異世界初の悪役令嬢に転生しました~悪役令嬢語しか話せないなんて!どなたか正確に翻訳してくださいまし~

めしめし

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第2章 幼少期

第15話 ヘンリー殿下と踊りましたわ

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アイゼンベルグ国王陛下が現れると、会場中に緊張感が走った。
陛下は私が初めてお会いした時と変わらず、王族特有(?)のキラキラオーラを振りまいている。
おそらく50歳を超えているだろうが、このオーラ量はさすがの一言。
8年前と変わらず顎髭が似合う、どこかちょい悪おやじの印象だ。

全ての者たちが会話を中断し、深々と頭を下げる。

「あーよいよい。儂のことはいいから皆もパーティを楽しんでくれ。」
陛下の言葉で、頭を上げる一同。
会場の中心に向かおうとする陛下に、我先にとたくさんの人だかりが出来た。

もちろん人だかりが出来たのは陛下だけではない。
長男のウイリアム王太子殿下やヘンリー王太子殿下にも多くの女性たちが集まった。

ウイリアム殿下は先日16歳の誕生日を迎え、今では国の政治にも関わっているとのこと。
8か国語を流ちょうに操れる殿下は、アイゼンベルグ王国立魔法学園に通いながら近隣諸国との外交活動まで行っているというのだ。
元外交官として働いていた父との親交も厚く、度々私の屋敷を訪れては父と隣国との政策について熱く語り合っている。
そのため私とも交流があり、会う度に私のことを妹のように可愛がってくれていた。

特に長男ヨゼフィスと同い年のせいか気が合うらしく、会う度に一緒に剣術の稽古をするほどの仲の良さだ。
美形の2人が並ぶと殺人的なオーラ―を放ち、その神々しさに気を失ってしまうメイドもいるらしい。

一方のヘンリー殿下。
5歳の時に出会って以来、月に1度は従者のノムさんとともにアイゼンベルグ家に遊びに来るようになった。
兄に負けず劣らずの美形で、知的な魅力のあるウイリアム殿下に対し、ヘンリー殿下は逞しく精悍な魅力を持っている。

剣術よりも格闘術の方が得意で、私の師匠にも師事している。
そのため、私と一緒に練習を行うこともしばしば。
彼の屈託ない笑顔と、意外なほど謙虚な姿勢は当家のメイドからの人気も高い。

ウイリアム殿下、ヘンリー殿下、長男ヨゼフィスの3人に我が屋敷でもファンクラブが発足しているらしい。
もちろん、私はヨゼフィスお兄様のファンクラブの会員だ。
次男のアルベルトはどうしたのかって?
実はコアなファンがいるようだが、ファンクラブ発足までには至っていないようだ。

そんなこんなでアイゼンベルグ陛下や殿下たちは、我が家の常連さんだ。
私も気兼ねなく悪役令嬢語を使用できる、数少ない人たちなのだ。

会場で私を発見したウイリアム殿下とヘンリー殿下は、群がる女たちをかき分け私のところに向かってきた。
女性たちの視線が一斉に私に集まったのだ。

「やあ、メリー嬢。今日は一段と、その、前衛的なドレスだね。」
ウイリアム殿下が言葉につまる。

「兄貴、メリーはいつもこんな感じだよ。むしろ今日の方がまともなぐらいだ。」
ヘンリー殿下は私に対して容赦が無い。
2つの鼻の穴に指を突っ込んでやろうかしら?

「これはこれは両殿下。アイゼンベルグ家のパーティにお越しいただき誠にありがとうございます。
私ごときにお声までかけていただき恐縮でございます。
ただ、よろしいのですの?
殿下たちの後ろで色とりどりの小鳥たちが、餌を求めて囀っておりますわよ?(あちらで女性たちがお待ちかねですわ。)」

女性たちと殿下の間にしばしの静寂が訪れる。

「プッ」
真っ先に噴き出したのはウイリアム殿下。

「こいつはこういう奴なんだよ。」
ヘンリー殿下も続く。

談笑する2人の後ろで、女性たちの嫉妬の炎が激しく燃え盛っていた。

「なんでメリー様は、殿下たちにああも馴れ馴れしいんですの?」
「おいたわしや、殿下たちはあの女にたぶらかされているのよ。」
「あなたもそう思いまして?わたくしもそう感じましたわ!」
「あの悪役令嬢をこれ以上つけあがらせないようにしませんと。」
「わたくしたち、協力しましょう。」
後にアイゼンベルグ王国を震わせる大令嬢連合の結成である。

軽快な音楽と共に楽隊が登場し、会場の雰囲気は一変した。
ここからはダンスパーティとなる。
アイゼンベルグ王国ではダンスが流行しており、社交界ではダンスは必須となっていた。
定番のワルツだけでなく、カドリール、ポルカ、タンゴなども行われているのだ。

通常一曲目はカドリールから始まる。
カドリールとは複数の男女ペアが、パートナーを替えながら音楽に合わせて踊る集団ダンスの一種だ。
スローテンポの優雅なダンスで、ステップも簡単で分かりやすい。
ダンス初心者から上級者も楽しめる、正に一曲目にふさわしいダンスなのだ。

父と母のペアと、陛下と陛下がエスコートした女性ペア、ウィリアム殿下と私がKOした侯爵令嬢のドリアーヌ嬢ノペアがホールの中央へと向かう。

軽快な音楽が始まると同時に、それぞれのペアが踊り始める。
ペアを入れ替えながら、目まぐるしく6人の動きが交差する。
ホールで踊る陛下たちの動きはとても洗練されていて、見る者をはぁーと魅了する。
ただ一人を除いて。

全員が優雅に踊る中、母は酸欠寸前。
ゼーハーと肩で息をしながら、鬼のような形相で皆の動きに必死でついていく。
皆にとっては夢のような3分間だが、母にとっては地獄の3分間だっただろう。
ダンスが終わると母は自室に戻り、再び戻ってくることはなかった。

「おいメリー、踊ろうぜ。」
ヘンリー殿下が私を誘った曲はタンゴ。
2人ペアで踊るダンスだが、ワルツのように上下動がなく切れ味の鋭い動きが特徴だ。
4拍子のリズムの中の1拍目と3拍目に強いアクセントがあり、緩急がはっきりしているダンスなのだ。

私はダンス全般が苦手だが、タンゴは嫌いではない。
この強弱のはっきりしているリズムは、格闘技にも通じるものがある。

一方で殿下の手を握り、もう一方で殿下の腕から肩に添える。
音楽が始まると私たちはホール中央に向かって一息に飛び出した。
スロー&クイック。
格闘技を学ぶ私たちにとって、タンゴはダンスというより演武。

静から動。動から静。
いつの間にかホールでは私たちしか踊っていない。
会場中の全ての人が私たちの演武に注目していたのだ。

ダンスに合わせ音楽はより強く、より情熱的に変化し始める。
もはや会話をしている者すらいない。
音楽が止まるまで私たちの動きを目で追いかけていた。

音楽が終わると同時に鳴り響く大歓声。
私たちが部屋を出るまで拍手が鳴り響いていた。
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