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007★前世の記憶がチラホラと湧き上がって来ます

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 俺は回廊に出て歩く、ちなみにこの回廊はグネグネしている。
 真っ直ぐ歩いているつもりでも、右に左に折れる上に、上下にも移動するのだ。

 それは、ここが擬似生命アースの体内だから………。
 ほどなくして、宝具部屋に到着する。

 「ここは色々な魔道具があったはず」

 宝具部屋に入ると、中には何処かの展示場状態になっていた。
 俺は、ただ擬似生命アースを連れて行く為だけに、そこに展示されている盾や剣などをひょいひょいと回収して行く。

 もうこうなって来ると、気分は汚屋敷の清掃夫の気分である。
 いや、モノは確かに素晴らしいモノばかりなのだが………。

 それが理解できていても、面倒であるコトは変わりないのだ。
 ただ、空間の中にモノが残っていると、擬似生命アースを用意したうつわに収納するコトが出来ないので、ただただそれだけの為にインベントリの中に収蔵品を仕舞い込む。

 使えそうな手頃な剣を一振り残す、勿論身に着ける為の剣帯もである。
 そして、その部屋にあるモノで、普通に着れそうな衣装を見繕う。

 たとえそれが伝説級とかのマントであろうと、見た目は普通の旅人の服だけど、その実神話級なんてモノがちょうどイイコトにあったので、面倒だと思いつつも、俺は着替えた。
 そして、剣帯を身に着けて剣を装備する。

 はぁ~………前世の精霊の神子姫の時、確かに剣も扱っていたけど
 俺って、そこまでの腕じゃ無かったんだよねぇ………

 つっても、この剣に任せれば、それなりの戦いは出来るけどね
 コレってそういう剣だから………

 1度スラリっとやや装飾過多な鞘から抜いて、剣をマジマジと見る。
 そしたら、聞こえましたとも………。

 『お前が 我のマスターか?』

 と、いうお声がね。
 そして思ったのは、あっコイツ意思があるタイプのヤツだ………だったりする。
 こういう剣は、任せるとイイ働きをしてくれるんだよな。

 「よろしくな、俺はシリュウだ
  紫の龍と書いてシリュウって読むんだ
  お前に名前はあるのか?」
 
 俺からの問い掛けに、剣が答えてくれた。

 『我は これでも神話級なのだが………
  まだまだ 我の名は知られていないのだな

  改めて 名乗ろう 我は雷を纏いし剣
  穿空の雷帝(せんくうのらいてい)と言う

  気安く ライちゃんと呼んでくれ
  いや センちゃんでもイイぞ』

 と、本人いわく、神話級の剣だそうだが、実に明るく軽い男?たぶん、男である。
 本人の申告で、俺はライちゃんと呼ぶコトに決めた。

 「これからよろしくな、ライちゃん」

 俺がそう言うと、満足そうにウムウムと頷いている。
 使い勝手も良さそうだし、なにより今の俺の身体に合っているんで、ちょっとウキウキしながら探索する。

 室内の魔道具を粗方インベントリに放り込んだ俺は、最後の部屋に向かうコトにした。
 最後の部屋と呼ばれるソコには、先祖代々掻き集めた珍しい果物や野菜の種子などが《時止め》状態で、大量に封印されているのだ。

 実際、俺が精霊の神子姫として生きていた時代にも、2度ほどその部屋から作物の種子を供出して使ったコトがあったりする。
 強い瘴気を伴った魔素がいたるところで発生し、多くの食料を供給してくれる植物がほとんど根絶やしになったコトがあり、それでココから取り出した種子を使ったのだ。

 もっとも、それがいけなかったのだろう。
 大国、それも帝国と呼ばれる国に目を付けられてしまったのだから………。
 ただ、1部は確かに上の城の1室に持ち出していたが、それは本当に極々1部のモノだったりする。
 
 クスクス………きっと、無いって叫んだろうな、あの俺様男
 帝国の第2皇子だったようだけど、あれじゃーなぁ~………
 マジ、残念系の俺様皇子様だったもんな

 あの男、俺に向かって情けで愛妾にしてやるとかほざきおったわ
 だから、魂魄を使ってでも《契約》していた精霊達を逃がしたんだけどな

 精霊は、多くの民達にも馴染み深い存在だった
 そう、俺が死ぬ直前まではな 
 
  
 







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