転生悪役令嬢は悪魔王子をスルーしてカフェオーナーになりたい

和気 藹

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領都フルネンディク

9 知らないフラグ襲来

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 私が迂闊につぶやいた一言に、ローと呼ばれた少年から睨まれ、威圧感に似た警戒されている気配が感じられました。

 その様子に私の中の何かが反応しました。嫌な予感というか、ニ〇ータイプの煌めきのような。これ絶対何かのフラグだ、ゲームにはこんなエピソードなかったから、また別のフラグだ。よし全力回避決定。デンカ、電化、伝家……ごまかす言葉が見つからないっ!

「デン・カーはないのか?」
「デン・カー?」
「甘い味がする植物の根だよ」
「聞いたことないな」
「確か、別の地方ではリ……コリスとか呼ばれていたかも」
「……リコリスならあるぞ」
「それ! 欲しい! あと、バニラとペルシ(パセリ)、タイム、エストラゴン、ローズマリーにペペローニ(唐辛子)!」
 わざと前世のハープ・スパイス名を並べた私を見てあきれたように笑う少年。アルカイック・スマイルは殿下のみのようです。
「バニラ以外、聞いた事ないぞ」
「……あー、どんなのがあるか見せてもらえるかな?」
「……お好きにどうぞ」
 薬草を見るふりして背を向けて一息つく。胡散臭げな視線は痛いけれどうまくごまかせたようです……あぁ苦しかった……ダジャレは苦手だし恥ずかしい。

 しかし、このローと呼ばれた少年、庶民なので短く切って瞳を隠すように前髪だけ伸ばしたプラチナ・ブロンドといい、前髪から時折のぞく虹彩に白く筋が入るエメラルドの瞳といい、まとう雰囲気が悪魔殿下そのものです。まぁ殿下はノート兄様と同い年で、この少年はシモンと同い年っぽいので、他人の空似の可能性は高いですが、お爺様が元王宮魔術師というバックグラウンド。どう見ても王家の秘密にかかわるフラグですよ、余計なフラグには近づかない。解らない振りしましょう。

 あっ唐辛子見っけ。大蒜は見つけたし、オリーブオイルは元々あるので、ペペロンチーノが作れますね。黒胡椒もナツメグもある。本当に品揃えが良いです。ローズマリーは乾燥している方が管理が楽なので良しとして、パセリにタイム、エストラゴンも乾燥か。生じゃないとブーケガルニが作れないなぁ。大きさがそろっているし結構綺麗に乾燥してあるけど栽培してるのかな? 農家紹介してもらえないかな?

 振り返ると男三人で穏やかに談笑中でした。
 なんですかー! 仲間外れですか? 寂しいじゃありませんか! 今は男装中だけど、こういう時って気後れしちゃうんですよね……あーあ、どうせ転生するなら男に生まれたかったなぁ……。そしたらこんな苦労しなくて済むのに。

 ……ネガティブ思考は何も生まない。冷静に状況を判断して対策を練るだけ。さっきの緊張した空気は霧散したので良しとしましょう。

 私が居心地悪そうにしているのに気付いたノート兄様が、手招きしてくれました。
「妹のマリアンネだよ」
「えっ、ノート兄様?」
「計画の事を話して協力してもらうことにしたんだ」
「いきなりですね、ノート兄様?」
 言外に何で勝手に決めてんの? を含め訝しげにノート兄様を見ると、私の抗議に気付いたのかノート兄様は焦りながらも話を続けます。
「シモンの友達のローデヴェイクだよ。元王宮魔術師のデュルフェル師の孫で錬金術師だよ」
「錬金術師?!」
 確か錬金術師として名乗るにはスキル持ちでも十年以上の修行が必要なはず。ノート兄様と同じ天才系ですか?!
「うん、だから協力をお願いすることにしたんだ」
 そういうことなら、私もお願いするのが道理でしょう。ローデヴェイクに向かって略式のカーテシーをします。
「錬金術師のローデヴェイク師、私は停滞したこのフェルセンダールを豊かにしたいのです。協力してもらえますか?」
「ローとお呼びください、マリアンネ様。私もこの何年か停滞し始めたこの街に危機感を感じていました。ぜひ協力をさせてください」
「ありがとう、ロー。では後で計画の骨子をまとめた資料をシモンに届けさせるわね」
 にっこり笑うと、ローがあからさまに視線を逸らしました。あれ? 怖かった? まぁ色々扱き使わせていただきますけどね。ふふふふ。

「じゃあ、このメモに書いたモノを全て新ロットで欲しいの。食品として使用するので後入れ先出しでそちらの言い値で買うわ。質は信用するので最小ロットはどのくらいで何日前のもの?」
「モノにもよりますが、最小ロットは麻袋で最新のモノはおとといです」
「麻袋? そんな曖昧なもので商売しているの? 量り売りはしないの?」
「要望があれば、ケイ単位で販売してます」
「分銅の更新は?」
「昨年に」
「最新ね。じゃあ十ケイずつお願い。いつ全部そろいます? 前金で必要なら、シモンに持たせるので金額を教えて? それから無限収納インベントリは持っているの?」
「全部そろうのは三日後で、前金はいりません。無限収納インベントリは小さいものなら」
「じゃあ、ノート兄様に大容量のモノを作ってもらいましょう。ノート兄様、お願いします」
「いいよ。ロー、特別製だから他の人には内緒ね」
「はい」
「じゃあ三日後、また来るわね」
「はい、お待ちいたしております」

 最後に見たローの表情からは、軽視の色は見られませんでした。ふふふ、勝ったぜ。
 次は市場に参りましょう♪

 あ、フラグスルー……出来てたよね?


◇◆◇◆◇◆


 よく聞くけどよくわからないビジネス用語

 ロット;同じ条件のもとに生産(製造)する製品の“生産(製造)数量、出荷数量の最小単位”の事。単価が小さい物や箱で販売するモノの販売数や単価を決める時も最小ロットでの計算を使用する。

 後入れ先出し;後に買った物を先に売る事。時間が経つことによって陳腐化(価値が下がる)しやすいモノ(食品・流行品・使用期限があるモノ)を先に販売する。モノによっては在庫が古いものばかりになり破棄せざるを得なくなるのでリスクが高いが、その分、割引をしなくて良くなるので売価が崩れにくくなる。反対に先入れ先出しは、先に買った物を先に売る事。常に在庫が最新のモノになるので陳腐化や返品・破棄リスクが少ない。

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