転生悪役令嬢は悪魔王子をスルーしてカフェオーナーになりたい

和気 藹

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領都フルネンディク

19 槿花一日の栄(きんかいちじつのえい)

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 目が覚めるとやっぱり私は自室のベットの中でした。
 ノート兄様の嘘つきめ、魔力切れの前にストップかけるって言ったじゃないか! と心の中でツッコミを入れつつ寝返りを打とうとすると、腰に重みを感じ見ると誰かの左腕が絡みついているのが見えました。後ろから抱き込むようにされていることに気づいた私は首と体をねじってこの腕の持ち主を見ると、目の前にハニーブロンドとスッキリと伸びた鼻梁とハニーブロンドの長いまつげと少し緩んだ薄めの唇が! ノート兄様のどアップが! うっ、なんだこの神々しさは! 十一歳の少年の肌のきめ細かさよ。触りたい。(自分八歳の癖に)私の四十路をとっくに入った精神年齢では、美少年のドアップは罪悪感ハンパない。甥っ子だってこの位の年には一緒に寝てなんてくれなかったよ。こんなオバサンが至近距離で美少年の寝顔を見てごめんよ? でもオバサン癒されるわ~眼福だわ~

 はた、と気づく。
 私の記憶と夢のせいで、魔法世界の中に中途半端な物質世界の技術を広めている。
 魔法のおかげで停滞しているとは言え本当はこの世界の人間が少しづつ技術革新をしてやるべきことではないのでは? そして一番の被害者はこのノート兄様なのでは? だとしたら、私はノート兄様にどうやって償えばいいのだろう?

 私の動揺した身動きが伝わったのか、ノート兄様の瞼が開き、瞳孔がしぼむのが見えるくらいの近距離で柔らかなエメラルドグリーンの瞳と目が合います。二回瞬きをした後、二次元でもかくやという美しい微笑みを私に向けてくれました。
「おはよう、アンネ。どうして泣いているの? 大丈夫?」
 優しい言葉に、全てを話して許しを請いそうになる衝動をこらえ、微笑み返します。私の因果は私が引き受ける。前世を告白して優しいノート兄様を巻き込んではいけない。

 「槿花一日の栄」で充分。現世で咲かせてみせる。

「ちょっと怖い夢を見ちゃって。ノート兄様が傍にいて下さったので安心したら涙が出ました」
「大丈夫?」
「はい。今日も練習頑張ります!」




 朝食をしっかりと取り厨房で魔法の練習再開です!

 昨日は最後に気を失ってしまったので、片付けや撹拌したバターはどうなってしまったのでしょうか?
 と、ドキドキしていたら、厨房は綺麗に片付いていて、ノート兄様が微笑みながら、混ぜた卵白の入ったボウルをインベントリから出してくれます。
「昨日の片付けはノート兄様がしてくださったのですか?」
「うん。インベントリにしまうだけだからね」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
 さすがノート兄様。嫁に欲しいぜ。

えーっと、小さな魔力の渦をいくつも作ってボウルの中に入れるんでしたよね。
イメージは七代目〇影のミニ螺〇丸!(あれは螺〇手裏剣だったか……?)

 ビシャン!

 大きな音がして卵白がはじけ飛びました。咄嗟にノート兄様が風魔法でしぶきを抑え込んでいてくれたので周りは大惨事にならなくて済みました。あれ?昨日も見た光景?
「張り切り過ぎだよ……」
「すみません……」

 今日は何とか全てのメレンゲを完成させました! そして気を失いませんでした! ノート兄様が頭を撫でて褒めてくれました。えへへ。



◇◆◇◆◇◆

 よく聞くけどよくわからないビジネス用語

 槿花一日の栄;白居易の放言 其の五。槿花一日自爲榮(槿花一日きんかいちじつ 自らみずから えいす)。槿花はムクゲの花の事。日本では「朝顔の花一時いっとき」とも言われ、儚いモノの例えに使われるが実際の漢文では、短い時間であっても栄華が極められるなら後悔する必要はないのでは?の意味。私がまだぴちぴちの頃の漢文好きの上司の言葉。現在ビジネスで使う人はきっともういない。

*****

 この度の平成30年7月豪雨による災害により亡くなられた方々に、心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

  和気 藹 拝
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