11 / 44
地元住民への取材(1)
しおりを挟む
◽️定食屋店主の妻の話(推定60代)
あぁ、あそこね。知ってる知ってる! うちの娘が学生の頃は、『恋愛成就』なんてみんな行ってたわよ。もちろんこっそりだけどね。ああいうのは「一人で行かないといけない」とか「話しちゃいけない」とかいう暗黙の掟があったりするから。父親? 確かにそうね。あの人はそういう噂聞くとすぐに「ダメだ行くな!」って。ねえ? そういうこと言うから余計に娘は反発するのに。行方不明? さぁ、ここ最近じゃないの、そういうこと聞くようになったのは。少なくとも娘の頃はそんな噂なかったわよ。村の人たち? まぁ良くは思ってなかったかもしれないけど、だからといって無理やり追い返したりもしないわよ。それに、今時村の事情だなんだって言われてもねぇ。もう私たちの世代だと、普通によそから来た嫁のほうが多いでしょうから、そういうしがらみとか関係ないのよ。大学生? どうかしらねぇ、もう娘だっていい大人だし、こっちにもいないから、今の若い子たちの間で流行ってるかどうかはよくわからないわね。『ゴミ屋敷』? さぁ、それは知らないわ。近くにあるの? 私はその『恋愛成就のパワースポット』にも行ったことないんだけど、娘がそこに行ったときは綺麗だったらしいわよ。何もなくて逆に怖かったって言ってたくらい。昔はどんな建物だったか? うーん、それはわからないわね。『開かずの自動ドア』? あぁ、町外れのスーパーよね。私は行ったことないわ。だって遠いんだもの。あそこのスーパー、チラシも入れないから安いかどうかもわからないし、もしこっちより高かったらガソリン代分が余計に無駄になっちゃうでしょ? お客さんは村の人たちが大半なんじゃないのかしらねぇ。こっちまで来るほどの用事でもない、でも食料は買わないといけないって時には便利だと思うわよ。あら、もういいの? もうすぐお客さんたちもいらっしゃるから、忙しいときは少し手伝ってくれると嬉しいわ。
◽️定食屋常連マダムの話(推定50代から60代)
あら~このコーヒー美味しいわね! あなたが淹れたの? あら、お兄さんが? 何よ、イケメンじゃない、私の娘の婿にどう? あぁ長男か、そりゃダメだ! あっはっは! 『恋愛成就のパワースポット』? あぁあぁ、娘がよく言ってたところね。娘はそういうのにあまり関心ない子だったから──あらやだ、だから結婚できないのかしら?──、噂でしか知らないんだけど。どういう噂かって? そうねぇ、「一人で行けば片想いが叶う」とか「いい出会いがある」とか、そんなようなことだったと思うわ。昔よく恋が叶うおまじないとかあったじゃない? そういう類の一つじゃないのかしらねぇ。さあ、どういう建物だったかはわからないわね。昔の文献とか書いてないの? 建物の登記がない? へえ、そうなの。大学生? さあねぇ。この辺にも小さな大学があるから、そこの子たちならよく見かけるけど、違う? ふうん、よその大学生なの。まぁそもそも私があの村まで行くことなんてないからねぇ。ごめんなさい、わからないわね。『ゴミ屋敷』? あぁ、それなら知ってるわ! 村に行かないのになんでって? 私ねえ、清掃会社で働いてるの。市で管理してる施設のトイレ掃除とか外注のお仕事がほとんどなんだけど、別に一般の人でも掃除して欲しいところがあれば引き受けるし、大きいゴミとかも受け付けてるところでね。前にそういう依頼があったの、村にあるゴミ屋敷を片付けて欲しいって。どういう人? そうねぇ~……あ、そうそう! ヴェールをつけた背の高い女だったわ! ええ見たわよ。あれはどのくらい前だったかしらねぇ。えーっと、私がこっちに嫁に来て引っ越した後だから、そうね、30年くらい前かしら。その女の年齢? よくわからないわね、覚えてないっていうより、わからないの。若く見えたし、逆にあの当時の私よりずっと歳上って言われても別に驚かないわ。外国人? どうだったかしらねぇ……まぁ日本人でヴェールつける人なんて珍しいからそうかもしれないけど。あぁ、結局ね依頼は引き受けなかったのよ。社長が「絶対ダメだ、祟られる!」とか言ってね。何よ、祟りなんて大げさなって思ったわよ。でも、私はあの頃結婚したばかりで、仕事も初めてだったし、こっちのことはこれっぽっちもわからなかったから、とりあえず逆らわないでおいた。それからはうちにそういう依頼は来てないみたいね。私が知らないだけかもしれないけど。でもうちに断られたんだから、他のところ行くんじゃない? いろんな清掃会社に聞いてみたらいいわ。町外れのスーパー? あぁ『開かずの自動ドア』がどうとかってやつ? 私は行ったことないわ。でも、知り合いが知り合いから聞いたって話は知ってる。連絡? 取れるわよ。
