異世界初の悪役令嬢に転生しました~悪役令嬢語しか話せないなんて!どなたか正確に翻訳してくださいまし~

めしめし

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第3章 思春期

第33話 聖女と初対決ですわ

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それから幾度となく、ヘンリー殿下とドロシー嬢が2人で一緒にいるところを目撃した。
特におかしいところはどこにもない。先輩と後輩が仲良く話しているだけだ。
ただ、それが私にとってはやけに癇に障る。
2人が話している姿を見るだけで、黒いモヤモヤした感情が私の中に起こるのだ。

これって嫉妬?
前世から私は嫉妬というものを感じたことが無かった。
私が恋をする相手はいつも2次元か、決して相手にあるはずもないアイドルばかりだったのだ。
その推しメンが別の女性と付き合っているという噂を聞いても、特に腹が立つことがなかった。
初めから自分には縁のない人だと思っていたので素直に相手を祝福し、別の推しメンを探していたのだ。

恋愛ゲームでも同じだ。
攻略対象が別の人にとられそうになると、すぐに見切りをつけて別の対象を攻略しようとする。
また、ゲームならばやり直しもきく。
そのため、相手に対してそれほどイライラすることはなかった。

しかし、今直面しているのは婚約者のヘンリー殿下(一応)とアプローチをかけ続けるドロシー嬢。
しかもドロシー嬢は、他の男性にも色目を使っており確実にファン層を増やしている。

婚約者がいる男性と2人っきりの時間を作るなんて、そもそもあり得ないのよ、
ヘンリーもヘンリーよ。私に小さいころからずっとモーションをかけてきてたのに。
あのヘンリーの伸びた鼻の下に、私の渾身の拳をめり込ませて差し上げたいですわ。

ヘンリー殿下は置いておいても、こいつだけには負けたくない。
私の中の黒い炎がメラメラと音を立てて燃え上っていた。

私の隣でミレーユも肩を震わせていた。

「ドロシー様は、先日のパーティでウィリアム殿下にも色目をつかっていましたわ。
少々オイタが過ぎるようですわね。」

ミレーユもその場で拳を振り回す。
こう見えてミレーユは、格闘技の成績は私に次いで2位なのだ。
普段はおしとやかで美人の公爵令嬢の裏の顔、きっと誰も想像できないだろう。

一度しっかり話をしなければならないと感じた私とミレーユは、ある日ドロシーを校舎の裏へ呼び出した。


・・・・・・・・・・・


平日の昼休みにドロシーを呼び出した私とミレーユ。
彼女に不特定多数の男性に、手を出すのを止めるように伝えるためだ。
校舎裏に呼び出すって、学園ドラマの定番ね。
本当に悪役令嬢っぽくなってきてない?大丈夫、私?

呼び出されたドロシーは私たちに深々とおじぎをする。
「これは高名なお二方。こんな薄暗い所にお招き頂き光栄でございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」

いきなり先制攻撃を仕掛けたのはドロシー嬢。あなた相変わらずやるわね。

「ドロシー様、貴方は数々の男性たちに愛想を振りまいているみたいですわね。
危険だから止めておいた方がよろしいですわ。
私は貴方の身を案じてるのよ。」

と、ミレーユ。前置きもなくいきなりやな。
しかし、ドロシーも全く負けてはいない。

「これはミレーユ様、私の身まで案じていただいて感謝の念に堪えません。
ただ、私は彼らに慈愛の念の大切さを説いておりますだけ。
愛想など振りまいていないですわ。」

慈愛の念?一体何のことだ?


「私は女神様の声を彼らにお伝えしているのです。
『人を責めることをやめて、自分の心を正すことが大事なのです』
このように女神様はその叡智を言葉にして、私に授けてくれます。
私は、彼らにそのお心をお伝えしているだけに過ぎないのです。」

なんか宗教の勧誘みたいになってきたわね。
ただ、あの女神がそんな高尚なことをいうわけがない!
暇つぶしに私を悪役令嬢に仕立てようっていう駄女神なんだから。

この女、やっぱりちょっときな臭いようね。
それにその言葉、どこかで聞いたことあるわよ。

ミレーユは負けじと反撃する。
「あなたには、女神様のお声が聞こえるの?
それは凄いわね。それじゃ学園じゃなくて教会で教えを説いた方がよろしいのじゃなくて?
もっと奥の人にお声を聞かせられるわよ。」

ミレーユの嫌味っぷりも相当なものだ。
ただ、ドロシーの方が一枚上手だった。

「あら、私協会からの推薦でこちらに入学させていただいたのです。
ご心配いただきありがとうございます。
それに、私が女神の教えをお伝えするのではなくて、彼らが私に聞きたがるんです。
ウイリアム殿下やヘンリー殿下も同じですわ。」

これにはさすがのミレーユも声が出ないようだ。
どうやらこの女、私たちのことをしっかりと調べてきているようね。

それじゃ今度は私の番ね。

「ドロシー様、あなたには女神様の声が聞こえますのね?」

「そうですわ。あの方は私に素晴らしい言葉を授けてくれますの。」

あの駄女神の言葉が素晴らしい?全く何かの冗談じゃないかしら。

「それは素晴らしいわね。
では、なぜ貴方だけに女神様の言葉が聞こえるのでしょうか?」

「えっ、そ、それは私が女神様に選ばれたからじゃないかしら。」
予想外の切り口にドロシーは動揺している。

「そう、ではなぜ貴方が選ばれたの?貴方は敬虔な信徒ではないですわよね?」

「そ、それは私に魔法の才があったからじゃないかしら?私は誰よりも魔法を上手く使えるわ。」
特に理由が思いつかなかったのね。自分の能力を持ち出しましたわ。

「女神様は魔法の才を持っている者だったら、誰でもよかったと言いたいのね?
なんて好戦的な女神様なんでしょうか。」

「うう、そ、そんなこと私に分かるわけないじゃない。め、女神様なのよ。偉いのよ。」

私はあの駄女神が偉いって思いたくない。
今もポテチを食べながら私のことを見てるんだわ。

勝負あったようね。所詮あなたも私の敵じゃないのよ。

「そうね、女神様は偉いのよね?ドロシー様、この無知な私に女神様のありがたいお言葉を授けてくださいませ。」

私がそう伝えると、おどおどしていたドロシーは急に胸を張って、

「いいわ、メリー様。貴方にふさわしい女神様の言葉を贈って差し上げるわ。
『間違いは、あなたがそれを正すのを拒むまで間違いとならない』よ。
貴方の今の置かれている状況にふさわしい女神様の言葉じゃないかしら。」

「J.F.ケネディ・・・」

私がボソッと言った言葉に、ビクッと反応したドロシー。
私には彼女が女神様の言葉と言ったものは、真っ赤な嘘だと分かった。
彼女が話した言葉は、アメリカの元大統領の言葉だった。
おそらく彼女も転生者だ。女神の言葉も実際には聞こえてないのだろう。

あの駄女神。きっと悪役令嬢には聖女が必要なんて思ってるんだわ。
この子も可哀そうな女神の犠牲者なのよ。
そう感じた瞬間、ドロシーに対する嫉妬の心はスーッと消えていった。

いたたまれなくなったドロシーは、私に背を向け校舎の方へ走り出した。

待ってドロシー。
その扉は開けちゃダメ。
だってそこは男子トイレよ!

男子生徒の悲鳴が校舎中に響き渡った。
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