転生悪役令嬢は悪魔王子をスルーしてカフェオーナーになりたい

和気 藹

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領都フルネンディク

32 奥ファジャ

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 源泉の近くに温泉施設テルメがあるので、今度は歩いて向かいますよ。
 歩きながら、先程の湯の花をどうしたいのか、ドゥイリオに聞いてみます。
「ここ奥ファジャの温泉施設テルメは中流層の湯治客(長期滞在者)がほとんどで、貴族は表ファジャの方に行ってしまいます。湯治客は基本自炊ですので、収入としては、食料販売がメインになります。が、山間のこの場所は農地開発は難しく、村民は表ファジャから買い付けて市を開くことしかできません。農閑期に湯の花を生産して入浴剤として販売できるなら、現金収入となります」
「ここは奥ファジャって呼ばれているのね。ステキ。冷泉から湯の花を効率的に採取する方法を考えなければいけないわね」
「それについては昔からある方法で取ることができると聞いた事があります。伐採時に出るスギや檜の枝葉を湯に浸けた後、天日にさらし乾燥させるのを何度か繰り返すと成分が白く結晶するので、それを集めます」
 昔の塩の採取法と同じですね。
「へぇ、林業の副産物を利用するのね。先人の知恵ね」
「はい、ここは侯爵様の直轄地ですので思い切った改革ができなかったのですが、お二人とイザーク様の許可があれば、動き出す事は可能だと思われます」
「思ったより早く、製品化できそうね」
 事業の成功は、5W2Hを明確に計画する事。なぜ(Why)、何を(What)、誰が誰に(Who)、どこで(Where)、いつ(When)、どのようにして(How)、いくらで(How much)。そこら辺はイザークに叩き込んであるので大丈夫だと思います。
 しかし、ドゥイリオは利発ですね。安心して任せる事が出来そうです。



 さて、奥ファジャ温泉施設テルメに着きました。
 木造2階建てのアパートのような作りで、部屋数は二十室。それぞれにキッチンがあるそうです。ザ・湯治って感じですね。
 お風呂は一階角にあり、浴槽は大きな檜風呂。病気になって中が空洞になった樹齢千年近い巨大檜を利用して作ったものらしいです。おおう、なんて贅沢。もちろん男女別。
「冷泉の効率の良い入浴方法は、温泉と冷泉に5分おきに交互に入る反復入浴。高齢者や心臓疾患がある人の為に、腰までの半身浴にするの。水分補給は必須だけれど、運動できない人や冷え性やダイエットに効果があって、3回程繰り返せば、凄い汗をかけるわ」
「半身浴で水深を取らなくて良いなら、今浴槽にしている檜がまだありますので、すぐ対応可能です。湯の花の販売が上手くいって資金に余剰が出れば、設備投資もできますね」
「その通り。理解が早くて助かるわ」
「滅相もございません。お嬢様こそ、知識の深さに感嘆しか浮かびません」
「ありがとう」ふふ、だって不惑をとうに超えてますからね。
 ついでに、紫キャベツ試験紙で調査。先程とあまり変わらない色に途中酸素が混入していないことが判明し、良質の管理ができている人々にぜひ豊かになってもらわなくては! と決意を新たにします。


「さて、エミーに頼まれた荷物もあるし、ドゥイリオの赤ちゃんに少しだけ会いたいのだけど、いいかしら?」
「それはかまいませんが……ちょっと問題がありまして……」
「えっ?!」
「最近、娘のマルシアは妻に対してだけ笑わなくなったのです……それで妻が精神的に大分やられてまして……」

 えっ、どういう事?!
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