先生、死に場所を探しています。

葵愛利華

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第2章

11話:涙

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榊悠馬side…

林田が、ビルから飛び降りてもう一ヶ月になる。
(林田…俺、お前の質問の答え今、分かった。)
「俺、お前がいないと寂しい…悲しいぞ。泣きたい気持ちなのに泣けない。何でだろうな?」
(きっとお前が、俺の前から消えたことを認めたくないんだろう。)
俺は、病院の廊下を歩きながら、呟く。そして、俺が足を止めた病室は林田の眠っている部屋だ。
ピッピッと電子音の心臓の音。君が、まだ生きている証。
「おい、林田…笑ってくれよ。」
「…あの、どちら様ですか?」
林田に似た顔立ちの女性がいた。
「…林田の担任の榊悠馬です。彼女には、彼女が12歳の時からお世話になってました。」
彼女は、さみしそうな顔で笑う。
「そう。この子にも、貴方みたいな人がいたんですね。」
「えっ?どういう事ですか?」
「私、そこに眠っている果歩の母です。」
「じゃあ、貴方が果歩に虐待をしていた。」
俺は、憎しみを込めた声で言う。彼女は、それに気づいたのか、俺が虐待していた事を知っていることを後ろめたく思ったのか、下を向く。
「ええ。知っていたんですね。」
「はい。でも、彼女は何も言いませんでしたよ。俺がただ、気付いただけです。」
「…そうですか。」
「それで、貴方は…今まで林田を置いてどこかへ行っていたんでしょう?何故帰ってきたんですか?」
「…私、気付いたんです。」
「???」
俺は、訝しげに眉をひそめる。
「あの頃、私はずっとどうしてあの子を産んでしまったのか考えていたんです。ずっとずっと。そして、夫が死に、私1人で果歩を育てるのは、無理だと思い逃げ出したんです。だけど、ある日気付いたんです。果歩を産んだのは、夫との子供が欲しかったから…それと果歩をあの人と同じくらい愛していたことを。」
「…ですが、そんな話林田は信じませんよ、きっと。」
「そうね。私は、あの子に対して、親として許されないことを散々してきたから。だから、貴方に果歩をお願いしたいの。」
「そうやってまた、逃げるんですか?自分の問題でしょ?他人の俺に全部委ねないでください。」
「でも、貴方果歩のこと愛してるでしょ?」
俺は、目を見開く。
「────っ!」
「図星ね。とにかく頼んだわよ。」
「…お…か…さ…ん。わた…し…し…に…たく…な…い」
林田の声がし、ベットに眠る林田を見ると、彼女は泣いていた。
「おいっ、林田!おいっ!」
「看護師呼んできます。」
「お願いします。」
ずっと林田の名前を呼び続ける。
「林田!林田ぁっ!目覚ませ!お前のお母さん、本当はお前を愛してたんだよ!だから、ちゃんとお母さんと話せ!」
そう叫ぶと、ゆっくりと林田の目が開く。
「…せ…ん…せぇ…」

────時が動き出す。
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