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別れ
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「夢見は絶対だ。」
民達は皆崩れた城の前にいた。
「この地は小さい島だ。
清らかな水。
豊かな自然。
それが気に入ったのか、
夢見である少女を連れいきなり戦場と化した。
抵抗むなしく大人達は奴隷として売られ、大きな城が建てられた。
過度な労働、乾きに飢え、俺達は耐えながら、徐々に力を磨き、やっとまた自由を手に入れた。
しかし。
夢見が予言をした。
また自由を奪われる。
どうする?
闘うか?
夢見を渡すか?
100人では到底敵わないだろう。
俺は夢見の予言を生で聞いた。
夢見を渡せば死者は出ない。
答えはひとつだ。」
最年長者の智也の演説だった。
優馬が死ぬ。
兄貴が、、、。
可憐、すまない。
俺は、、、。
いつもの勇気だったら闘うことを選んだだろう。
最後まで智也に闘うことを進言していたのも事実だ。
しかし。
次から次へと現実になる予言が外れる事はないと、勇気でさえ思ってしまう事だった。
何より唯一の肉親である優馬が死ぬという予言は勇気を過去の恐怖に突き落としたのだった。
勇気の過去。
初めて人を殺した過去。
それは勇気の実の母であったのだった。
*
可憐は覚悟を決めていた。
あたしは夢見。
智也の演説も表情変えることなく聞いていた。
定めを今まで何回も夢で見てきたのだ。
王族。
なにせこの世界を統一する力だ。
ここの自然を気に入った父王は武力で制圧し、多くの犠牲者を出した。
その血を継ぐあたしを暖かく迎えてくれたこと。
感謝でいっぱいだった。
楽しかった。
そうみんなに伝えたかったが、あたしは言わなかった。
ただただ智也の演説を聞いていた。
まだ死んでいないということはまだ愛を知らないということ。
愛とは。
きっとここにいたら知って死んでいたのかな?
何故だか笑ってしまう。
別れが突然過ぎたのかな?
勇気。
悲しいことを告げてごめんなさい。
みんな苦しめてごめんなさい。
あたしはこの地を去るけれど、できればみんな幸せでいてほしい。
あたしは少し自分が変わり始めていることに戸惑いを覚えた。
自分の運命を恐れ悲観して生きてきた。
だけど。
愛を知らずに死んでいった者たちもいるのだ。
愛を知って死んでいくのならあたしは幸せなんじゃないかと思った。
*
未来予知から3日後。
ついに王族達がやって来た。
大きな船が港に着き、たくさんの兵を連れて。
あたしはため息をつき、勇気と優馬に別れを告げた。
「いよいよね。
絶対攻撃をしないでね。」
「可憐。
本当にごめん。」
優馬があたしを抱きしめた。
「ううん。
あたしは平気。」
勇気は俯いて何も言わない。
楽しかった。
あたしは何度も言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。
「さよなら。
もう会うことはないわ。
この村は大丈夫。
あたしは去るけれど、きっと大丈夫だから。」
あたしは1人港にに行った。
港は兵でいっぱいだった。
あたしは言った。
「あたしが夢見よ。
あなた方がやって来ることは分かっていました。
ここはもう降参しています。
攻撃を加える必要はありません。
あたしはあなた方に付いて行きます。」
すると奥から立派な軍服を着た男が出て来た。
「さすが夢見ですね。」
話し方は丁寧だが、どこか冷たい感じのする男だった。
「さぁ、姫こちらに。」
あたしはお守りのように勇気から貰った髪止めを握り締めた。
早くこちらに。
「ええ、分かっています。」
あたしは男の言われるまま船に乗り込んだ。
「勇気、優馬、そしてみんなさよなら。
楽しかったよ。」
あたしは小さく呟いた。
*
「この村はだいぶ賑やかですね。」
船の中で笑顔を見せる男。
でも本音では笑ってはいない。
「ここには住まない方がいいわ。
狭い島だから。
軍事力で制圧しても兵たちが多く住むには狭い。
また民たちの反乱が起き、死ぬことになるわよ?」
「それは夢見ですか?