◽️定食屋近辺の会社員の話(推定20代)
『恋愛成就』? 『心霊スポット』? さぁ、知らないっすね。どっちの名前だろうが、そこのことはわかんないっす。学生の頃は部活ばっかやってたし、俺彼女いたんで。合コン? そりゃ大学の時はよくやりましたけど、近くのちょっとだけお洒落な店に飲みに行くだけですよ。いくらなんでもこんな辺鄙なところ来ないでしょ。え、いるんすか? 大学生ね~、インターンに来る人も少ないし、俺は見かけたことないっすね。ところでお姉さん綺麗っすね、どうすか、仕事終わりに──え、あ、お兄さん? じょ、冗談じゃないっすか、嫌だなぁ、はは……まだ旦那さんって言われたほうがマシな気分だったっす……。え? いやぁ『ゴミ屋敷』も『開かずの自動ドア』も知らない──あぁいや、あそこのことかな? 俺、隣の市の高校通ってたんですけど──バスケ強かったんで……その情報いらない?──その日は土曜日で午前練習だったんだけど、めちゃくちゃ疲れてたのか電車ん中で寝ちゃって乗り過ごしたことがあって。それで降りたのがあのスーパーが近くにある無人駅だったんすよね。で、その日に限ってスマホも家に忘れちゃって家族に迎えに来てもらうにも連絡取れないし、そんな時間に上りの電車があるはずもないし。公衆電話はあったんすけど、現金で買い物なんてしないから小銭とかもほとんど持ってなくて。仕方なく営業してるスーパーで電話借りようと思って、行ったんすよね。でも全然自動ドアが開かなくて。その日、部活もうまくいかなかったからむしゃくしゃしてて「開かねえじゃん! くそ!」とか言って、ドア蹴ったら、ちょうど店長さんに見つかっちゃって。それが、怒られるっていうか憐れむ?ような目を向けられて。まだ怒鳴られるほうがスッキリしましたよ。電話は貸してもらえましたけど、帰りの車の中でも最悪な気分で。で、部活の時にそれ話したら、そういうところだって聞きました。俺は幽霊とか不思議な力とか全然信じないんですけど、そいつは「そういうことするから嫌われて入れなかったんじゃねえの?」って。誰に嫌われるって? さあね。その後はアホらしくて聞いてないんで。そもそも俺は、蹴ったから入れなかったんじゃなくて、自動ドアが開かなかったから蹴ったのに。それからは一回も行ってないっすね。用事もないし。
◽️定食屋近辺の会社員の話(推定30代)
え? 『恋愛成就』? さあ。あ、でも、『心霊スポット』って話なら最近聞いたけど。場所もあの辺だったような。何の建物かって? それは知らないけど、なんかネットで噂になってるらしいっすね。若い男女が夜な夜な乱痴気騒ぎしてるとか。いや、ネットって言っても、この辺の同年代がただ喋ってるだけのちょっとした掲示板みたいなやつ。誰か見た人がいるか? それは知らないなぁ。まあ確かに噂になるくらいだし、目撃者がいないとおかしいんだけど。まーでも、この辺のやつじゃないんじゃない? だって、あそこには近づくなって耳にタコができるくらい言われたし。うち、実家がそこそこでかいんで、あんまり悪さすると変に目立っちゃうから、特別うるさく言われたのかもしんないけど。『恋愛成就のパワースポット』? 女の子たちがよく言ってる? だとしても、まさか夜には行かないでしょ。街灯もなくて暗いんじゃないの、市内だって外れのほうはそうだから、あの辺になったら真っ暗でしょ。──確かに、誰が見たんだろうね? あの村に知り合い? いないいない。いたとしても俺らくらいの世代ならみんな村は出てるって。別に特別なことがあったわけじゃないけど。──だからじゃないの? 特別なことを特別と思ってないじいさんばあさんが多いからな、あそこは。特別っていうか、より正確に言うなら特殊かな。さっきも言ったけど、実家が町の旧家なんだよね。だからこの辺の伝承とか暗黙の掟とか、そういうの散々聞いたよ。もし、俺が学生の時にその場所が『恋愛成就』とか言われてても、みんなこっそり行ってたんじゃないの? あそこは本来、よそ者が近づいていい場所じゃないから。俺の実家が厳しい──身内にだけじゃなく他人にもね──って知ってれば、俺にはあえて言わないでしょ。俺は別にどうでも良かったけど、父とか祖父とかに知られたら烈火の如く怒り出すから。なんかの拍子に伝わらないように、俺のいないところで話してたんじゃないかな。あぁ、『開かずの自動ドア』ね。知ってるよ。母親がよく買い物行ってた。え? や、母親は普通に入ってたよ。自動ドアもすんなり開いたし。……あ、でも、小学生の頃一回だけ連れられて行ったことがあるんだけど、「静かにしてなさい」って何回も言われたっけな。