先生、死に場所を探しています。

葵愛利華

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第1章

2話:憧れた人

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林田果歩(はやしだかほ)side…

今日の放課後、榊という高校の教師をやってる男に呼び出された。
話の内容は、分かってる。私のこの顔にある痣の事だろう。きっとあいつも他の教師みたいに、自分のクラスにいじめられっ子がいたら、学校からの評価が下がると思っているのだろう。ああいう、外面善男は。
腹が立つ。腹が立つのは、あの日私を救ってくれた人に似ているから?いや、でも全然似てない。そう思ってたのに。
「ったく、この俺がおしえてやってんのに理解できねーとかあり得ねーから。」
「榊先生、私に用事ってなんですか?」
どうして、こんなにも口調が似ているのだろうか?
「林田、お前イジメにあってるだろ。」
どうして、どうしてなんだろうか?
「その程度のことで私を呼び出したんですか?バカバカしい。それに、先生さっきから性格悪いっていうボロが出てますよ。」
「あ?お前の前で、さらけ出したところでお前のこと信じるやついねーだろ?」
笑った顔があの人にそっくりだと、思ってしまうのだろか?
「…それで、先生は苛められている可愛そうな私を助けてくれるんですか?」
「お前が、助けてって言うならな?」
「アハハっ、先生…性格悪いですね?超上から目線です。」
「まあ、俺様だしな?」
でも、あの人じゃない!絶対にあの人じゃない。それに私は、あの人に顔向けできない。あの人は、私を助けてくれると言ったのに私は、あの人から逃げた。
「大丈夫です。私には、【辛い時、俺のところに逃げてこい】って言ってくれた相手がいるんです。」
どうやら少女は、俺の顔を忘れてしまっているようだ。その言葉は忘れていないのに。
「そっか。じゃあ、辛い時、俺のとこに来いよ?」
「なんで私が、あなたの所に行かないといけないんですか?!失礼しました!」
私は、もうこれ以上榊のところにいたくなくて、また逃げ出した。あの人の所から逃げたように。


「おいっ、ブス」
無視すると、髪を引っ張られ、頬を叩かれ誰が踏んだかもわからない地面に押し倒される。
「無視してんじゃねえっ!」
(痛くない。怖くない。悲しくない。辛くない。あの人の前から逃げてしまった時よりも楽な気持ちだ。)
どんなに殴られようが、蹴られようが私は、辛くなかった。辛くないと思ってた。
「…気、済んだ?」
冷ややかに言い放つ。
「なんだよ、その上から目線。調子乗ってんじゃねーぞ!」
私が、苛められている場面をたまたま見た教師は、可愛そうな子を見る目で過ぎ去っていく。
(ふざけんな。助けろよ。それに、私は可愛そうな子じゃない!)
そう思っていると、榊が目の前を通る。目が合った。
(どうせ、あいつも他の教師みたいに可愛そうな子を見る目で通り過ぎてくんだろ。)
そう思っていると、榊は意地の悪い顔で口パクする。
【助けて欲しいか?】
私は、それを見て認めたくないけど…
「助けて!」
そう腹の底から叫んでいた。榊は、猛ダッシュで私のところに走り寄ってくる。
「おいっ、ブス。てめぇら、タダでさえ、顔きたねーのにきたねーことしてんなよ?」
「えっ?榊先生?」
榊は、もう一度言う。
「おいっ、ブス。消えろ。」
私を虐めていた少女達は、走り去っていく。泣きながら。ざまあみろと思った。
「お前、助けて欲しい時、助けてって言えるじゃねーか。」
「…そっ、それよりもいいんですか?」
「ん?何が?」
「外面善男じゃない本当の顔、あの子達に見せて。」
榊は、笑う。
「ハッ、あいつらはきっと俺の本当の顔信じられなくて、夢だと思うだろうな?」
「先生、今日の事は感謝します。でも、もうほっといてください。私は、1人でも大丈夫ですから。」
「へえ。お前、何がしたいの?生きたいの?死にたいの?」 
急に榊にそう問われた。私は、笑って言う。
「私は、毎日自分の死に場所を探しているんですよ。」
「そうか。」
その夜、私は家に帰らなかった。
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