〔仮〕悪役令嬢は婚約破棄で自由を謳歌する

ブラックベリィ

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003★虚無に冷めていくこころ

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 この世界の両親やその両親である、私にとっての祖母や祖父から愛情をもらったという記憶は無い。
 そう、どちらの祖父母からも、可愛がられた覚えは無い。

 私に王子妃教育をする王妃様や側妃様達からも、そういう意味で可愛がられたコトなんてない。
 別の意味での可愛がり(イジメやイビリ)はあるけど‥‥‥。

 ファンタジー恋愛系のラノベに出てくるような、厳しくも優しい王妃や側妃なんて存在していない。
 気に入らないコトがあると、教育という名目で、私を気まぐれにイジメるだけ‥‥‥。

 この世界の私は愛情というモノを味わったコトがない。
 だから、どういう風に他人に接して良いかわからなかった。
 けど、前世では確かに私は、両親からも兄達からも愛されていた。
 親戚の人達の中には、確かに狡賢くてイヤな人達もいたけど、大半は優しい人達ばかりだった。

 (とはいえ、幸せな前世を
  思い出したからって‥‥‥
  この国の人達を愛せるほど
  私はできた人間じゃんない

  愛情を持って接してくれる
  そういう人達がいたら‥‥‥

  あんな癇癪を起こして
  ヒステリーに怒鳴ったり
  意地悪なんてしなかった

  ‥‥‥と、思う‥‥たぶん)

 それでも、母がいるのに愛人を作って、義弟を作ったお父様に、愛して欲しいと、前世を思い出す前は思っていた。
 少しでも振り向いて欲しくて、頑張って王子妃教育も必死に受けた。
 及第点以上になるように、頑張って頑張って‥‥‥でも、結局、お父様は私を見てはくれなかった。

 第1王子の婚約者‥‥‥道具としての私しか必要としなかった。
 優しい声ひとつ私には与えてくださらなかった。
 義弟のアンリを抱き上げ、頭を撫でて褒めるコトはあっても、私にはひと言も下さらない。

 (ずっとずっと、心が寂しさで
  壊れてしまいそうだった

  けど、もうお父様の愛情を
  望もうとは思わない‥‥‥

  所詮は、お母様とお父様の
  婚姻は貴族義務と責任だけの
  親同士が家の都合で決めた
  婚姻だったのだから‥‥‥)
 
 私はただただ諦めの中、静かに無意識の涙を流す。
 そんな中、部屋をノックする音が響く。
 私は頬に流れた涙をソッと拭い、ひとつ大きく溜息を吐いてから、ノックに応える。

 (溜息を吐くと
  それだけ幸せが逃げるぞ
  って、よくお兄様達に
  言われたけど‥‥‥

  ここには、どこにも
  幸せなんてモノは
  存在してないもの‥‥‥)

 「どうぞ」

 私の応答に、ドアが開いて侍女のマーサが飛び込んで来る。

 「おっ‥‥お嬢様‥お嬢様
  良かったぁ‥‥あっ‥
  じゃなくって‥‥‥

  ダンナ様がお帰りになって
  お嬢様に、直ぐに
  執務室に来るようにって‥‥‥」

 マーサの言葉に、私の中の何かがスゥーと冷えていくのを感じながら、私は慣れ親しんだ無表情を顔に貼り付ける。

 「そう、わかったわ
  着替えを用意して‥‥‥」

 (私が、階段最上段から
  義母に突き落とされたコト
  きちんと正しくお父様に
  報告されているのかしら?

  ふっ‥‥‥使用人達は‥‥‥
  きっと、わが身可愛さに

  義母のしたコトを十中八九
  いや、100パーセント
  報告してないでしょうねぇ

  大体、お父様だって
  階段から突き落とされた
  娘の見舞いにすら
  来ないのだから‥‥‥

  愛されていないコトは
  薄々どころじゃなく
  感じてはいたけどねぇ‥‥‥

  はぁ~‥‥何を言われるやら
  もう、なんか‥イヤんなったわ

  高貴なる貴族としての
  義務も責任もいらないわ
  ‥‥‥マジで‥‥‥はぁ~)

 冷え切ったこころで、侍女のマーサに手伝ってもらい、痛む身体をおして着替え、薄く化粧もしてもらう。
 顔色が悪いコトを隠す為に‥‥‥。

 もちろん、ドレスはそれとなく色の濃い長袖タイプを選んだ。
 なぜなら、階段を転げ落ちた為に、体中にがっちりと鬱血の痕跡があるから、それを隠す必要があるから‥‥‥。

 










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