転生悪役令嬢は悪魔王子をスルーしてカフェオーナーになりたい

和気 藹

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領都フルネンディク

30 変なのに絡む

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 ♪セーレナさんからお手紙着いた♪
 ♪マリアンネったら読まずに食べた♪
 ♪しーかたがないのでおーむつを縫うよ♪
 ♪さっきのおむつで十枚完成♪

「変な歌だな」
「アンネは僕達の知らない歌をよく歌っているよ」
「ドラゴン族でも聞いた事ないわ」
「しかも調子っぱずれだ」
「鳥肌が立つほど上手な時もあるんだけどね」
「ふーん」
 そこの三人! 鼻歌にツッコミを入れるな!
 でも、すかさずフォローを入れてくる優しいノート兄様。夕御飯のデザートで出す予定のすもものコンポートを一つ多めに差し上げましょう♪すもも特有の酸味がコンポートにすることによって爽やかな甘みになってます。ビワのコンポートを一つ付けるのとどっちが良いですかね?
 あっコンポートと一緒に頂く水出しコーヒーの準備もしておかなければ。水出しコーヒーはネルフィルターにコーヒーを詰めて水を入れたポットに入れて四時間ほど放置すれば良いのでお勧めでございます。

 ふふふ。

 セレナさんからのお返事では、五日後にお待ちしています。とのことだったので、ツーウェイオールとロンパースを三枚ずつ、スタイを五枚夏用肌着と大量のおむつとおむつカバー、アルコールフリーのパウンドケーキを数種類焼いて持っていく予定です。

 くふふふ。

 ああ、今なら殿下にも寝ている時に絡まれた変なのにもタヌキお父様にも優しく応対できそうだわ。




 と、そう思っていた頃が私にもありました。
 エミーの美味しい夕御飯とすもものコンポートと水出しコーヒーを頂いて、温泉に入ってルンルン気分でベッドに入ったのに……。



 ――来てやったぞ! ――
 うわぁ、変なのがホントに来たよ。というか前回の厳かな雰囲気どこ行った?

 ――変なのとは失礼な。お前が俺にパスをつなげたんだろうが! ――
 パス? 知らない、そんなの。赤ちゃんに会うのが楽しみ過ぎただけで。嬉しい気持ちが暴走しただけです。不可抗力ですよ。

 ――どういうことだ? ふむ、魔力は相当あるようだが、テイマーなのか? ――
 知りませんよ。まだ魔力測定していないし。そう言えば、変なのと変なのの主の名前、教えてくれる気になりました? じゃなきゃ変なのとしか呼べないし。

 ――くっ、主の許可がなければ名乗ることもできないんだよ! お前は本当に性格悪い女だな! ――
 性格悪い? 誉め言葉ね。何とでもおっしゃい。じゃあ勝手に呼ぶわね。ヘンリーなんてどう?

 ――ヘンリー? なんか普通じゃないか? ――
 変と無理を足して、ヘンリー。私ってセンスあるなぁ~ふふふ。

 ――はぁー腹立つ女だな。主はどうしてこんなのを気にかけるんだ? ――
 それはヘンリーの主に聞いてください。その理由も私は聞きたいです。私はストーカー被害者なんだからね? 知る権利はあるのよ?

 ――ストーカー? ――
 私に許可なくヘンリーに行動を監視する指示を出す主の事よ。気持ち悪いわよねぇソイツ。

 ――気持ち悪い? 人間の女には人気があるみたいだぞ? ――
 私がそう言ってたって報告して良いわよ。大嫌いとか虫唾が走るとか顔も見たくないとかすごい罵倒していたって言っても良いわ。そうしたら主からのアクションがあるでしょ? まぁ私が予想するヘンリーの主なら笑ってそのまま監視続行の指示出しそうだけど。

 ――……確かにそうなりそうだな――
 私みたいな性格の悪い女を監視させられるヘンリーも大変ねぇ。で、明日からはノート兄様にお願いして障壁みたいなものを張ってもらうつもりだから、おいそれと監視できなくなると思うから。よろしくね。

 ――それは困る! ――
 ストーカーに情報を与えるのは愚の骨頂。挙句囲われては割りに合わないわ。主に”走為上そういじょう”させていただきますと伝えてね。そう言えば、ヘンリーって人間の夢に干渉するって事は夢魔なの?”

 ――夢魔? あんな下種なモノと一緒にするな。俺は聖獣”バク”だ! ――
 やっぱりね。って事は主は王族関係者ね!

 ――!!! お前! ――
 嫌ね、いきなり殺気向けないで。一般常識として聖獣を使い魔にできるのは、この国では「賢者の杖」の継承者のノート兄様と王族だけ。予想の裏付け取っただけじゃない。
 じゃあ、こうしましょう? 私の事は障壁を張らずに好きに探らせてあげるから、私にマシアス王国と王都の動向の情報をちょうだい?

 ――マシアス王国? なぜだ? ――
 マシアス王国が長期的な戦争を続けていられるのには国内の豊富な資源と優秀な兵站組織ロジスティクスがあるからなのよ。大陸の比較的温暖な場所にあるマシアス王国は、農業大国でもあるの。だから大規模な侵攻を計画する時って、食料や鉱物の輸出を押さえ侵攻先につながるルートの拠点に食料・補給武器・人員などの物資を配置しだすのよ。
 その情報を集めることによって次の侵攻の時期と侵攻先がどこだか予想がつくわ。
 国に鉱物や魔道具等の武器に転用できるモノの輸出は制限されているけれど、食料の輸出に関しては、各領の貴族に委任されているから、こちらに侵攻してこない限りは大きなビジネスチャンスなのよ。

 ――ふうん。で王都の方は? ――
 私は殿下の婚約者候補の一人なの。そして王家には死んでも入りたくないの。でも”后がね”として生を受けた手前、勅令が出ない限り逃げ切れるなら何でもするわ。

 ――何でも、ねぇ。王子殿下嫌われてるな――
 この前までは蛇蝎のごとく嫌っていたわ。

 ――この前まで? ――
 今は他人。深く関わらない人達の中の一人。好きも嫌いもないわ。だからずっと他人でいるために情報は欲しい。一番は殿下の婚約者候補の増減ね。

 ――ふうん、それ殿下が聞いたら落ち込みそうだな。まぁそれ位なら良いか。しかしお前は本当に八歳なのか? ――
 合意成立ね。私は正真正銘八歳ですが何か?

 ――おお怖っ、じゃあ、また来る ――
 はーい。情報待ってるわ。


「何もやましい事はしていないけれど、一方的に腹を探られるのは嫌。こちらにもメリットがなければ。これからはリアルタイムで情報を貰えそうね」
 これもセレナさんちの赤ちゃんのおかげ。くふふ。私は満足げに息を吐いて深く眠りに落ちるのでありました。


 ヘンリーの主が「気持ち悪いとか大嫌いとか虫唾が走るとか顔も見たくないとかすごい罵倒していた」と報告を受けてちょっと落ち込んでいたのは、また別の話。


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