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第3章 思春期
第29話 嫉妬するのはやめてくださいまし
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「ははっ、前もこんなことがあったよな。」
バルコニーでヘンリー殿下が笑う。
ダンスで目立ってしまった私たちは、一旦階上を抜け周りが落ち着くのを待っていた。
「確かにそんなこともありましたわね。」
前回のパーティから2年、その際も私とヘンリー殿下はパーティで目立ってしまっていた。
しばらくの間、私と殿下はお互いの昔話に花を咲かせた。
「そろそろ戻らねぇか?」
ヘンリー殿下は提案した。
確かに今回のパーティの主催は王族だ。
王族である殿下がいつまでも会場にいないのは問題だ。
「よろしくてよ。それならば、私をエスコートしてくださらない?」
私は殿下の腕に手を添え、再び会場へと戻った。
会場に戻ると、友達のミレーヌが真っ先に私たちの元へ駆けてきた。
「貴方たち、どこに行ってらしたの?ずっとウイリアム殿下が探していましたわ。」
随分と私たちのことを探していたのだろう。綺麗にアップされたミレーヌの髪が少し乱れていた。
ミレーヌの後ろには、両腕を組んで仁王立ちをしているウイリアム殿下の姿が。
いつものような柔らかい表情ではないわ。
明らかに不服そうな顔で私たちを見ているのよ。
私の専属執事オットーが近寄ってきて私に耳打ちをする。
「ウイリアム殿下はミレーヌ様と踊られた後、ご婦人たちのダンスの誘いをずっと断っておられました。
メリー様が踊って差し上げるのが、得策だと存じます。」
殿下の不機嫌そうな顔は、どうやら私とヘンリー殿下に対する嫉妬が原因らしい。
ここはセオリーを無視して、私からウイリアム殿下に声をかける必要があるようね。
うーん、王族の男ってめんどくさい。
私はヘンリー殿下に一礼をし、ウイリアム殿下の方へ寄って行った。
私が近づくに連れ、殿下の表情が緩み始める。
「探したんだよ、メリー嬢。さっ約束通り僕と踊ってくれるかい。」
笑顔を見せるウイリアム殿下だが、どこかその笑顔が陰っている。
私には殿下の言葉には断ることが出来ないような、強い強制力を感じた。
「お待たせして申し訳ございませんでした。かしこまりました。
殿下のご無礼にならぬように、誠心誠意踊らせていただきますわ。」
私たちはホールの中央へと向かった。
ホール中央では、今も数組のペアがワルツを踊っている。
よりによってまたワルツ。殿下の足でも踏んでしまったら一大事ですわ。
ヘンリー殿下と違い、笑って済まなそうですし…。
あぁ、めんどくせぇ。
曲が終わると私たちは丁度ホールのど真ん中をキープした。
他のペアは遠慮してか中央部に来ることはなく、私たち2人だけがダンスの準備をしていた。
えっ、やめてよ。
誰か他の人も踊ってよ。私は注目されたくないのよ。
あっ、そこの貴方、私あなたのダンスが見たいわ。
私は他のペアに目で訴えかける。しかし、私が目が合うとそのペアは目を背けるのだ。
「心配することはない。僕がリードしてあげるよ。」
私の不安を感じ取ったのか、殿下が私に声をかける。
リードとかそんなんじゃなくて、私は目立ちたく無いだけなのよ。
「またあの悪役令嬢が踊るわよ。」
「キーッ、今度はウイリアム殿下と!私は断られたのに!」
「こけてしまえ、こけてしまえ、こけていしまえ・・・・」
女どもの嫉妬の声が聞こえる。
あなたたち、不敬罪で捕まってしまえばいい。
静かに音楽が始まる。
私たちは曲に合わせ、ホールを優雅に支配する。
同じワルツでもヘンリー殿下とはまるで違う。
ウイリアム殿下の完璧なリードで、私は殿下の足を踏むことなく最高のパフォーマンスを演じることが出来るのだ。
まるで私を完全に支配しているがごとく、私の足は殿下のステップによって動かされ、殿下の腰使いで私の上半身は綺麗に反り返る。
そこには私の意志は存在しない。
殿下のリードによって、私は自分自身の実力を超えた完璧なダンスを演じられるのだ。
ゲストたちの感嘆の声が漏れる。
私たちの隙の無いダンスは観客たちを魅了している。
