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王の器
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「相馬?辛かったのは分かるよ?でもね、誰しもが悩みを抱えて生きているの。これはある大事な人の言葉よ?いじけても変わらない。前を向いて生きていくの。」
「、、、。」
「あたしも自分の死の運命で悩みいじけていたの。でもそんなのは甘えに過ぎないと今は思うわ。」
あたしはそう言ってしゃがみ込んでいる相馬の元を離れた。
悲観的になってもいいことなんかなかったな、、、。
相馬は今までを振り返る。
かけてみるか?
こっちには天の申し子が2人もいる。
いや天の申し子とか関係ない。
勇気を王にする。
そう。
勇気が王だったらきっといい国になる。
相馬の瞳に光がやどった。
雨がポツポツと降り出した。
島に船をつけいかりをおろす。
「よし!じゃあ俺ら牢屋に戻る。武器は取り上げか?」
さっきまでの勇気ではない。
この男、、、。
「勇気。俺はお前にかけてみようと思う。」
相馬の輝いた瞳。
「なんだ?いきなり。」
「俺はお前たちにかけると言ったんだ!今度こそ本当に。救ってくれ、いや俺たちでみんなをルテインから救おう!」
相馬の瞳に勇気が映る。
「覚悟あるのか?戦争だぞ?痛い思いが嫌なんじゃなかったのか?」
「俺は、、、もう怖がったりしない。勇気。お前たちを信じよう。」
勇気はその言葉を聞きニヤリと笑った。
*
「勝負はやってみないと分からない。でも最初から諦めていたら前進はない。勇気。今度こそ本当の仲間になってくれませんか?」
相馬はすまなそうに、でもはっきりと言った。
「そうこなくっちゃな。相馬はもう俺たちの仲間だよ。」
「疑わないんですか?一度裏切ったのに。」
「いちいち疑っていたら仲間なんてできねーよ。」
勇気、、、。
お前なら信じられる。
「ありがとうございます。」
「それより作戦考えよう。雨も強くなってきた。船の中に戻るぞ。」
勇気の言葉にみんなは船の中に戻った。
「嵐来たわね?あのままだったら死者が出ていたわ。夢見本当に当たるのね?」
メイ女王が言った。
「メイ女王もこの船に乗っていたのか?」
「ええ。会いに行くのは相馬にダメだと言われていたからよ?悪かったわ。」
エメラルドグリーンの髪をいじりながらメイ女王は相馬の方を見る。
「ルテインを今治めているのは誰なのかしら?」
「バトラーとエイリアです。コードネームだと思われますが、、、本名は分かりません。」
「そう。これからどうしましょう?」
メイ女王は勇気に視線を向ける。
「ラバースに行くしかないだろう。」
「でもそれじゃ相馬の裏切りがバレてしまわない?」
「そうか。どうすっかな?相馬はどう思う?」
「勇気に任せます!未来の王ですからね!」
勇気は笑った。
「ラバースの王子とルテインの王女で手を組みルテインを落とす!勇気は王の器がある!頑張って倒しましょう!」
*
「お?この前とは全く違うな?どういう気持ちの変化だ?」
そう言いながらも勇気は嬉しそうだ。
「私は勇気に王の器となるものを感じました。仲間を信じ、大切にしているところも魅力いや、それ以上の何かを見たのです。ただそれだけだけど、不思議と仲間になり、闘う勇気をもらえました。」
「私は初めて会った時から感じてましたわよ?」
メイ女王は微笑んだ。
「ただ相馬のことを考えると言い出せなかったの。」
うつむくメイ女王。
「仕方ありませんよ。あたしだって初めはわがままばかりだったし、ルテインの血のこと、自分の運命のこといろんなことを考えて大切な人を失ってしまった。」
「大切な人とは可憐の恋人ですか?」
相馬の言葉にあたしは首を横に振る。
「優馬という人。血は繋がってないけど勇気のお兄さん。」
「そうですか、、、。闘いは犠牲になってしまう人も出る。悲しいことです。」
「だからもう誰も死なせない!聖なる宝玉はいいの!咲歩様を助けてルテインを打つ。それだけでも大変なのに、、、あたしは大丈夫だから。」
