手の届かない元恋人

深夜

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紗希曰くドラマは無事に納得の解釈一致、目の保養、生きてて良かったと大絶賛していた。順調に進んでいたある日、紗希から電話が来た。俺の名を呼んだその声は鼻声で、枯れていて、一瞬で体調不良だと気付いた。もちろん泣きべそをかきながら。
それと同時に嫌な予感がした。

「風邪引いた。熱もある。だけど明後日ドラマの収録で行くことになってるの泣。私、キャストとかそうなんだけど雰囲気とか色々漫画と同じにしたくて、
場所とかこだわってるの。だから無理言って色んな場所で撮ってるの。漫画を一緒に描いて、背景も担当してる和弥なら色々分かる気がするんだよね。
だからお願い、収録に私の代わりとして行って欲しい。お願いします。」

予想は的中して。まさかの収録に行って欲しいという想像以上のお願いが来た。紗希が誰よりもこのドラマを成功させたいと思っていて、力を入れているのを知っているからこそ返事をするのに時間がいる。
元カレに会いたくない。
こんなどうでもいい私情を挟むのは何も知らない紗希にとっては失礼なことだ。固唾を呑んで、行かせて欲しいと言った。紗希は安心した様子と同時にダウンしたのかすぐに電話が切られた。
後に紗希の旦那さんから詳しい情報がメッセージで送られて来た。
明後日収録するシーンは攻めの想いを受け取った受けだったが家族に反対され、一人で逃げて行き、結局攻めと再会するという、並外れた奇跡とあり得ない展開。そこは俺がちょうど背景を担当していたので奇跡の再会する漫画とそれを自分で描いた奇跡が繋がり、鼻で笑う。一人で逃げた受けはきっとメンタルが崩れた状態だろうなと思い紗希に提案したのはキラキラして年中灯りがついているような場所ではなく、朝は明るく、夜は暗いというメリハリがついた自然がある田舎はどうだろうかと提案した。もちろん大絶賛してくれて、俺も案が通って心躍らせながら描いたし、鮮明に記憶に残っている。その事を紗希は知っていたのだろう。

「はぁ逃げたい、どうすりゃあいいんだよ。」

俺も全て投げ出して逃げてぇよ。
二度と会わないと決めていた相手と会うという事に驚きが隠せない。どんな顔をして会ったらいいのか。
俺はアイツが他のヤツと恋愛してるのなんか演技でもごめんだ。見たくないし、見られたくない、話したくない、俺だとバレたくない。
大きい溜息をつき、沈むようにソファに寝転ぶ。
目の前にある淹れたてのアイスコーヒーは水滴が垂れ、氷のカランと音と共に静かに鳴る。それを見つめながらただ無音の世界へと入る。

涼しいのか暑いのか分からない部屋で一人、パッと目を開けた。
不意に和弥は思い出し、苦い顔をしながら美容院を予約した。部屋が暑かったのか首には汗がかいていた。













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