俺、同級生と比べてもおとなしいほうだったし──躾が厳しかったともいうけど──、しつこいなぁって心ん中では思ってたよ。まぁ小さい頃のそんな話、どこにでもありそうだよな。や、そういえばその後、俺がひどい風邪ひいちゃってさ。母親が半狂乱になってたからよく覚えてんのかも。あんまり風邪とかひかない子供だったから、焦ったんじゃない? 『ゴミ屋敷』? どこのこと? ふーん、あそこねぇ。場所はわかるんだけど。ずっとってわけじゃないんじゃない? 少なくとも俺が聞いた村の掟みたいなのにはなかったよ。確かあそこ誰かの家だったんだけど──誰だったかなぁ。母親がよく近所のおばさんと話題にしてたのは覚えてんだよね……。ちょっと今すぐは思い出せないわ。悪いね。今度実家に帰った時でも良ければ、親に聞いておくよ。連絡先ね、はいはい。それ、俺のSNS、フォローよろし──え、お兄さん? あぁ、いや、今のはなかったことに。これ、フリーのメールアドレス。2・3日に一回は確認するから。急ぎじゃなかったらこっちによろしく。お姉さんには? あぁこの番号にね。了解。ん? あぁ今は結婚して家出たよ。俺、次男だから。
あぁ、あそこね。知ってる知ってる! うちの娘が学生の頃は、『恋愛成就』なんてみんな行ってたわよ。もちろんこっそりだけどね。ああいうのは「一人で行かないといけない」とか「話しちゃいけない」とかいう暗黙の掟があったりするから。父親? 確かにそうね。あの人はそういう噂聞くとすぐに「ダメだ行くな!」って。ねえ? そういうこと言うから余計に娘は反発するのに。行方不明? さぁ、ここ最近じゃないの、そういうこと聞くようになったのは。少なくとも娘の頃はそんな噂なかったわよ。村の人たち? まぁ良くは思ってなかったかもしれないけど、だからといって無理やり追い返したりもしないわよ。それに、今時村の事情だなんだって言われてもねぇ。もう私たちの世代だと、普通によそから来た嫁のほうが多いでしょうから、そういうしがらみとか関係ないのよ。大学生? どうかしらねぇ、もう娘だっていい大人だし、こっちにもいないから、今の若い子たちの間で流行ってるかどうかはよくわからないわね。『ゴミ屋敷』? さぁ、それは知らないわ。近くにあるの? 私はその『恋愛成就のパワースポット』にも行ったことないんだけど、娘がそこに行ったときは綺麗だったらしいわよ。何もなくて逆に怖かったって言ってたくらい。昔はどんな建物だったか? うーん、それはわからないわね。『開かずの自動ドア』? あぁ、町外れのスーパーよね。私は行ったことないわ。だって遠いんだもの。あそこのスーパー、チラシも入れないから安いかどうかもわからないし、もしこっちより高かったらガソリン代分が余計に無駄になっちゃうでしょ? お客さんは村の人たちが大半なんじゃないのかしらねぇ。こっちまで来るほどの用事でもない、でも食料は買わないといけないって時には便利だと思うわよ。あら、もういいの? もうすぐお客さんたちもいらっしゃるから、忙しいときは少し手伝ってくれると嬉しいわ。
◽️定食屋常連マダムの話(推定50代から60代)
あら~このコーヒー美味しいわね! あなたが淹れたの? あら、お兄さんが? 何よ、イケメンじゃない、私の娘の婿にどう? あぁ長男か、そりゃダメだ! あっはっは! 『恋愛成就のパワースポット』? あぁあぁ、娘がよく言ってたところね。娘はそういうのにあまり関心ない子だったから──あらやだ、だから結婚できないのかしら?──、噂でしか知らないんだけど。どういう噂かって? そうねぇ、「一人で行けば片想いが叶う」とか「いい出会いがある」とか、そんなようなことだったと思うわ。昔よく恋が叶うおまじないとかあったじゃない? そういう類の一つじゃないのかしらねぇ。さあ、どういう建物だったかはわからないわね。昔の文献とか書いてないの? 建物の登記がない? へえ、そうなの。大学生? さあねぇ。この辺にも小さな大学があるから、そこの子たちならよく見かけるけど、違う? ふうん、よその大学生なの。まぁそもそも私があの村まで行くことなんてないからねぇ。ごめんなさい、わからないわね。『ゴミ屋敷』? あぁ、それなら知ってるわ! 村に行かないのになんでって? 私ねえ、清掃会社で働いてるの。市で管理してる施設のトイレ掃除とか外注のお仕事がほとんどなんだけど、別に一般の人でも掃除して欲しいところがあれば引き受けるし、大きいゴミとかも受け付けてるところでね。前にそういう依頼があったの、村にあるゴミ屋敷を片付けて欲しいって。