「可憐。それは違います。可憐も仲間なんですよ?死なせる訳にはいきません!」
相馬は優しく微笑む。
「それにバトラー達は聖なる宝玉を既に手にしている可能性があります。」
「そうなのか?」
勇気が言った。
「青い宝石ですよね?見たような、、、。曖昧な記憶ですがね。ラバースを制圧して手に入れたのかもしれません。」
「よし!決まりだ!みんなでこれからの作戦を練ろう!」
勇気の一声にみんなは沸き立った。
*
「とりあえずラバースに行ってルテインを打つだけの兵力が必要だ。」
「でもそれじゃ相馬が、、、。」
あたしはルテインに酷い目にあった相馬が心配だった。
「私は平気ですよ。どうせルテインに先に行っても同じことだと思います。」
「ラバース王妃を救い出す!それからラバース兵達を味方につける。それでいいか?」
勇気の言葉。
いよいよ闘いになる。
「ラバースまでどれくらいだ?」
「今座標を合わせたのだが、ルテインより近い。半月ほどかな?」
みんな真剣な顔だ。
「ラバース兵を殺さないこと。ラバースはルテインのせいで疑い深くなっている。1人でも殺せば、味方につけることは難しい。」
相馬の言葉だった。
「まず、捕まろう。そして仲間になってくれるように頼む。信じてもらえるまで待つ。」
「でも勇気?ラバースにルテイン兵がいたら、、、そうしたらどうするの?」
勇気は笑って、
「俺たちは捕まるんだ。そして中から切り崩す。母さんを助けルテイン兵を倒す。その方法しかないだろ?」
そう言った。
勇気の瞳。
金色に輝く瞳には濁りがない。
無謀だと思われる作戦もうまくいくような気がする。
勇気には何かみんなを惹きつける魅力がある。
あたしは、、、。
あたしには何ができる?
天の申し子だと言われているが、自分に勇気ほどの人望を集めることはできないと思った。
何故あたし?
あたしは夢見。
だけど、、、。
あたしは勇気の存在に自分はかなわないと思った。
*
「勇気はすごいね。」
あたしは思わず言った。
「は?何が?」
勇気自身は気付いていない。
「みんながあの相馬までが仲間になった。勇気には魅力がある。あたしは、、、あたしにはそんなものない、、、。」
「可憐には可憐の良さがある。人は誰しもが良いところを持っているものだぜ?」
「そう、、、かな?」
あたしの良いところってどこだろう?
「可憐。自分を信じて突き進むしかない。」
外は大雨が降ってる。
「嵐を避けられたのも可憐の夢見のおかげだろ?」
そうだけど、、、。
あたしを変えたのは勇気だ。
魅力があるからみんな勇気を頼りにするんだ。
あたしの魅力、、、。
夢見だけ?
これから始まる闘いの中であたしは夢見だけしかできない。
歯がゆい思いだ。
考え込むあたしに、、、。
「可憐?可憐は魅力的な女だ。それじゃなきゃ俺は、、、」
可憐を愛したりはしなかっただろう。
最後の言葉を勇気は飲み込む。
「俺は何?」
勇気はそっぽ向いてあたしの顔を見ずに、、、。
「惚れてない。」
そう言った。
ほ、、、?
「もっと自信持て。後ろ向きだと魅力も半減するぞ?」
照れながら言った勇気。
あたしはドキってしてしまった。
勇気、、、。
なんだか不思議。
顔が熱い。
*
そこへ愛美さんがやって来た。
「勇気、ちょっと話があるの。」
聞かれてたかな?
さっきの話。
婚約者としては面白くないだろう。
「あたし、行くね。夢見頑張るよ。あたしはそれくらいしかできないから。」
愛美さんは勇気に何の話があるんだろう。
少し気になりはしたが、あたしは邪魔のようだったから自分から離れた。
雨が横なぐりに降っている。
船もかなり揺れていて、、、。
あたしはヨタヨタ歩いていた。
「可憐!大丈夫か?」
気付けば勇気があたしを支えていて、愛美さんはいつも強気な発言をするけど今回は寂しそうな顔をしていた。
何だか悪いことをしているようでいたたまれない。
愛美さんの表情が、勇気の気持ちが離れていると感じているようであたしは、、、。
「大丈夫だから!」
つい強い口調で言ってしまった。
愛美さんの表情は固く、勇気にはそれが分からないのだろうか?