恐ろしい。」
男は冷ややかな笑みを浮かべる。
「夢見の力を悪用しようとすれば、必ず父と同じ末路を辿ることになる。
盛者必衰。
夢見はいいことばかり言うわけではありません。
あたしと一緒にいるということは未来を知るということ。
それだけです。」
「ほぅ。
分かりました。
自己紹介がまだでしたね。
私は千里と申します。
あなたの母方の弟、つまりあなたの叔父にあたります。」
「そう。」
あたしは気のない返事をした。
*
「あなたにはこれから王妃として国を治めてもらいます。
少し長旅になりますのでこちらで休んでください。」
あたしは千里と兵たちに部屋を案内された。
「出航は明日です。
では。」
王妃、、、。
形ばかりのものだろう。
実権を握るのはあたしの親族達だ。
冷徹な男。
あたしはまた夢見として利用される。
用意された部屋は城にいた頃を思い出すような殺風景なものだった。
あたしは勇気から貰った髪止めを握り締める。
夢見が怖い。
また多くの人々があたしの夢見によって犠牲になる。
勇気。
どうしているだろう。
さみしい。
心細い。
会いたい。
勇気から貰った髪止めを眺めながら涙を流すのだった。
*
いよいよ出発の時が来た。
勇気、、、楽しい時間をありがとう。
何故だか勇気の顔ばかりが浮かぶ。
あたしは眠かったけど寝ないようにした。
この地を離れるまでは、安全が確認されるまでは、夢を見る訳にはいかない。
変な夢を見てこの地を戦場にするわけにはいかない。
出航。
あまりに突然で、素直になれない自分を心から迎えてくれたこと一生忘れない。
コンコン。
ドアを叩く音が聞こえた。
「失礼します。」
千里だった。
「夢見で何か見ましたか?」
冷徹な微笑み。
「いいえ。
何も。」
あたしは素っ気なく答えた。
「これから忙しくなります。
良い夢を。」
それだけ言い残し千里はあたしの部屋を後にした。
もう平気かな。
少し、ほんの少し寝よう。
船は出航したし、村に被害が出ることはないだろう。
ただ少し寝るだけ。
しかし。
それは悲劇を生むことに繋がることにあたしは知りもしなかった。
民達は皆崩れた城の前にいた。
「この地は小さい島だ。
清らかな水。
豊かな自然。
それが気に入ったのか、
夢見である少女を連れいきなり戦場と化した。
抵抗むなしく大人達は奴隷として売られ、大きな城が建てられた。
過度な労働、乾きに飢え、俺達は耐えながら、徐々に力を磨き、やっとまた自由を手に入れた。
しかし。
夢見が予言をした。
また自由を奪われる。
どうする?
闘うか?
夢見を渡すか?
100人では到底敵わないだろう。
俺は夢見の予言を生で聞いた。
夢見を渡せば死者は出ない。
答えはひとつだ。」
最年長者の智也の演説だった。
優馬が死ぬ。
兄貴が、、、。
可憐、すまない。
俺は、、、。
いつもの勇気だったら闘うことを選んだだろう。
最後まで智也に闘うことを進言していたのも事実だ。
しかし。
次から次へと現実になる予言が外れる事はないと、勇気でさえ思ってしまう事だった。
何より唯一の肉親である優馬が死ぬという予言は勇気を過去の恐怖に突き落としたのだった。
勇気の過去。
初めて人を殺した過去。
それは勇気の実の母であったのだった。
*
可憐は覚悟を決めていた。
あたしは夢見。
智也の演説も表情変えることなく聞いていた。
定めを今まで何回も夢で見てきたのだ。
王族。
なにせこの世界を統一する力だ。
ここの自然を気に入った父王は武力で制圧し、多くの犠牲者を出した。
その血を継ぐあたしを暖かく迎えてくれたこと。
感謝でいっぱいだった。
楽しかった。
そうみんなに伝えたかったが、あたしは言わなかった。
ただただ智也の演説を聞いていた。
まだ死んでいないということはまだ愛を知らないということ。
愛とは。
きっとここにいたら知って死んでいたのかな?
何故だか笑ってしまう。
別れが突然過ぎたのかな?
