蓮華の花言葉

kinmokusei

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新しい時代と生活

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「勇気?
その娘は?」

部屋から出るのは初めてだ。
扉の前には父王が倒れていた。
もう息はない。

「死んだ王の娘だ。」

銀髪のその男は驚く。

「勇気、殺さないのか?」

勇気の周りに人が集まってくる。
みんな血まみれだ。
反乱の凄まじさをあらわしている。

どうやら銀髪の男は勇気の兄のようだ。
名は優馬。

「勇気、お前が同情するような奴でないことは分かっている。
何故殺さない?」

優馬はあたしが気に入らないようだ。

「そうだ!
王族には死を!」

「殺せ!」

「殺せ!」

「殺さないなら俺らが、、、!」

皆口々に声を荒げる。

「まだ死期じゃないんだと。」

勇気はあたしがが死のうが生きようがどちらでも構わないようだ。

「はぁ?
なんじゃそりゃ。」

優馬は笑っている。

「お前が殺らないなら俺が殺る。」

優馬はあたしに剣を向ける。
その時、、、。

「勇気、優馬!
みんなも!
城が崩れる。
逃げろ!」

何人かの反乱軍の民達がやってきた。

「やべっ。
逃げるぞ。」

「その女は後で火あぶりにでもする。」

「捕らえろ!」

そして城の外に出た。





「眠い。」

あたしはぽつりと言った。

城を出てから程なくしてすぐ城は崩壊した。
今は馬車の中。
荷物と一緒に運ばれている。
手足は拘束されていた。
外は見えない。
勇気も優馬も一緒ではない。

あたしは深い眠りに落ちていった。

雲の上。
なんだか息苦しい。
炎、、、?
熱い。
そうだ。
火あぶりだったっけ?
あたしは死ぬのか。

すると雨が降り出す。
集中豪雨。
炎は消える。

洪水。
田畑が潤う。

夢見は殺すと天が怒りに狂う。
大災害になりたくなければ生かすことだ。

洪水。
これ以上酷くなると死者が出る。

あたしは目を開け、、、。

え?
へ?
何?

あたしは裸で寝ていてその隣にはこれまた裸で寝ている勇気がいた。





「きゃーっっ!!」

「るせー、、。」

「なんだやっと起きたか?」
勇気はひょうひょうとしている。

「なっ、なっ、なっ、、!

何したのよ!」

勇気は寝起きのせいか頭をかきながら、

お前3日間寝てて起きねーから。

アクビしている。

「男が女にやることは決まってるだろ?
それよかやっとおきたんだ。
火あぶり始めること言わねーと。」

決まってるって、、、。

あたしは絶句した。

「まー死ぬ前に男の1人や2人、、、。」

ばっちーん!?

あたしは平手打ちをかました。

「ってーな。
何するんだよ。」

「何するはこっちよ!
ふざけてんの?!」

「お前自分の立場分かってるか?
死ぬ前に楽しめたんだ。
感謝されてもいいくらいって、、え?」

「洪水がおきるわ。
夢見は天の申し子。
火あぶりは失敗に終わる。
あたしに触れたこと後悔することになるわね。」

「へぇー。
親を殺されても泣かなかった奴が。
こりゃ傑作。」

泣く?
涙と言うのか、これは。

「愛情がある訳じゃない。
そんな男に、
腹立たしいだけよ!」

「まー死ぬんだ。
いいんじゃね?」

「夢見を甘く見ないで!
火あぶりでもなんでもすれば?
結果は分かってるの。」

「この土地は日照り続きだ。
作物も育たないし、飲み水にすら困ってるくらい。

雨が降るだぁ?

降るなら降って欲しいね。

じゃ、兄貴に言わねーと。」

そう言って勇気は部屋から出ていった。





なんなのあいつ!
最低!!

あたしはベッドにあった枕をドアに投げつけた。

とにかくなんか着るもの、、、。

すると、

「おい!
ほらよ!」

いきなりドアが開いて白い着物を渡された。
勇気だった。

「きゃーっっ!!!」

あたしは再び悲鳴をあげた。

「キンキンうるせーんだよ。
そんな幼児体型見られて減るもんじゃねーだろが。

早く着替えろ。

儀式が始まるんだから。」


なっ、なっ、なっ!


あたしはまたも絶句。

「あっち行ってよぉ!」

「はい、はい。」

なんなのあいつ。
なんなのあいつ。

なんなのよ!!





程なくして火あぶりの儀式が始まった。

あたしの足元に火が放たれる。

「王族には死を!」

民達はみんな口々に叫ぶ。

「雨が降る。
洪水がおきるわ。」

あたしは言った。

「まーだそんなこと言っているのか?
この土地には雨なんか、、、え?!」

勇気が話し終わる前に

ドドーン。

雷鳴が轟いた。

ぽつりと雨粒があたしの頬にあたる。
雨足は強くなり、あたしの夢は現実となった。

「命ごいではないわ。
あたしの死期は今ではない。
早くこの儀式を止めることね。
洪水は城が崩れたから起こるのよ。
雨で地盤が緩んで城に流れ込むように塞き止められていた川が一気にこの土地まで押し寄せてくる。
早くしないと死者が出るわよ。」

勇気は優馬と何か話している。
民達も動揺が隠せないようだった。
辺りがざわつく。

「早くしないと手遅れになるわよ!」






「それが本当だとして何故お前を助けなければならない?
命ごいにしか聞こえないね。」

優馬が言った。

「あたしだってそう思うわよ!
ただあたしを殺すとダメなのよ!
死に方は分かってるの!
それを口にすることはできないのよ!
あたしは被害を大きくしたくないだけ!
ただそれだけなの!」

