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領都フルネンディク
16 金蘭の契り
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ではでは、二人に食レポをお願いしましょう。
まず、ノート兄様の契約ドラゴンのトゥーナさんからどうぞ!
「見た感じは普通の焼き菓子ね。キメが細かいから柔らかいのかと思いきや表面はサクサクで中がしっとりしてる。ナッツの香りも良い。時々入っているナッツの食感がアクセントになっておいしいわ」
おおっ上手です! では次の黒ドラゴンさん!
「これはピーカンナッツか? これが粉になって生地にも入っていて噛むと香りが広がるな。皮つきだから微妙な苦さもいい。でもそんなにくどくないから他の粉が混ざっているのか? 甘さもナッツとケンカしない程度に甘めに合わせいるから、これだけでも旨いけれど飲み物に合わせればもっと旨くなりそうだな」
材料を当てるとは! それから誰も指摘しなかったピーカンナッツの皮のアクセントに気づくとは! 味覚が鋭い証拠ですね。しかも他に合わせるものを提案するとは! この黒ドラゴンさん官能評価パネリスト上位合格ですね。これはぜひ契約しなければなりません!
「二人とも合格です! 違う観点からの食レポ上手でした! しかも黒ドラゴンさんは正確にメイン食材を当てる快挙を成し遂げました! 味覚が鋭い証拠ですね! ぜひ契約してほしいです!」思わずドラゴンさんの片手を両手で握ってぶんぶん上下に振り回してしまいました。
「やったぜ!」黒ドラゴンさんも嬉しそうです。
ノート兄様が無言で氷筍を解除してくれましたが、なぜか無表情です。怒っていらっしゃる? 思わず駆け寄ってローブの端を掴みノート兄様の顔を下から見上げます。
「ノート兄様? どうかなさいましたか?」
私の言葉にはっと我に返ったノート兄様が優しく笑いかけます。
「何でもないよ、ちょっと考え事をしていただけ。じゃあ契約しちゃおうか? 契約魔法の方法は覚えてるよね?」
「はい、さっき教えてもらったばかりですから、だいじょうぶです」
「補助は任せてね?」
「はい、よろしくお願いします」
黒ドラゴンさんと向かい合って立ち、左手の拳を自分の鳩尾に当て右手を黒ドラゴンさんとつなぎます。目を閉じて先程と同じ要領で自分の魔力を鳩尾に集中させると、目を閉じても判るくらい地面がシルバーグリーンに光り魔法陣が開かれました。先程ノート兄様から教わった呪文を詠唱します。
「創造の女神の名において
マリアンネ・フェルセンダールは彼のドラゴンに名を与え金蘭の契りを誓う。
ドラゴン 汝の名は[ファフニール]」
黒ドラゴンさん改め[ファフニール]も呪文を詠唱します。
『創造の女神の名において我はマリアンネ・フェルセンダールを受け入れ[ファフニール]として金蘭の契りを誓う』
ファフニールが誓い終わると魔方陣の光が集まり二つの緑色に光る石に変わり私とファフニールの額に収まりました。
いつの間にか止めていた息を吐くと初めて行った契約魔法が成功したことに安堵の溜息が零れます。
そしてそのままノート兄様に勢いよく抱き着きます。
「ノート兄様! ありがとうございます! おかげで無事、契約できました!」
「良かったね、アンネ」
そうしてノート兄様に抱き着いたまま、私は気を失ったのでした。
「へぇ、到着した翌日に彼の人を手懐けただけでなく、ドラゴンと契約したのかぁ」
薄暗い部屋のソファに寄りかかり右手で頬杖をつき背後に居る人影には一瞥もせずにリラックスした表情からアルカイックスマイルを浮かべクスクスと笑う少年。
「はい」
「遠いところからご苦労様。また報告を待っているね」
「仰せのままに」
人影が消えてもまだ少年はクスクスと笑い続ける。
「僕の婚約者殿は本当に楽しませてくれるね。さて、いつ逃げ出した小鳥を捕まえようかな。その前にこちらから何度か打って出るのも楽しそうだね。突然僕が現れたら彼女はどんな顔をするのかな。楽しみだなぁ」
少年のアルカイックスマイルがいつしか悪戯を仕掛ける純真な子供の笑顔になっている事に自ら気付く事はなかった。
まず、ノート兄様の契約ドラゴンのトゥーナさんからどうぞ!