勇気。
悲しいことを告げてごめんなさい。
みんな苦しめてごめんなさい。
あたしはこの地を去るけれど、できればみんな幸せでいてほしい。
あたしは少し自分が変わり始めていることに戸惑いを覚えた。
自分の運命を恐れ悲観して生きてきた。
だけど。
愛を知らずに死んでいった者たちもいるのだ。
愛を知って死んでいくのならあたしは幸せなんじゃないかと思った。
*
未来予知から3日後。
ついに王族達がやって来た。
大きな船が港に着き、たくさんの兵を連れて。
あたしはため息をつき、勇気と優馬に別れを告げた。
「いよいよね。
絶対攻撃をしないでね。」
「可憐。
本当にごめん。」
優馬があたしを抱きしめた。
「ううん。
あたしは平気。」
勇気は俯いて何も言わない。
楽しかった。
あたしは何度も言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。
「さよなら。
もう会うことはないわ。
この村は大丈夫。
あたしは去るけれど、きっと大丈夫だから。」
あたしは1人港にに行った。
港は兵でいっぱいだった。
あたしは言った。
「あたしが夢見よ。
あなた方がやって来ることは分かっていました。
ここはもう降参しています。
攻撃を加える必要はありません。
あたしはあなた方に付いて行きます。」
すると奥から立派な軍服を着た男が出て来た。
「さすが夢見ですね。」
話し方は丁寧だが、どこか冷たい感じのする男だった。
「さぁ、姫こちらに。」
あたしはお守りのように勇気から貰った髪止めを握り締めた。
早くこちらに。
「ええ、分かっています。」
あたしは男の言われるまま船に乗り込んだ。
「勇気、優馬、そしてみんなさよなら。
楽しかったよ。」
あたしは小さく呟いた。
*
「この村はだいぶ賑やかですね。」
船の中で笑顔を見せる男。
でも本音では笑ってはいない。
「ここには住まない方がいいわ。
狭い島だから。
軍事力で制圧しても兵たちが多く住むには狭い。
また民たちの反乱が起き、死ぬことになるわよ?」
「それは夢見ですか?
恐ろしい。」
男は冷ややかな笑みを浮かべる。
「夢見の力を悪用しようとすれば、必ず父と同じ末路を辿ることになる。
盛者必衰。
夢見はいいことばかり言うわけではありません。
あたしと一緒にいるということは未来を知るということ。
それだけです。」
「ほぅ。
分かりました。
自己紹介がまだでしたね。
私は千里と申します。
あなたの母方の弟、つまりあなたの叔父にあたります。」
「そう。」
あたしは気のない返事をした。
*
「あなたにはこれから王妃として国を治めてもらいます。
少し長旅になりますのでこちらで休んでください。」
あたしは千里と兵たちに部屋を案内された。
「出航は明日です。
では。」
王妃、、、。
形ばかりのものだろう。
実権を握るのはあたしの親族達だ。
冷徹な男。
あたしはまた夢見として利用される。
用意された部屋は城にいた頃を思い出すような殺風景なものだった。
あたしは勇気から貰った髪止めを握り締める。
夢見が怖い。
また多くの人々があたしの夢見によって犠牲になる。
勇気。
どうしているだろう。
さみしい。
心細い。
会いたい。
勇気から貰った髪止めを眺めながら涙を流すのだった。
*
いよいよ出発の時が来た。
勇気、、、楽しい時間をありがとう。
何故だか勇気の顔ばかりが浮かぶ。
あたしは眠かったけど寝ないようにした。
この地を離れるまでは、安全が確認されるまでは、夢を見る訳にはいかない。
変な夢を見てこの地を戦場にするわけにはいかない。
出航。
あまりに突然で、素直になれない自分を心から迎えてくれたこと一生忘れない。
コンコン。
ドアを叩く音が聞こえた。
「失礼します。」
千里だった。
「夢見で何か見ましたか?」
冷徹な微笑み。
「いいえ。
何も。」
あたしは素っ気なく答えた。
「これから忙しくなります。
良い夢を。」
それだけ言い残し千里はあたしの部屋を後にした。
もう平気かな。
少し、ほんの少し寝よう。
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