勇気が愛美さんを放っておいてあたしを気遣うのは愛美さんにとってどれだけ辛いか。
「可憐?どうした?何故怒る?」
鈍い勇気。
愛美さんは固い表情であたしを見る。
これじゃあたしが悪いことをしているみたいじゃないか。
ただ愛美さんと話してあげてと言うのも愛美さんを傷つけるようで言えない。
「とにかくあたしは夢見があるから。」
あたしはおぼつかない足取りで歩き出す。
勇気の気持ち。
愛美さんの気持ち。
あたしの、、、気持ち。
どうして神様はこんな関係にさせたの?
「勇気、、、可憐のこと好きでしょ?」
ついに愛美さんは言ったのだった。
*
「可憐もいて!」
聞こえないフリをして立ち去ろうとするあたしの背中から愛美さんの声が震えているのを感じ取る。
嵐で揺れる船内。
こんな修羅場にあたしはいなければならないのか?
あたしはいたたまれなくて愛美さんと勇気に背中を向けたまま硬直する。
勇気の表情を見るのも愛美さんの表情を見るのも怖い。
「どうなの?っていうかバレバレよ。勇気は可憐ばかりを見てる。あたしから別れを切り出すのを待つつもり?それじゃああんまりにも卑怯じゃない?」
愛美さんの震えた声。
勇気を好きなんだろう。
きっと愛美さんが勇気に求める言葉は、、、。
そんなことない。
その言葉だろう。
しかし勇気は、、、。
「あぁ。俺は可憐が、、、。」
「やだ!!あたし別れないわよ!」
愛美さんの震えた声が響く。
「愛美、、、ごめん。俺は可憐が好きなんだ。惚れた。愛美にはわるいが、俺は可憐を愛してる。」
背中越しに聞こえる勇気の声。
外は嵐。
でも船内は静まりかえっている。
「愛?ふざけないで!散々浮気して!愛なんて分かるの?あたしは勇気のなんだったのよ!!」
静まりかえっている船内に悲鳴のような愛美さんの声が響く。
「可憐も!!背中向けてないでこっち見なさいよ!」
あたしは足がすくんで動けない。
それは愛美さんに失礼だっただろうけど、あたしは2人の表情を見るのが怖くて背中を向けたままだ。
「ふざけんな!!」
愛美さんはつかつかとあたしに近づきあたしに平手打ちをかました。
愛美さんの表情を見れず下を向く。
「可憐は関係ないだろ!」
勇気があたしにつっかかる愛美さんを止める。
「あんたなんか、、、死んじゃえばいい!!」
「愛美!!いい加減にしろ!!俺が勝手に惚れてるだけなんだ!可憐は悪くない!!」
愛美さんの怒りはそれでもおさまらないようだった。
*
「へーそう。そんなに可憐が大事なの?あたしのことはそうは思わないわけ?」
愛美さんは絞り出すように言葉を続ける。
「可憐と会う前の勇気はもっと女を手玉にとる感じで、はっきり言って今の勇気はカッコよくないわね。いいわよ!そんなに好きなら勝手にすれば?男なんて他にもいるから!いつみも言ってた。優馬を取られたってね。でもね。優馬は可憐のせいで死んだの。本当に疫病神ね。」
人は嫉妬に狂うとどうしようもないけど、確かにあたしは疫病神かもしれない。
愛美さんの言葉には棘があったけど、陰で言うことをしないだけいいと思った。
あたしは愛美さんの顔をまともに見ようという気がしたのははっきりと思ったことを言ってくれたからだろう。
あたしは愛美さんを見つめる。
「愛美さん。あたしは優馬の死を呼んだ疫病神かもしれない。それは否定できない。でもね。これからはみんなを守る。その中には愛美さんも入っている。それだけは分かって欲しい。」
凛とした物腰。
罵倒されても動じない瞳。
愛美さんはあたしのそんな態度に少し動揺を見せた。
まだまだ罵倒される覚悟だったが、愛美さんの言葉は違うものだった。
「なるほどね。可憐。申し子というのは魅力的なのかしらね。」
「愛美、、、?」
勇気は愛美さんの諦めたような言動に面を食らったようだった。
「可憐、勇気。もういいわ。あたしの負け。あたしも少し女を磨くわ。」
愛美さんは勇気と別れると付け加えた。
「ふられたんじゃないわよ?あたしが振ったんだからね。」
愛美さんは辛そうに笑った。
*
「愛美、、、本当に悪い。」
勇気にはそれしかかける言葉がなかったのだろう。
しかし愛美さんには辛すぎる事実。
「惨めになるからもう聞きたくない!さよなら!!」