しかし、これは私ではないわ。
殿下のリードに100%従っているだけなのよ。
もちろん私がゲストたちを魅了しているわけではない、私は殿下に踊らされているだけなの。
ダンス自体は完璧だわ。ただ、私の気持ちはどこかに置いていかれているような気がする。
曲が終わると同時に、大きな拍手が起こる。
しかし、私にはヘンリー殿下と踊った時のような高揚感は無い。
ウイリアム殿下と踊った。ただそれだけの感情なのだ。
ウイリアム殿下は満足したのか、意外とすんなり私を解放してくれた。
満面の笑みを浮かべながらホールのゲストへ一礼し、陛下のいる階上にも一礼をした。
ただその時私は気づいてしまった。
ウイリアム殿下のズボンのお尻が破けていることを。
私は彼にそのことを告げようとしたが、彼は私に一礼し、嬉々として陛下たちのいる階上へと上がっていったのだった。
ふぅー、なんか疲れた。
これでもう大丈夫よね。さぁミートローフの出番よ。
私はミレーヌが立っている方へ向かっていった。
ミレーヌはぶつぶつ言いながら黙々とオードブルを食べていた。
その姿は普段のおしとやかで上品なミレーヌと違い、鬼気迫る勢いがあった。
「ミレーユ・・・」
彼女に声をかけようと瞬間、あれほど山のように盛られていたミートローフが消えている。
ミレーユが食べているのは・・・ミートローフ。
えっ、この子あの量を一人で食べたの?
「この子才能があるわよ。」
ミレーユの隣でオードブルを食べ続けている母が、ぐっと親指を立てて合図する。
一体何の才能よ!
私に気づいたミレーユ、
油べっとりの口から嫉妬の言葉が飛び出す。
「お兄さ、ウイリアム殿下はメリー様のことが好きなのよ!」
そう言いながらも大皿に残ったミートローフを、次々に自分の皿へ盛り込んでいく。
あっ、最後の一切れ残っているわ。あれは私のものよ。
私が手を伸ばそうとすると、
「メリー様。今度は僕との約束を守ってください。」
思わず伸ばした手が止まる。
私の後ろから声をかけたのは、イケメン指揮者ジェラールだった。
その瞬間にミレーユは最後の一切れを自分の皿に盛ったのだ。
「今度は僕と踊ってくれますよね。」
私の気も知らず、ダンスに誘うジェラール。
あなた、ミートローフの恨みは恐いわよ。
バルコニーでヘンリー殿下が笑う。
ダンスで目立ってしまった私たちは、一旦階上を抜け周りが落ち着くのを待っていた。
「確かにそんなこともありましたわね。」
前回のパーティから2年、その際も私とヘンリー殿下はパーティで目立ってしまっていた。
しばらくの間、私と殿下はお互いの昔話に花を咲かせた。
「そろそろ戻らねぇか?」
ヘンリー殿下は提案した。
確かに今回のパーティの主催は王族だ。
王族である殿下がいつまでも会場にいないのは問題だ。
「よろしくてよ。それならば、私をエスコートしてくださらない?」
私は殿下の腕に手を添え、再び会場へと戻った。
会場に戻ると、友達のミレーヌが真っ先に私たちの元へ駆けてきた。
「貴方たち、どこに行ってらしたの?ずっとウイリアム殿下が探していましたわ。」
随分と私たちのことを探していたのだろう。綺麗にアップされたミレーヌの髪が少し乱れていた。
ミレーヌの後ろには、両腕を組んで仁王立ちをしているウイリアム殿下の姿が。
いつものような柔らかい表情ではないわ。
明らかに不服そうな顔で私たちを見ているのよ。
私の専属執事オットーが近寄ってきて私に耳打ちをする。
「ウイリアム殿下はミレーヌ様と踊られた後、ご婦人たちのダンスの誘いをずっと断っておられました。
メリー様が踊って差し上げるのが、得策だと存じます。」
殿下の不機嫌そうな顔は、どうやら私とヘンリー殿下に対する嫉妬が原因らしい。
ここはセオリーを無視して、私からウイリアム殿下に声をかける必要があるようね。
うーん、王族の男ってめんどくさい。
私はヘンリー殿下に一礼をし、ウイリアム殿下の方へ寄って行った。
私が近づくに連れ、殿下の表情が緩み始める。
「探したんだよ、メリー嬢。さっ約束通り僕と踊ってくれるかい。」
笑顔を見せるウイリアム殿下だが、どこかその笑顔が陰っている。
私には殿下の言葉には断ることが出来ないような、強い強制力を感じた。
