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領都フルネンディク
31 こんにちは!赤ちゃゃゃゃん!
しおりを挟む今日は待ちに待った五日後! 赤ちゃんとご対面の日です! あっ違った、ファジャ地方の冷泉調査の日です。
今回は山一つ越えた先なので、ファフニールに乗って飛んでいてもそんなに高度もないし、怖くないです! やっぱり赤ちゃん効果は絶大ですね! 何が何でも下は見ませんけどね!
それと、ファフニールが何かと話しかけてくれるのが大きいかもしれません。
「しかし本当に今日は静かだな?」
「ファフニールが色々話しかけてくれるから気が紛れています。ありがとうございます」
素直に感謝を告げると、ファフニールは照れたのか、
「べっ別に、お前の為にやったんじゃないからな! お前が煩いから仕方なくやったんだからな!」
おお、ドラゴンダンスィーのツンデレ発言いただきました!
「はいはい、ありがとうね」
「はい、は一回だ!」
「はーい」
「伸ばすな!」
くすくす笑いながら、幾重にも重なった山の稜線の向こうに広がる青い空を見上げると初夏の濃い青色と山の緑とのコントラストがとても綺麗です。
冷泉が涌いている場所は幾重にも重なる山の谷間に綺麗な渓流と二十戸程の家が集まる小さい集落の端にあります。
主な産業は林業。ここには何故かアジア原産の檜が自生していて高級建材として流通しています。私としては、檜の精油が欲しいですが、あれはアスナロやヒバから精製されるので今回は入手はムリかな。「昨日は夢と過ぎて、明日はいまだ来らず」ですね。
領都に戻ったら、森林資源の分布を調べてみましょうか。(領都から出てはいけないという条件はすっかり忘れている)
あっアスナロは「まな板」の高級材料じゃないですか! 今までカッティングボードしか持っていなかったので、板厚が私の掌位ある板前か! っていうくらいの大きいものが欲しいな。
そんな事を考えながら、集落の広場に降り立つと、コーヒー色の髪の二十代半ば位の青年がこちらに走り寄って頭を下げます。あ、コーヒー飲みたい。
「いらっしゃいませ、お初にお目にかかります、こちらの冷泉の管理をしております、村長の長子でドゥイリオと申します。通常ならば村長がお出迎えにあがるところなのですが、生憎父は怪我で床に臥せっておりますので、私が参りました」
「出迎えありがとう、ご苦労様。ノルベルトだよ。こっちは妹のマリアンネ。あと、ドラゴンのトゥーナとファフニール。大変な時期に申し訳ないけれど、長居しないつもりだから案内よろしくね。あと、村長さんにお見舞いを伝えてね」
お分かりの方も多いと思いますが、私は目礼のみです。
「ありがとうございます、父も喜びます。では先に源泉の方にご案内します」
「お願いします!」
「こちらが源泉です」
近かった。申し訳ないくらい近かった。
歩いて行った方が良かった位の近さ。
土魔法でコンクリート状に固められた池にコポコポと砂を巻き上げ絶えず涌き上がる冷泉。湯量は多いようです。
「ここから冷泉を汲み上げて、温泉施設で温めて浴槽に流しています。加温する必要があるので、かけ流しにはできておりません」
紫キャベツ試験紙を取り出して源泉に浸けてみると、青色になりました。やっぱりアルカリ性。重曹泉かもしれない。
「この冷泉の温度は季節関係なく一定なのかしら?」
「はい、そうです」
「これって皆は何かに利用している?」
「いいえ、侯爵様のものですから、私達には……」
「……お父様サイテー……」
やっぱりタヌキには火をつけよう、タヌキ汁にしよう。
「アンネ、殺気が漏れてる」
「冷泉は使えないなら、湯の花を取るには問題ないのでは?」
目を見開いたドゥイリオの顔は頭の周りにクエスチョンマークが幾つか浮かんでいるようで、つられて笑ってしまいます。
「お嬢様、湯の花って何ですか?」
「温泉の水分を飛ばして、残った固形物の事よ。それをもう一度お湯に溶かすと温泉になるのよ。衣類やおむつの洗剤代わりにもなるわ。あっ洗剤代わりの時は水か体温以下の温度まで冷ましたものを使ってね? 涌いている冷泉全部を温泉施設に流している訳ではないのでしょう? もったいないから利用しなければ」
その話を聞いて、腕を組んで顎をつまみ考え込むドゥイリオ。
「お嬢様、そのお話、父に話してよろしいですか? その後、領都のイザーク様に相談してよろしいですか?」
「いいですよね? お兄様?」
ノート兄様が小さくうなずいてくれます。
「それと冷泉の効率の良い入浴方法があるんだけれど、温泉施設に案内してもらえるかしら?」
「はい、ぜひ!」
ドゥイリオの爽やかな笑顔が眩しいです。
…………ところで、私はいつ赤ちゃんに逢えるんでしょう?
*****
更新遅くなって申し訳ありません。次こそ赤ちゃん!
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