ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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祖母の葬儀 2〜助っ人、咲恵ちゃん〜

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 ちょっと前ならメールアドレス、今ならSNSのIDでも交換するのかもしれないが、お互い「同じ東京だし実家に帰って会おうと思えば実家に帰ってくれば会える」みたいな油断があったせいか、わざわざ連絡を取らずにいるうちに彼女が留学したり私が結婚、出産で転居したり……と気づけば驚くような年数が経っていた。

 仲が悪く疎遠になっていた訳ではなく、何度か連絡を取って会おうとはしたのだが、その度にタイミングが合わなかったりライフスタイルの変わり目だったりーーお互いの近況について、風の噂ならぬ親戚ネットワークで情報だけは仕入れていたのも、そこまでの無沙汰に気づかなかった一因かもしれない。

 公私共に海外を行き来しながら、キャリアウーマンとしてシングル生活を謳歌しているかに見えた咲恵ちゃんだが数年前に突如、結婚して神奈川に引っ越したというお知らせの葉書が来た。
 翌年の年賀状には「一度遊びに来てください」と添え書きされていた。

 当人同士でシンプルに籍だけを入れた、いわゆる「地味婚」というやつでこちらの親世代や年寄り達がずいぶんやいのやいの言ったらしい。

 私が豊と結婚を考えた時は、「新郎新婦がミラーボールの光とスモークの中ゴンドラに乗って登場しお色直しはおかわり自由」なバブルのド派手婚ーーの時代はさすがに過ぎ去っていたものの、「身内に対するケジメ的な儀礼を欠くのは失礼である」という風潮は色濃く残っていた。
「家も離れていてお互い高齢の親戚も多いし、お互いの家族で顔合わせして籍だけ入れたらいいんじゃないか」という話も二人の間で一応出たのだが、両方の親から(それぞれのお国言葉で)「とんでもない」「そんなわけにはいかない」という反応が返ってきたためあっさり断念してしまった。

 向こうで型通りの式を挙げ、披露宴を開いた事自体はーーこちらの親戚や旧友も遠路はるばる駆けつけてくれたしーーそれなりにいい思い出になっているのだが、自分の意志を貫いた咲恵ちゃんのことは格好いいなあと思っていた。

 ちょうど悠也の診断がつく前のトラブル頻発期で、ある意味乳児期以上に子育てに手が掛かる時期だったのだが、いつか落ち着いたら咲恵ちゃん宅に遊びに行きたいとは思っていたのだーー子どもがいようといまいと同世代の晩婚カップルの理想のような家庭を築いている事を信じて。

「今日はありがとうね。こっち帰ってきてたの、知らなかった」

「そ。晴れてバツイチ。あはは」

 離婚のこと、触れないでおこうかとも思ったのに明るい……
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