転生悪役令嬢は悪魔王子をスルーしてカフェオーナーになりたい

和気 藹

文字の大きさ
37 / 43
領都フルネンディク

36 悪魔が来りて……

しおりを挟む
 悪魔殿下が来りて〇を吹く(あ、ギルの笛じゃありませんよ。念のため)的な不吉なお知らせは、対外的には苗木の授与式又は植林式などの式典が行われるはずなので、付きっ切りで対応すべきはお父様タヌキか嫡男のレイ兄様とわが領ウチからはイザーク位で、未成年の私とノート兄様にはまーったく関係のない話で。

 領主館に殿下一行が滞在されるとしたら、「お前ら煩いからちょっと外行って遊んでろよ」と追い出される可能性があるくらいでしょうか。

 当日前後に追い出されるのは大歓迎なんですがね。
 悪魔殿下はどう打って出てくるのかが予想がつかないのがツラいところです。


 ただ、わが領ウチと山脈一つ隔てた隣国から譲り受けたという木の苗木に心当たりがあるんです。  ある程度標高が必要で、コーヒーの木と同じく地域で育つ木と言えば、カカオの木です。
 種子がチョコレートの原料となるあれです。        

 すごい欲しかった、食べたかったものなんですが、カカオの実からカカオニブを取り出しカカオマスにしてチョコレートやココアにするのにすごく手間がかかるものであることも知っているので、カカオニブを購入して加工して製品として販売するくらいならまだしも、コーヒーとヒッコリーの実の安定生産に取り組み出したばかりのわが領ウチには過ぎた代物なんですよ。

 まず第一にチョコレート生産をするにしてもその分の人件費と設備投資とかに廻すお金は侯爵家にはないと思うのですよ。

 第二にコーヒーとカカオは植生地域がほぼ一緒。ということは、今年植樹予定だったコーヒーを減らしてそこにカカオを植えて、コーヒーの生産予定を減らし収穫できるようになるまで何年か費用だけがかかるのを負担しなくてはいけなくなるのです。しかも苗木から収穫までこの世界で年単位でどのくらいかかるか予想がつかないため私の猶予期間で収穫が成功する可能性は低いとくれば……。


 つまり、お荷物を押し付けられたって事です。
 お父様タヌキはその事に気がついているのかどうかは今はわかりませんが。

 隣国もその雑多な工程に音を上げて我が国に押し付けて来たのが、まる分かりじゃないか。
 そして王族の直轄領でも同じだと思われ。

 ああ、下請け・孫請け企業の悲しみってヤツですね。わかります。

 とりあえずこの件については、私の知っている限りの情報をイザークに渡し、コーヒーの生産の見直しをしなくていけません。

 悪魔殿下め、やってくれるわ。
 ラノベとかだったら乗り込んで来て、何か食わせろとか、恋愛小説バリに口説いてくるのが普通でしょうに、こっちの計画自体を変更させて混乱を狙うなんて。やっぱり悪魔だ。
 善意を装って確実な計画変更を狙うなんて、どんだけ性格が悪いんですか。どんな子供なんですか。まるで、前世の新規事業立ち上げ完了目前に一枚かませろと言ってきた某大手商社みたいじゃないですか!

 くぅー、目の前で悔しそうな顔を見せるの相手を喜ばすだけ。反応を見せることは情報を流すようなもので絶対にしてはなりません。大嫌いだ。ほんと、大嫌い。

 未成年の私ができるせめてもの抵抗は悪魔殿下が領都に来る前後に馬車での日帰りが不可能な奥ファジャにでも逃げ出すことくらい。最悪はドラゴンのパウサにでも。でも宿泊することはできないし……お父様タヌキに行った事がバレるかもしれないけれど、身内のほうがまだごまかせますし。


 ああぁ癒しが欲しい! もふもふ! もふもふが欲しい! 切実に!


 ばたばたと準備をしているうちに、王都からお父様タヌキとレイ兄様が殿下一行の受け入れの準備をするためにやってきました。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

よく聞くけどよくわからないチョコレート用語

カカオニブ:果肉から取り出した種子を焙煎し外皮と胚芽(芽になる部分)を取り除いて乾燥させたもの。
カカオマス:カカオニブを細かく砕いてペースト状にしたもの。この工程がチョコレートの風味の一つである”くちどけ”を左右する。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...