愛美さんはそう言うと走ってその場から去っていった。
あたしと勇気の間に重い沈黙が流れる。
「俺、カッコ悪いな、、、。」
勇気はそう呟いたけど、あたしは答えなかった。
なんて言っていいかわからなかったのだ。
「可憐?」
あたしは黙っている。
「呆れたか?」
あたしは首を横に振る。
「俺、今までいい加減に生きてきた。愛美がいながら浮気もしたし。それがカッコいいのか?正直俺ってなんなんだろうな?笑える。本気で惚れるってのは余裕がなくなるからな。今の俺はカッコ悪いな、、、。」
かける言葉が見つからない。
「でも俺はカッコ悪くても可憐が好きだからな!」
無理して笑う勇気があたしの瞳に映る。
恋か、、、。
勇気は決してカッコ悪くなんてない。
あたしだって恋をしたら嫉妬とかして情けない姿を見せてしまうだろう。
恋に臆病なあたし。
勇気に惹かれている自分が、死のカウントダウンだと思うとどうしても先に進めないのだ。
勇気がカッコ悪いなら、あたしはもっとカッコ悪いのだ。
そもそもカッコいいとか悪いとか考えてる時点であたしは最低なのだ。
全力で勇気を想う愛美さんが少し羨ましい。
相手のことを自分よりも大切に想うこと。
あたしももう少し女を磨かなければならないな。
無理に笑う勇気の前であたしはそう思った。
*
「いつみ。あたし勇気と別れた。」
「えっ!?」
愛美といつみの会話である。
「可憐は不思議な女の子ね。あの澄んだ瞳に見つめられると何も言えない。さすが王族って感じ。勇気にも同じようなところがあるわ。そこに惹かれたんだけどね。あたしの負け。」
愛美はいつみに何を言いたいのか?
「浮気とかがカッコいいとか思っていたけど、違うみたい。本気で愛するっていうのがカッコいいのかも。」
嵐は過ぎ去ろうとしていた。
でも雨はまだ降っている。
「2人で話したいっていうから甲板に来たけどそんな話?」
雨に濡れながら片手にワイン。
「まー聞いてよ。可憐はひ弱に見えるけど芯の強さがある。優馬もそこに惹かれたのよ。いつみも浮気なんかやめて本気の恋をした方がいいわ。女を磨くのよ。」
「だいぶ可憐の肩を持つじゃない?」
悪戯っぽい笑みを浮かべていつみは言った。
「別に。ただ嫌いになれなかった。可憐を。」
「そ。」
だいぶ小雨になりワインを飲みながら愛美といつみは甲板の上で黄昏ていた。
「おい。勇気?どうした?」
気まずい沈黙が続いて勇気とあたしがいるところに智也がやって来た。
「可憐も。なんか空気重たいんだけど。あはは。」
ノー天気な智也にあたしと勇気はペースを乱される。
「なんでもない。」
勇気は苦笑いを浮かべて言った。
「そうか?ならいいんだけど。」
「嵐通り過ぎたか?」
「もう少しかな?」
智也のおかげで重たい雰囲気が晴れた。
「目指すはラバースだ!しっかりしろよ!2人にかかってるんだから。」
そう言うと智也は豪快に笑った。
*
「快晴だな!」
甲板の上。
空を見上げ勇気が伸びをする。
「もう出航できますが、どうしますか?」
相馬が勇気に言った。
「ラバースに行く。相馬は俺が全力で守る。」
「俺たちがだろ?」
智也だった。
「みんな仲間だ!可憐、夢見は大丈夫だったか?何か予言はないか?」
智也の問いに対してあたしは、、、。
「不吉なものは見ていないわ。」
そう答えた。
「だってさ!勇気!」
「よし!ラバースへ向けて出航だ!!」
勇気はいつの間にかみんなをまとめている。
リテール兵もデュアル兵もサイナ、ボレル、ミッド兵たちも勇気を輝いた瞳で見ている。
未来を命をかけている瞳だ。
「ラバース兵たちは絶対殺すな!信頼されるには時間がかかるだろう。でも信頼されるにはこっちも誠意ある対応しなければならない!」
「はい!!」
勇気の言葉にみんなが団結し、同調した。
「兵たちはみな勇気を信頼しているのね?不思議な男だわ。勇気は。」
メイ女王は目を細めて勇気を見る。
「可憐?あなたも何か言いたいことがあるのではないかしら?」
一斉にみんなの視線があたしに集まる。
「あたしは、、、ルテインの血を引く者です!でも全力でみんなを守ります!一緒にルテインを撃ちましょう。決して死なせない!あたしは、、、あたしはみんなが幸せな王国を作りたい!!」
何故だろう?
