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ライヴ=人生?②
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一階のレストランに二人で出掛けると、景子が食事を終えて出る処に出くわした。
「あ……お、おはようございます」
ほなみの挨拶を綺麗に無視して、景子は祐樹に魅惑的に笑いかけた。
「西くん、おはよう……昨日はあの後会えなくて残念だったわ……」
祐樹はニコッと笑う。
「ごめんね景子ちゃん。疲れて寝ちゃったんだ……また今度ね?」
景子もフフ、と笑うと祐樹のネクタイに手を掛けた。
ほなみはギョッとする。
「少し曲がってるわ……直してあげるね」
「ありがとう」
景子はネクタイを形良く整えると、満足そうに祐樹を見つめてから、ちらりとほなみを見た。
「……こういう事は奥さんが先ず気がつかなくちゃね?」
「……っ」
ほなみが絶句していると、エレベーターの扉が開いて賑やかな声がする。
亮介と三広が叩き合いながらやって来たのだ。
「んも――っ!お前が寝ぼけて乗っかってきて俺は押し潰されるかと思ったぞ――!アホ亮介――」
「寝相が悪くて下に落っこちてたお前が悪いんだろ!
しかも腹丸出しで!
子供かよっ」
「だからってフツーベッドから降りる時に回りや下に何かあるか確認するだろ――っ
いきなりドスッて俺を踏んだじゃないか――!」
「あ――ハイハイ悪うございました――!」
「おまっ……何も悪いと思ってないだろ――!」
二人は殴り合いながら、ギャアギャア騒いでいる。
景子はこめかみを押さえて溜め息を吐き、ツカツカと二人の元へ歩いて行くと亮介と三広の頭を順番にゲンコツで殴った。
祐樹とほなみが呆気に取られるが、それ以上に亮介達はポカンとして頭を押さえて景子を見た。
景子は腕を組みキッパリ言った。
「いい加減にしなさい!子供じゃあるまいし!
ホテルのロビーで騒ぐんじゃないの!それこそ社会の迷惑です!
あなた達は一般人じゃないんです!
クレッシェンドの評判を落とすような振る舞いは慎んで下さい」
「ひいっ……こ、怖いっ」
三広は亮介の後ろに隠れて縮こまる。
亮介は景子をじっと見た。
景子は表情を変えない。
「何かしら?神田さん?」
亮介は昨夜の景子と今の景子のイメージのギャップが腑に落ちなくて混乱していた。
泣いてすがってきたあの景子は何処に行った?
昨夜の出来事はひょっとしたら自分が見た夢なのだろうか?とさえ思う。
虫の恐怖から助けてやって、礼のひとつ位普通はあるだろうに何も無いと言うことは、やはりあれは夢だったのだろうか。
(そうだ……きっとあれは夢なんだ……
俺は疲れているのかも知れない。
昨夜、胃の辺りがしくしく痛んだし……)
「はい……すいません」
亮介が素直に謝ると、景子はふんと鼻を鳴らす。
「九時半にチェックアウトして会場に向かいます。遅れないで下さいね」
エレベーターに向かい歩き出すが、ふと立ち止まり振り返ると祐樹に流し目を送ってきた。
「西くん……後でね」
「後でね?」
祐樹は手を降ったが、ほなみに睨まれる。
「ほなみ……」
「知らないっ」
ほなみがズンズン店に入っていくのを祐樹が追いかける。
三広が亮介をつついた。
「亮介、俺らも行こう」
景子が去った方向をぼんやり見ていた亮介は我に返った。
「あ、あ――そうだな!腹一杯食ってこーぜ!」
「お前、胃が痛いんじゃないの?」
「ん?……これは胃じゃないのか……」
亮介は胸の辺りに触れる。
「バーカ。何で胃がそこにあるんだよっ!
