蓮華の花言葉

kinmokusei

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「勇気は運命の申し子。
放っておけば王国は滅びる。」

あたしは慌てて飛び起きた。

お目覚めですか?
王妃。

千里が冷たい微笑みを浮かべていた。

「勇気とは誰です?」

あたしは慌てて

「知らない。」

そう言った。

「そうですか?
嘘はいけません。
出航は取り止めです。
村の者を皆殺しにします。」

「え?!

やめて!
勇気を殺さないで!」

そう言ってあたしははっとした。

「やはり村の住人ですか。
殺しますよ。
王国の危機ですからね。」

勇気は死なないと思う。
あたしは前に夢で見て勇気を天の申し子だと告げた。

しかし。

他の民たちは違う。
優馬が、死ぬ。

避けたはずだ。
何故?

もしかして、、、?

「千里様。
民たちが攻撃してきています!」

「ほぅ。
たった100人足らずだ。
皆殺しにしろ!」

やっぱり。
あれだけ言ったのに。

勇気達は死ぬ気だ。





「王妃はこの部屋にいて下さい。
すぐ済みます。」

「待って!
あたしが止めるから!
だから!」

あたしは泣き叫んだ。

「ダメで、、⁉︎」

あたしは千里に体当たりをして部屋から出た。

「王妃!
えぇい!
何をしている!
王妃を捕まえるのだ!」

「はっ!」

兵たちがやってくる。

あたしは逃げる。

どこをどう行けばいいのか分からない。
とりあえず逃げて、外に出よう。

「待て!」

待てと言われて待つ奴はいない。

階段がある。
ここ通った気がする。

階段を上ってドアを開けた。

あっ!

「勇気ー!!」

船の甲板に出た。

船から下を見ると、激しい闘いになっていた。

「勇気ー!!」

あたしは泣きながら叫んだ。

「王妃。
ダメですね。
さぁ、戻りましょう。」

千里の冷酷な微笑みは恐怖を感じた。

「い、いや、、、。
来ないで。」

千里はまっすぐあたしのところへ歩いてくる。

「勇気ー!」

あたしは逃げながら叫ぶ。

「さぁ、王妃。
こちらへ。」

「やっ!

勇気ー!!
助けてー!!」

千里はにやりと笑い、近づいて来る。

勇気。

怖い。





「ぐぁ!」

千里の後ろにいた兵士がいきなり呻き声をあげた。

「可憐!
やっと見つけた。」

「優馬!

優馬ぁ!!」

あたしは安堵して優馬の元に駆け出した。

「きさま!」

千里が顔を歪める。

優馬に5人がかりで兵士が襲いかかる。

優馬はそれを身を翻して倒す。

「あんまり女の子に見せるものじゃないんだけどな。」

あたしは優馬に抱き抱えられた。

「どうして?
死んじゃうよぉ。」

「俺はそんなにヤワじゃないよ。
さぁ、逃げるぞ。」

「うん。」

あたしは涙をぬぐって優馬と一緒に駆け出した。







「勇気は?
なんで攻めてきたの?
あたしの夢見は、、、。」

「俺が言ったんだ。
勇気があんなに落ち込むのは2回目だから。」

「2回?」

「ま、勇気にとってそれほど可憐は大切な存在だったってことだ。」

よく分からない。
でも。
少し嬉しいのは何故かな。
優馬も生きているし。

あたしは安堵からか楽観的すぎたのだ。

千里は追って来ない。

それをもっと深く考えればよかったのに。

「兄貴!
可憐!
こっちはあらかた片付いた。」

勇気!
あたしは勇気に抱きつく。

「早く。
あたしの夢見で優馬の未来を変える。」

「お、おう。

じゃあ兄貴行こう。」

「兄貴?」

するといきなり優馬が勇気に向かって斬りかかった。

「可憐、後ろへ!
兄貴!
どうしたんだよ。」

優馬には何の感情もないようだった。

千里が歩いてやってくる。

「おやおや。
久しぶりですねぇ。
あなたが勇気でしたか。」


「お前は、、、!?」

「私の能力は良く知っているはずでは?」

冷酷に笑う千里。

能力?

勇気と優馬が闘っている。

この光景は、夢と同じであった。





「またか!」

勇気は怒鳴る。

「またやったのか!」

また?
何?
何のこと?

あたしは訳が分からない。

「私の能力は念。
ある特定の人物を殺させることができるんですよ。
さっき優馬とやらに勇気でしたか、あなたを殺させるよう念をかけました。
殺すか殺されるかしないと念は解けませんよ?
知っているでしょう?
母殺しの勇気さん?」

え、、、?

母殺し?

「きさまぁ!!

叩き斬る!」

勇気は優馬を跳ね除け千里に斬りかかった。

すると。

⁉︎

え、、、?

「うっ、、、。」

「やれやれ。
私を守るようにも念をかけておいてよかった。」

「優馬‼︎」

「兄貴!」

あたしと勇気は倒れた優馬に駆け寄る。

「勇気、、、、うっ、、。」

「兄貴!
喋るな。
智也は?!」

「いい。
大丈夫だ。
夢見は当たるなぁ。」

「何言ってる!
やだよ、兄貴!」

「気にすんな。
母さんも俺もお前とは血が繋がっていない。」

「え、、、?」

「お前はもらわれてきた子だった。

だから、、、気に、、、す、、ん、、、な、、、。」

「兄貴!
兄貴!」

優馬は死んだ。

夢見は当たった。


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