どういう人? そうねぇ~……あ、そうそう! ヴェールをつけた背の高い女だったわ! ええ見たわよ。あれはどのくらい前だったかしらねぇ。えーっと、私がこっちに嫁に来て引っ越した後だから、そうね、30年くらい前かしら。その女の年齢? よくわからないわね、覚えてないっていうより、わからないの。若く見えたし、逆にあの当時の私よりずっと歳上って言われても別に驚かないわ。外国人? どうだったかしらねぇ……まぁ日本人でヴェールつける人なんて珍しいからそうかもしれないけど。あぁ、結局ね依頼は引き受けなかったのよ。社長が「絶対ダメだ、祟られる!」とか言ってね。何よ、祟りなんて大げさなって思ったわよ。でも、私はあの頃結婚したばかりで、仕事も初めてだったし、こっちのことはこれっぽっちもわからなかったから、とりあえず逆らわないでおいた。それからはうちにそういう依頼は来てないみたいね。私が知らないだけかもしれないけど。でもうちに断られたんだから、他のところ行くんじゃない? いろんな清掃会社に聞いてみたらいいわ。町外れのスーパー? あぁ『開かずの自動ドア』がどうとかってやつ? 私は行ったことないわ。でも、知り合いが知り合いから聞いたって話は知ってる。連絡? 取れるわよ。
◽️定食屋近辺の会社員の話(推定20代)
『恋愛成就』? 『心霊スポット』? さぁ、知らないっすね。どっちの名前だろうが、そこのことはわかんないっす。学生の頃は部活ばっかやってたし、俺彼女いたんで。合コン? そりゃ大学の時はよくやりましたけど、近くのちょっとだけお洒落な店に飲みに行くだけですよ。いくらなんでもこんな辺鄙なところ来ないでしょ。え、いるんすか? 大学生ね~、インターンに来る人も少ないし、俺は見かけたことないっすね。ところでお姉さん綺麗っすね、どうすか、仕事終わりに──え、あ、お兄さん? じょ、冗談じゃないっすか、嫌だなぁ、はは……まだ旦那さんって言われたほうがマシな気分だったっす……。え? いやぁ『ゴミ屋敷』も『開かずの自動ドア』も知らない──あぁいや、あそこのことかな? 俺、隣の市の高校通ってたんですけど──バスケ強かったんで……その情報いらない?──その日は土曜日で午前練習だったんだけど、めちゃくちゃ疲れてたのか電車ん中で寝ちゃって乗り過ごしたことがあって。それで降りたのがあのスーパーが近くにある無人駅だったんすよね。で、その日に限ってスマホも家に忘れちゃって家族に迎えに来てもらうにも連絡取れないし、そんな時間に上りの電車があるはずもないし。公衆電話はあったんすけど、現金で買い物なんてしないから小銭とかもほとんど持ってなくて。仕方なく営業してるスーパーで電話借りようと思って、行ったんすよね。でも全然自動ドアが開かなくて。その日、部活もうまくいかなかったからむしゃくしゃしてて「開かねえじゃん! くそ!」とか言って、ドア蹴ったら、ちょうど店長さんに見つかっちゃって。それが、怒られるっていうか憐れむ?ような目を向けられて。まだ怒鳴られるほうがスッキリしましたよ。電話は貸してもらえましたけど、帰りの車の中でも最悪な気分で。で、部活の時にそれ話したら、そういうところだって聞きました。俺は幽霊とか不思議な力とか全然信じないんですけど、そいつは「そういうことするから嫌われて入れなかったんじゃねえの?」って。誰に嫌われるって? さあね。その後はアホらしくて聞いてないんで。そもそも俺は、蹴ったから入れなかったんじゃなくて、自動ドアが開かなかったから蹴ったのに。それからは一回も行ってないっすね。用事もないし。
◽️定食屋近辺の会社員の話(推定30代)
え? 『恋愛成就』? さあ。あ、でも、『心霊スポット』って話なら最近聞いたけど。場所もあの辺だったような。何の建物かって? それは知らないけど、なんかネットで噂になってるらしいっすね。若い男女が夜な夜な乱痴気騒ぎしてるとか。いや、ネットって言っても、この辺の同年代がただ喋ってるだけのちょっとした掲示板みたいなやつ。誰か見た人がいるか? それは知らないなぁ。まあ確かに噂になるくらいだし、目撃者がいないとおかしいんだけど。まーでも、この辺のやつじゃないんじゃない? だって、あそこには近づくなって耳にタコができるくらい言われたし。うち、実家がそこそこでかいんで、あんまり悪さすると変に目立っちゃうから、特別うるさく言われたのかもしんないけど。『恋愛成就のパワースポット』? 女の子たちがよく言ってる? だとしても、まさか夜には行かないでしょ。街灯もなくて暗いんじゃないの、市内だって外れのほうはそうだから、あの辺になったら真っ暗でしょ。──確かに、誰が見たんだろうね? あの村に知り合い? いないいない。