ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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通夜三日目 6〜颯也とひい祖母ちゃん〜

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 颯也が五月生まれだったから、生まれて初めて実家に連れて来た時はお盆ですちょうど三ヶ月だった。

 それで、お食い初めは実家でした。赤ちゃんのお膳を用意し、箸で食べさせる真似事をして赤ちゃんの成長と安泰を祈る行事だ。こちらでは一家の最年長の者が食べさせる役をするというので、祖母にしてもらった。

 その当時は手が離せないときに、定位置の座椅子に座ったままちょっと抱っこしてあやすくらいのことは祖母にも頼めた。
 次の年には倍以上の重さになり、せわしなく動き回る颯也の子守はもう頼めなかったし、悠也の時には腕を痛めていたので私が介助して抱かせた。

 思い出すままにそんな話をすると颯也もふんふん頷いて聞いている。

「あんたが肩を叩いてあげたらとっても喜んでたね。一緒に暮らしてた時、私と晃夫もよく肩を叩いていたんだよ」

 正確に言うと父が祖母の機嫌取りと家庭の平穏のために私たち孫を、長じては曾孫たちをだしにしてやらせていたというのが正しいかもしれない。

「それは覚えてる。でもひい祖母ちゃん、気を遣ってすぐ『もういいよ、ありがとう』なんて言うんだよ」

「私たちにもそうだったよ。それでも『もう少し』と言って叩いてたんだけど、肩や腕がそれで治る訳でもないし、その時は『ちゃんと役に立ててるのかな』なんて思ってたんだけど。颯也たちとのやり取りを見てたら十分嬉しかったんだなってわかったんだ。颯也はひい祖母ちゃんのことどう思ってる?」

「なんか、長生きしたすごい人」

 そうか、そういう敬意の抱き方もあるのか。考えてみたらこの子の人生の約八倍だ。

「そういうの、手紙に書いてもらえないかな。手紙が難しかったら作文でもいいんだけど。ひい祖母ちゃんもお祖父ちゃんも喜ぶと思う」

「えええ……」

 大の苦手というほどではなさそうだが、手紙も作文も颯也にとってはできれば遠慮したいジャンルらしい。私などは授業中に先生の目を盗んで友達宛の手紙を回したり交換日記を書いていた世代だし、宿題にドリルなんか出されるより作文の方がよほどラッキーだと思っていた。
 大学の卒業論文のような物は二度と書けないだろうが。

 渋る颯也をおだてたり励ましたり、横から助け船を出したりしながら結局、最後はほとんど私の口述筆記のような形で「ひいばあちゃんへの手紙」は無事完成した。
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