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三十六計逃げるに如かず
39 領都脱出♪
しおりを挟むふふふ、やったよ!
レイ兄様を巻き込んで、やってやったぜ!領都脱出成功!
現在、私はノート兄様に作っていただいた隠匿の魔法を組み込んだ魔石ペンダントでヘンリーと主の殿下に見つかることなく、ウルバノ地方に馬車で向かっています。
ウルバノの領館へは馬車で三日。そんなに遠くはありませんが、途中の町でその地の領主に顔見せという事で二泊する予定です。
奥ファジャに逃げるのでは?と思ったでしょう?ファジャ地方は温泉有名な観光地なので、タヌキが湯治に……なんて言いかねないので大事をとって観光地化していないウルバノに向かうことにしたのです。
そしてなぜ馬車かと言うとファフニールなら半日かからない距離ですが、ファフニールの魔力痕跡でヘンリーに追跡されるのを防ぐためです。
同行者としてシモンとローがいます。
あ、あとお目付け役兼護衛としてハンス。顔面偏差値が高い面々ですな。私は免疫あるけど、まぶしさ半端なし。あっシモンはマスコット枠ね。ジャンガリアンだし。
うふふ。そんな事どうでもいいの。殿下から距離を取れれば。
「神は天にいまし、すべて世は事もなし」
無神論者ですが、今回は神に感謝したい。
さっきちょっと名前を出したウルバノ地方は、高い山に囲まれた日当たりが良く朝晩の寒暖の差が大きいブドウの生育に合った土地で、良質なワインを生産するさしずめ甲府盆地のような場所であります。
この三人で行く目的。それは蒸留窯の試作品ができたのでテストをするためです。あと現地視察という名の観光ですね。おいしいフルーツでデザート作りますよ~!
私の弾んだ気分的が伝染したのか、さっきまで緊張気味だったシモンが話しかけてきました。
「楽しそうですね、お嬢様」
「ええ、初めてのウルバノが楽しみで!」
「ウルバノはブドウのほかに色々フルーツが栽培されているようですしね。それから途中で寄るゼルニケとゾンネンベルフも豊富な農産物があるようです」
「シモン、勉強してきたの?」
「はい」
「偉いわね。じゃあゼルニケはシルクの産地だって話は?」
「はい、現在の領主は桑の木の品種改良に力を入れていて、精力的に活動しているようです」
「桑の実はマルベリーね。毛虫が付きやすいから防虫対策が必要だけど甘い果実は需要が多いのではないかしら? じゃあゾンネンベルフは?」
「ゾンネンベルフは農産物は目立ったものはありませんが、綿花と織物の生産が主流です」
「隣り合った領地で似ているけど特性が違うものを作っているのね。混紡糸とかあるのかしら?」
「それが……」
「……なんか想像できるわ。仲悪いのね」
「はい」
「で、領主の息子と娘が恋仲とか? それなんてロミジュリ?」
「いえ……はい?」
「いえ、こっちの話よ」
…………なんだか、めんどくさそうな嫌な予感。
人間関係の中で一番めんどくさいと私が思うのは恋愛問題。どうしても相談を持ってくるのは盛り上がっている方だから、相手からすれば迷惑意外何物でもありません。その中でめんどくさいのは初恋同士。理想と現実が入り混じるからすごく難しい(めんどくさい)のよね。お互いの生育環境(異性の兄弟姉妹がいるかいないか)で変わってくるし。
その分大人は楽。ヤれるかヤれないか。特に女性はどうしても生理的に嫌な相手ってのがいるから、ボディタッチで大体判別できるのよ。あっプロのお姉さんは別ね。
つか上位とはいえ七歳の子供に恋愛トラブルとか持ち込む時点でその人達ダメダメだからね? 仕事しろよ、仕事。
夕方にはゼルニケの領主館に到着し、執事に応接室に通されます。
明るいアイボリーの壁紙に調度品も華美すぎず落ち着いた設え。テーブルクロスはシルクレース。良い趣味してますね。設えを褒めると、卒のない初老の執事の顔が少し柔らかくなりました。すぐにマルベリーの香りのお茶とクッキーが出され、室内に良い香りが漂います。
「男爵のブレフト様はすぐにご挨拶に参りますので、しばらくお寛ぎになってお待ちくださいませ」
「ありがとうございます」私の代わりにシモンが応対します。うん、いいタイミングでご挨拶ができるようになって来たわね。
早速マルベリーのお茶をいただきます。コーヒー中毒だけど、たまには香りの良いフレーバーティーも良いですね。程よい甘さでさっぱりしてます。
突然、廊下が騒がしくなってきました。
「イサベレ様!お引きください!」
「おやめください、イサベレ様!」
「イサベレ様!」
ドアがノックもされずに開いたので、そちらを見ると、十二、三歳位の煉瓦色のふわふわした髪と意思の強そうなヘーゼルを瞳をした少女が怒りを露にしてズカズカと入って来ました。
私の存在を認めると、私に向かって叫び出しました。
「ブレフト様は私の婚約者よ! 侯爵令嬢だか何だか知らないけれど、後からやって来て私達を掻き回さないでくれる?!」
わけがわからないよ。どうして人間(ry
自分の心の中で建てたフラグの中で一番めんどくさいのがやって来た事にため息を吐いたのでした。
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