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しおりを挟む紗希と一緒に行くと約束していたドラマの顔合わせはキャンセルした。尚樹がいると分かったからだ。
誰が元恋人の恋愛ドラマが見たいと思うのか。
もうすぐ20後半に差し掛かる男が一人布団に包まってウダウダと考える姿は周りからみたらさぞかし滑稽なのだろう。色々気になるけど、紗希からの連絡を待つことにした。スマホを手に取りパスワードを開くと、すぐ目に入るのは調べ途中だった尚樹と恋人役として出る相手の名前と顔。可愛いらしい顔をして、突然表情が変わると空気までも変わる全ての人間を魅了する演技を持ち、横顔は可愛いというよりも美しくて、儚い雰囲気が尚樹とマッチしていた。
勝てっこないのだ。凡人ごときが芸能人に勝てるわけがないのだ。涙が押し寄せてくる。
尚樹はきっとこの人の事好きになるんだろうな。
だったらなおさら俺はこのドラマを見たくない。
_____
一人の男が湧き上がる怒りを抑えるかのように人差し指で机をトントンとリズムよく叩く。
それは段々と早くなり、口調も荒くなっていく。
汗だくになりながら話しているのはマネージャーの佐々木。その目の前に座っている威圧的な空気を漂わせているのは尚樹だった。
「は?いないの、なんで」
「確認した所、藤森紗希のアシスタントとして来る予定でした。ですが名簿には彼の名前の上に二重線が.....」
「はぁ~じゃあもういいや、帰る。」
溜息をついて席を立ち帰ろうとする尚樹に佐々木は焦った顔をして止める。
「ダメですよ!?今日は顔合わせです。ほぼ主演みたいなもんなんですから居てくれないと困ります。」
「めんどくさ」
嫌々、楽屋で呼ばれるのを待つ。
やっとここまで来た。金もある、高級マンションも一軒家だってある。もう準備して満タンだ。
これで胸を張って、また告発できる。
そう思って来たのに。和弥がいないと意味がない。
会えなかったら、俺は死んでもいい。
ふと、昨日電話が来た航から言われた言葉を思い出す。
『お前、何か大切なことが欠けてんだよ。
知名度も金も、家も、全部二番手なんだよ。
一番大切なのは目で分かるモノじゃなくて気持ちだ。それをお前は捨ててモノに走ったんだ。簡単には復縁出来ないからな。お前が和弥に負わせた傷は深い。それだけは分かっとけ。』
航が放った言葉はあまりにも分からなすぎて、適当に返した。俺は和弥がこの世で1番好きだ。何があっても一生これからもずっとだ。その気持ちがあるのに
なぜモノなのか分からなかった。気持ちがあるんだったら次は完璧な彼氏の方がいいに決まってる。
きっと和弥は来る。
俺はその時をずっと楽しみにしてるし、待ってる。
顔が見られると思うと嬉しくてニヤける。
____
航は尚樹に言った言葉は響かないなんて最初から分かっていた。尚樹が今やっている事は尚樹だけの自己満だと本人は分かっていない。
突然、フラれたかと思えば芸能人になり、他の奴と演技でも恋愛をして、笑顔でテレビに出てる。
それが和弥にとってどんだけ辛くて苦しかったのかアイツは分かっていない。
和弥の気持ちを考えてないのは尚樹の悪い癖だ。
それを分からせる事ができるのは和弥だけなのだ。
あのクソデカワンコをどうにかできるのは。
航は上の空でカクテルを作っていた。
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