「お待たせして申し訳ございませんでした。かしこまりました。
殿下のご無礼にならぬように、誠心誠意踊らせていただきますわ。」
私たちはホールの中央へと向かった。
ホール中央では、今も数組のペアがワルツを踊っている。
よりによってまたワルツ。殿下の足でも踏んでしまったら一大事ですわ。
ヘンリー殿下と違い、笑って済まなそうですし…。
あぁ、めんどくせぇ。
曲が終わると私たちは丁度ホールのど真ん中をキープした。
他のペアは遠慮してか中央部に来ることはなく、私たち2人だけがダンスの準備をしていた。
えっ、やめてよ。
誰か他の人も踊ってよ。私は注目されたくないのよ。
あっ、そこの貴方、私あなたのダンスが見たいわ。
私は他のペアに目で訴えかける。しかし、私が目が合うとそのペアは目を背けるのだ。
「心配することはない。僕がリードしてあげるよ。」
私の不安を感じ取ったのか、殿下が私に声をかける。
リードとかそんなんじゃなくて、私は目立ちたく無いだけなのよ。
「またあの悪役令嬢が踊るわよ。」
「キーッ、今度はウイリアム殿下と!私は断られたのに!」
「こけてしまえ、こけてしまえ、こけていしまえ・・・・」
女どもの嫉妬の声が聞こえる。
あなたたち、不敬罪で捕まってしまえばいい。
静かに音楽が始まる。
私たちは曲に合わせ、ホールを優雅に支配する。
同じワルツでもヘンリー殿下とはまるで違う。
ウイリアム殿下の完璧なリードで、私は殿下の足を踏むことなく最高のパフォーマンスを演じることが出来るのだ。
まるで私を完全に支配しているがごとく、私の足は殿下のステップによって動かされ、殿下の腰使いで私の上半身は綺麗に反り返る。
そこには私の意志は存在しない。
殿下のリードによって、私は自分自身の実力を超えた完璧なダンスを演じられるのだ。
ゲストたちの感嘆の声が漏れる。
私たちの隙の無いダンスは観客たちを魅了している。
しかし、これは私ではないわ。
殿下のリードに100%従っているだけなのよ。
もちろん私がゲストたちを魅了しているわけではない、私は殿下に踊らされているだけなの。
ダンス自体は完璧だわ。ただ、私の気持ちはどこかに置いていかれているような気がする。
曲が終わると同時に、大きな拍手が起こる。
しかし、私にはヘンリー殿下と踊った時のような高揚感は無い。
ウイリアム殿下と踊った。ただそれだけの感情なのだ。
ウイリアム殿下は満足したのか、意外とすんなり私を解放してくれた。
満面の笑みを浮かべながらホールのゲストへ一礼し、陛下のいる階上にも一礼をした。
ただその時私は気づいてしまった。
ウイリアム殿下のズボンのお尻が破けていることを。
私は彼にそのことを告げようとしたが、彼は私に一礼し、嬉々として陛下たちのいる階上へと上がっていったのだった。
ふぅー、なんか疲れた。
これでもう大丈夫よね。さぁミートローフの出番よ。
私はミレーヌが立っている方へ向かっていった。
ミレーヌはぶつぶつ言いながら黙々とオードブルを食べていた。
その姿は普段のおしとやかで上品なミレーヌと違い、鬼気迫る勢いがあった。
「ミレーユ・・・」
彼女に声をかけようと瞬間、あれほど山のように盛られていたミートローフが消えている。
ミレーユが食べているのは・・・ミートローフ。
えっ、この子あの量を一人で食べたの?
「この子才能があるわよ。」
ミレーユの隣でオードブルを食べ続けている母が、ぐっと親指を立てて合図する。
一体何の才能よ!
私に気づいたミレーユ、
油べっとりの口から嫉妬の言葉が飛び出す。
「お兄さ、ウイリアム殿下はメリー様のことが好きなのよ!」
そう言いながらも大皿に残ったミートローフを、次々に自分の皿へ盛り込んでいく。
あっ、最後の一切れ残っているわ。あれは私のものよ。
私が手を伸ばそうとすると、
「メリー様。今度は僕との約束を守ってください。」
思わず伸ばした手が止まる。
私の後ろから声をかけたのは、イケメン指揮者ジェラールだった。
その瞬間にミレーユは最後の一切れを自分の皿に盛ったのだ。
「今度は僕と踊ってくれますよね。」
私の気も知らず、ダンスに誘うジェラール。
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