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ただいま 10〜実家の自室の惨状は「あるある」〜
しおりを挟む廊下の奥、実家の急な階段を上がると板の間兼廊下に面した八畳間と六畳間の二間続きの二階がある。
八畳間は両親の部屋で、六畳間の方は高校を卒業するまで自分の部屋として使っていた。襖一枚隔てたプライバシーというのは多感な年頃には色々要らぬ苛立ちを生み出したが、曲がりなりにも青春の懐かしい思い出の詰まった部屋だ。
今でも私が出て行った当時のまま………
保存してあるわけなどないのだ。
親の大反対を押し切って東京の大学に行ったきり、地元なり県内で就職先を探そうともせず、東京でもこちらでもない遠く離れた別な田舎の青年と家庭を持って十数年。
孫の顔も見せているし親不孝とまで言われたら流石に心外なのだが、年に一度しか顔を見せない娘の部屋なんて悲惨なものだ。勉強机やベッドの上には収納しきれないのか単なるものぐさか、多趣味な母のあれやこれやと頂き物の箱が雑然と積まれてある。
それでも夏に来た時にはまだ足の踏み場があった記憶があるのだが、おそらく昨日、急きょ片付けた祖母の部屋の物などがさらに山と積まれて完全に物置と化していた……長持がないだけマシか(農作業小屋に持って行ったらしい)
「……これ、どごさ寝だらいいの?」
母はケロッとしてこう言った。
「葬式まではお父さんが番をしながら仏さんの部屋さ寝るじょうすけ、少し狭いども八畳間さおらとみっこ伯母さんとあんた達、四人で寝だらいいべ」
「颯也はもうすぐ中学生だから、一緒はキツイと思うんだけど」
「そうが。そうだぁねえ…んだら、お父さんと仏さんの部屋さ寝だらどうだべ。広いし」
その部屋割案を聞いた颯也は複雑な表情だった。
見栄もあるだろうから言葉には出さないが、古い田舎の家の仏間というのは子ども心にうっすら怖いものである。私も子どもの頃、親戚の家でそんな覚えがある。
お祖母ちゃんだけならまあ我慢できても、曽祖父や祖父なんて颯也にとっては知らない仏さんだろうし白黒の写真に見下ろされてるだけで落ち着かなそうだ。
「……晃夫叔父ちゃんの部屋はだめ?」
颯也が遠慮がちに聞いた。
晃夫の部屋は一階の廊下の先にある独立した北向きの四畳半で、曾祖母が生前使っていた部屋だ。
ちなみに小学生の頃までは、二階の六畳間に木製の二段ベッドと学習机を並べて私と同じ部屋を使っていた。
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