悲鳴のような叫びだった。

「早く!
あたしを、、。
濁流がきちゃう。

早く!」

勇気が優馬の制止を振り切りあたしの縄をほどいた。

「早く!
こっちよ!」

あたしはみんなを誘導した。

間一髪だった。





「おい、あと数秒遅かったらやばかったぞ。」

民達の動揺は隠せなかった。

干上がっていた川に濁流がものすごい勢いで流れ込んだのだ。

「それに雨が降るなんて、、、。
信じられない。」

民達は皆口々に言った。


「夢見といったか?」

優馬があたしに話しかけてきた。

「そうね。」

あたしは答えた。

「これからどうなる?」

「寝なきゃ分からないわ。
少しは信じてもらえたかしら?
あたしは濁流が来ない場所も夢で見たの。
だからみんなを誘導できた。
それだけよ。」

「へぇー。
未来を見通すことができるっていうのは本当なのか。」

勇気が不適な笑みを浮かべる。

「いいんじゃね?
使える。」

「私利私欲に使うと父上や母上と同じことになるわよ?」

「上等!
お前名は?」

「可憐。

ただ忠告するわ。
あなたはあたしに、、、。
まぁ、いいわ。
ただ悪いことが起きないことを願うことね。」





それから。

あたしの夢見で村は活気づいた。

まず海から近いところだったので貿易をすることを提案した。
資金は城から濁流と一緒に流れ込んだ財宝を使った。

川に水が流れるようになり田畑も潤った。

民達ともまだわだかまりはあったが次第にあたしを受け入れてくれるようになった。

あたしは勇気の家で暮らすようになっていた。



「可憐。
お前本当に自分に自信ないんか?
そうは見えねーよ。」

勇気とはケンカもするが、最初よりはうち解けたと思う。

「ないわね。」

あたしは素っ気なく答えた。

「未来が分かるんだろ?」

「自信とはまた違うのよ。
夢見は良いことだけ分かる訳じゃない。
みんなあたしを腫れ物に触るような態度をとる。
夢見だから大切に扱うだけ。
それが無ければあたしは何もないただの女だもの。」

あたしは俯く。

「可憐。

蓮華の花言葉って知ってるか?」

勇気が意地悪そうに笑う。

「知らない。」

「オレの母が言ってた。
女は可憐。
男は勇気。
自分に対する最上級の褒め言葉なんだってさ。」

あたしは俯く。

「あたしの名前は天から授かったもの。
あたしは自分の名前が大嫌い。

可憐なんて。
あたしのどこが?
名前負けもいいとこよ。

教えて欲しい。
あたしは何の為に生まれてきて、何の為に死ぬのか。
時々とても怖くなるの。
夢見でなかったらあたしには何があったのか?
現に夢見だたから優馬はあたしのことを殺せない。
憎むべき王の娘なのに。
勇気だってあたしを殺さないのは夢見だからでしょう?
あたしは夢見の為に生きているだけ。

さみしい。

夢見は、、、。」

勇気はあたしに言った。

「可憐は自分をもっと、、、。
なんつーかなー。
自分に、、、。

うーん。
さみしいなら抱いてやろうか?
また、、、。」

「いいわよ、遠慮する。」

同情はいらない。

優馬にも勇気にも婚約者がいる。
あたしは夢見。
聞いた訳ではないし、勇気達が言った訳でもない。

あたしは1人。
何故だか、、、それを夢見で見てショックを受けたことも話してはいない。

あたしは自分が大嫌い。
勇気も優馬も夢見だからあたしを生かしているだけ。
ただそれだけなのだ。





「兄貴さ。
オレさ可憐に悪いことしたかな?」

「なんだ急に。」

勇気はなんだか可憐が泣きもせず毎日夢見で民達に未来を予知し続ける姿が哀れでならなく思えてきたのだ。

愛美(あいみ)には言ったんだけど、オレ可憐を抱いてるんだ。

「は?」

優馬は驚く。

「起きねーからさ。
ほんの出来心。」

「まーたやったんか、お前。」

「可憐、笑ったことないだろ?」

優馬は考え込む。

「そういえばそうだな。」

「感情を表に出さないとこあるから。
さすがにやった後は泣いて怒鳴ったけどそれ以上何も言わないし。

責めもしない。
どこか冷めてるんだ。
たださみしいってさ。
決して責める訳じゃない。
だからこそ自分で軽い気持ちでやったのが悪かったかなーとか。

オレ今までであんな女初めて。」

優馬がふっと笑った。

「気になるか?」

「いや、オレには愛美がいるし。
そーゆんじゃないんだけど。
もっと笑った顔が見たいっていうかさ。」

「オレも可憐みたいな女は初めてかな。
まだ16だってのに確かに冷めてるかな。

死に方分かってるってどういう心境なんだろうな。
夢見っていうのは孤独なものなのかもな。
いい予知ならみんな喜ぶだろうけど悪けりゃいろいろ言われるだろ?
そんな中で育ったから自分の感情を表に出さないことが癖づいたのかもな。

いつみはそこいって素直だからなぁ。
愛美だってそうだろ?」

「あーうん。
まーな。
よく笑うしよく怒る。

扱いやすいつーか。」

「分かる。」

優馬が笑う。

「そこいくと可憐はどーしていいか分からないよ。

何にも言えなくなって困る。
謝ることもできやしねーし。」


「多分こう言うだろうな。

気にしなくても大丈夫よ。とか。」

「あー分かる。」

勇気と優馬。
可憐は夢の中。
可憐に知られないように話しても可憐は夢の中でその会話を知るのである。

どーせ可愛くないわよ。
可憐はますます心を閉ざすのであった。



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