「見た感じは普通の焼き菓子ね。キメが細かいから柔らかいのかと思いきや表面はサクサクで中がしっとりしてる。ナッツの香りも良い。時々入っているナッツの食感がアクセントになっておいしいわ」
おおっ上手です! では次の黒ドラゴンさん!
「これはピーカンナッツか? これが粉になって生地にも入っていて噛むと香りが広がるな。皮つきだから微妙な苦さもいい。でもそんなにくどくないから他の粉が混ざっているのか? 甘さもナッツとケンカしない程度に甘めに合わせいるから、これだけでも旨いけれど飲み物に合わせればもっと旨くなりそうだな」
材料を当てるとは! それから誰も指摘しなかったピーカンナッツの皮のアクセントに気づくとは! 味覚が鋭い証拠ですね。しかも他に合わせるものを提案するとは! この黒ドラゴンさん官能評価パネリスト上位合格ですね。これはぜひ契約しなければなりません!
「二人とも合格です! 違う観点からの食レポ上手でした! しかも黒ドラゴンさんは正確にメイン食材を当てる快挙を成し遂げました! 味覚が鋭い証拠ですね! ぜひ契約してほしいです!」思わずドラゴンさんの片手を両手で握ってぶんぶん上下に振り回してしまいました。
「やったぜ!」黒ドラゴンさんも嬉しそうです。
ノート兄様が無言で氷筍を解除してくれましたが、なぜか無表情です。怒っていらっしゃる? 思わず駆け寄ってローブの端を掴みノート兄様の顔を下から見上げます。
「ノート兄様? どうかなさいましたか?」
私の言葉にはっと我に返ったノート兄様が優しく笑いかけます。
「何でもないよ、ちょっと考え事をしていただけ。じゃあ契約しちゃおうか? 契約魔法の方法は覚えてるよね?」
「はい、さっき教えてもらったばかりですから、だいじょうぶです」
「補助は任せてね?」
「はい、よろしくお願いします」
黒ドラゴンさんと向かい合って立ち、左手の拳を自分の鳩尾に当て右手を黒ドラゴンさんとつなぎます。目を閉じて先程と同じ要領で自分の魔力を鳩尾に集中させると、目を閉じても判るくらい地面がシルバーグリーンに光り魔法陣が開かれました。先程ノート兄様から教わった呪文を詠唱します。
「創造の女神の名において
マリアンネ・フェルセンダールは彼のドラゴンに名を与え金蘭の契りを誓う。
ドラゴン 汝の名は[ファフニール]」
黒ドラゴンさん改め[ファフニール]も呪文を詠唱します。
『創造の女神の名において我はマリアンネ・フェルセンダールを受け入れ[ファフニール]として金蘭の契りを誓う』
ファフニールが誓い終わると魔方陣の光が集まり二つの緑色に光る石に変わり私とファフニールの額に収まりました。
いつの間にか止めていた息を吐くと初めて行った契約魔法が成功したことに安堵の溜息が零れます。
そしてそのままノート兄様に勢いよく抱き着きます。
「ノート兄様! ありがとうございます! おかげで無事、契約できました!」
「良かったね、アンネ」
そうしてノート兄様に抱き着いたまま、私は気を失ったのでした。
「へぇ、到着した翌日に彼の人を手懐けただけでなく、ドラゴンと契約したのかぁ」
薄暗い部屋のソファに寄りかかり右手で頬杖をつき背後に居る人影には一瞥もせずにリラックスした表情からアルカイックスマイルを浮かべクスクスと笑う少年。
「はい」
「遠いところからご苦労様。また報告を待っているね」
「仰せのままに」
人影が消えてもまだ少年はクスクスと笑い続ける。
「僕の婚約者殿は本当に楽しませてくれるね。さて、いつ逃げ出した小鳥を捕まえようかな。その前にこちらから何度か打って出るのも楽しそうだね。突然僕が現れたら彼女はどんな顔をするのかな。楽しみだなぁ」
少年のアルカイックスマイルがいつしか悪戯を仕掛ける純真な子供の笑顔になっている事に自ら気付く事はなかった。
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