そりゃ胸だろ」
「……胸か」
亮介はぼんやりと胸の辺りを撫でた。
そうか……
痛いのは胸だったのか……
「あ……お、おはようございます」
ほなみの挨拶を綺麗に無視して、景子は祐樹に魅惑的に笑いかけた。
「西くん、おはよう……昨日はあの後会えなくて残念だったわ……」
祐樹はニコッと笑う。
「ごめんね景子ちゃん。疲れて寝ちゃったんだ……また今度ね?」
景子もフフ、と笑うと祐樹のネクタイに手を掛けた。
ほなみはギョッとする。
「少し曲がってるわ……直してあげるね」
「ありがとう」
景子はネクタイを形良く整えると、満足そうに祐樹を見つめてから、ちらりとほなみを見た。
「……こういう事は奥さんが先ず気がつかなくちゃね?」
「……っ」
ほなみが絶句していると、エレベーターの扉が開いて賑やかな声がする。
亮介と三広が叩き合いながらやって来たのだ。
「んも――っ!お前が寝ぼけて乗っかってきて俺は押し潰されるかと思ったぞ――!アホ亮介――」
「寝相が悪くて下に落っこちてたお前が悪いんだろ!
しかも腹丸出しで!
子供かよっ」
「だからってフツーベッドから降りる時に回りや下に何かあるか確認するだろ――っ
いきなりドスッて俺を踏んだじゃないか――!」
「あ――ハイハイ悪うございました――!」
「おまっ……何も悪いと思ってないだろ――!」
二人は殴り合いながら、ギャアギャア騒いでいる。
景子はこめかみを押さえて溜め息を吐き、ツカツカと二人の元へ歩いて行くと亮介と三広の頭を順番にゲンコツで殴った。
祐樹とほなみが呆気に取られるが、それ以上に亮介達はポカンとして頭を押さえて景子を見た。
景子は腕を組みキッパリ言った。
「いい加減にしなさい!子供じゃあるまいし!
ホテルのロビーで騒ぐんじゃないの!それこそ社会の迷惑です!
あなた達は一般人じゃないんです!
クレッシェンドの評判を落とすような振る舞いは慎んで下さい」
「ひいっ……こ、怖いっ」
三広は亮介の後ろに隠れて縮こまる。
亮介は景子をじっと見た。
景子は表情を変えない。
「何かしら?神田さん?」
亮介は昨夜の景子と今の景子のイメージのギャップが腑に落ちなくて混乱していた。
泣いてすがってきたあの景子は何処に行った?
昨夜の出来事はひょっとしたら自分が見た夢なのだろうか?とさえ思う。
虫の恐怖から助けてやって、礼のひとつ位普通はあるだろうに何も無いと言うことは、やはりあれは夢だったのだろうか。
(そうだ……きっとあれは夢なんだ……
俺は疲れているのかも知れない。
昨夜、胃の辺りがしくしく痛んだし……)
「はい……すいません」
亮介が素直に謝ると、景子はふんと鼻を鳴らす。
「九時半にチェックアウトして会場に向かいます。遅れないで下さいね」
エレベーターに向かい歩き出すが、ふと立ち止まり振り返ると祐樹に流し目を送ってきた。
「西くん……後でね」
「後でね?」
祐樹は手を降ったが、ほなみに睨まれる。
「ほなみ……」
「知らないっ」
ほなみがズンズン店に入っていくのを祐樹が追いかける。
三広が亮介をつついた。
「亮介、俺らも行こう」
景子が去った方向をぼんやり見ていた亮介は我に返った。
「あ、あ――そうだな!腹一杯食ってこーぜ!」
「お前、胃が痛いんじゃないの?」
「ん?……これは胃じゃないのか……」
亮介は胸の辺りに触れる。
「バーカ。何で胃がそこにあるんだよっ!
そりゃ胸だろ」
「……胸か」
亮介はぼんやりと胸の辺りを撫でた。
そうか……
痛いのは胸だったのか……
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