いたとしても俺らくらいの世代ならみんな村は出てるって。別に特別なことがあったわけじゃないけど。──だからじゃないの? 特別なことを特別と思ってないじいさんばあさんが多いからな、あそこは。特別っていうか、より正確に言うなら特殊かな。さっきも言ったけど、実家が町の旧家なんだよね。だからこの辺の伝承とか暗黙の掟とか、そういうの散々聞いたよ。もし、俺が学生の時にその場所が『恋愛成就』とか言われてても、みんなこっそり行ってたんじゃないの? あそこは本来、よそ者が近づいていい場所じゃないから。俺の実家が厳しい──身内にだけじゃなく他人にもね──って知ってれば、俺にはあえて言わないでしょ。俺は別にどうでも良かったけど、父とか祖父とかに知られたら烈火の如く怒り出すから。なんかの拍子に伝わらないように、俺のいないところで話してたんじゃないかな。あぁ、『開かずの自動ドア』ね。知ってるよ。母親がよく買い物行ってた。え? や、母親は普通に入ってたよ。自動ドアもすんなり開いたし。……あ、でも、小学生の頃一回だけ連れられて行ったことがあるんだけど、「静かにしてなさい」って何回も言われたっけな。俺、同級生と比べてもおとなしいほうだったし──躾が厳しかったともいうけど──、しつこいなぁって心ん中では思ってたよ。まぁ小さい頃のそんな話、どこにでもありそうだよな。や、そういえばその後、俺がひどい風邪ひいちゃってさ。母親が半狂乱になってたからよく覚えてんのかも。あんまり風邪とかひかない子供だったから、焦ったんじゃない? 『ゴミ屋敷』? どこのこと? ふーん、あそこねぇ。場所はわかるんだけど。ずっとってわけじゃないんじゃない? 少なくとも俺が聞いた村の掟みたいなのにはなかったよ。確かあそこ誰かの家だったんだけど──誰だったかなぁ。母親がよく近所のおばさんと話題にしてたのは覚えてんだよね……。ちょっと今すぐは思い出せないわ。悪いね。今度実家に帰った時でも良ければ、親に聞いておくよ。連絡先ね、はいはい。それ、俺のSNS、フォローよろし──え、お兄さん? あぁ、いや、今のはなかったことに。これ、フリーのメールアドレス。2・3日に一回は確認するから。急ぎじゃなかったらこっちによろしく。お姉さんには? あぁこの番号にね。了解。ん? あぁ今は結婚して家出たよ。俺、次男だから。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/20:『ものおと』の章を追加。2026/1/27の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/19:『みずのおと』の章を追加。2026/1/26の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/18:『あまなつ』の章を追加。2026/1/25の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/17:『えれべーたー』の章を追加。2026/1/24の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
怪異の忘れ物
木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。
さて、Webコンテンツより出版申請いただいた
「怪異の忘れ物」につきまして、
審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。
ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。
さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、
出版化は難しいという結論に至りました。
私どもはこのような結論となりましたが、
当然、出版社により見解は異なります。
是非、他の出版社などに挑戦され、
「怪異の忘れ物」の出版化を
実現されることをお祈りしております。
以上ご連絡申し上げます。
アルファポリス編集部
というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。
www.youtube.com/@sinzikimata
私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。
いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる