で1つだけ、なんでも
 聞いてやるって言ったら

 ペットもOKかって
 聞いてきたからなぁ~………

 優奈と真奈のお願い事って
 やっぱり、犬を飼いたいかなぁ?

 それも、こいつらみたいに
 デッケー犬
 出来れば、ボルゾイかな?

 まっ…優奈と真奈に
 おねだりされた時に
 考えればいっか………

 どうせ、この住み込みの
 バイトが終わってからの
 話しなんだし

 ぅん? なんだぁ?
 この妙な感覚? 視線?

 まるで、値踏みするかのように、自分を観察する視線を感じて、和輝は立ち止まって辺りをよぉ~く見回す。

 「……? 気のせいか?
  まっ……いっか……

  それ、ダッシュだ…ゴー」

 和輝に声を掛けられた2頭は、同じように立ち止まって辺りを窺がっていたが、その号令で嬉しそうに走り始める。
 それにつられて、和輝は表面上は何事も無かったかのように走り始める。
 が、内心では不信感のかたまりになっていた。

 ん~……なぁ~んか…ああいう
 粘着質的な…執拗な感じの視線…
 知っている気がするんだけど?

 こう…なんか…引っ掛かって……
 思い出せねぇ~なぁ~………
 俺って、健忘症かなぁ?

 こう…ものすごぉ~く…
 嫌ぁ~なモンを感じる
 視線だったけどぉ?

 その反面…まっ…俺の感覚が
 たいしたコト無いって…
 言っているから、いっか

 ちょっとだけ頭をポリポリして、和輝はたったと蓬莱家に戻るのだった。










 
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