何か熱いものが込み上げてくる。
勇気。
そしてみんなが願う王国。
そんな王国が近い未来見られるように、あたしは願ってやまなかった。
*
「まずはいつまでも牢屋に入れておけないのでみなさんの部屋割りを決めたいと思うのですが、、、。」
相馬がそう言うと、、、。
「いや、牢屋でいい。俺らは反乱をしたとはいえルテインの者だ。ラバース兵を味方につけるにはルテインを抑えたことを伝える方がいいだろう。」
勇気はそう答えた。
「そういうわけにはいきません!仲間なのですから。それに勇気たちが仲間だと後から気付かれればラバース兵の信頼を損ねることになるでしょう?」
「あー。そうかもしれないな。でも、、、。」
「遠慮はいりません。船室は余ってますから。」
「悪いな、、、。」
こうしてあたしたちは牢屋を出ることになった。
海は穏やかで、天気も良く船旅は順調に進んでいく。
あたしは1人で甲板の上にいた。
風が気持ちいい。
すると、、、。
「可憐。一緒にワインでもどう?」
愛美さんだった。
いつみさんもいる。
「お酒は、、、ちょっと、、、。」
「大丈夫よ。少しくらい。」
愛美さんは昨日のことは忘れてしまったかのように優しく言った。
謝るのも変だし。
勇気の名を出して雰囲気が悪くなるのもやだったので、ワインのグラスを受け取った。
「可憐、ごめんなさいね。優馬と勇気が可憐を気にかけてばかりで、、、ちょっとヤキモチ焼いてたの。」
あたしはいつみさんの言葉にワインを吹き出した。
「大丈夫?」
いつみさんに悪気はない。
優しくハンカチを差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「敬語やめて。仲間じゃない。」
「は、、、いや、うん。ありがとう。」
いつみさんの瞳は驚くほど澄んでいて、あたしは優馬が選んだ訳が分かったようなきがした。
もちろん愛美さんも。
女の子の友達、、、。
あたしにはいないんだよな。
友達になってくれないかな、、、。
あたしはそんなことを考えていた。
*
「あ、あの、、、。」
あたしはしどろもどろになりながら言葉を探す。
「勇気や優馬の事はもういいのよ?あたしたちの魅力が可憐に及ばなかっただけのことだから。」
愛美さんは笑った。
ちょっと無理している感じだけどもう割り切っている様子だ。
「そう、、、じゃなくて、、、。友達になって欲しいなって、、、。」
あたしがそう言うと、愛美さんもいつみさんもキョトンとした顔をして、、、いきなり笑い出した。
「可憐ってけっこう気が強いよね?あたしの家に住む話が出た時かなり言われたから。友達はいらないのかと思ってた。」
「あ、あれは、、、。ごめんなさい!」
そういえばあたし、愛美さんにかなりキツイこと言った気がする。
「まーいいわよ。過ぎたこと色々言ったって仕方ないもの。」
愛美さんって優しいんだなぁ。
そんなことぼんやり考えた。
「いつみと愛美って呼んで!今日から友達よ?」
いつみさんが言った。
「うん!!」
あたしは喜んでうなづいた。
「隼人、勝?何やってんだ?」
「へ?」
甲板の上、あたしたちの様子を見ていた隼人と勝。
そこへ勇気がやって来た。
「いや、なんか気になって、、、。」
「いつみに愛美に可憐か。笑ってるようだから大丈夫じゃね?」
「女って怖いっすからねー。勇気さん大丈夫っすか?」
勝が言う。
「あー大丈夫だよ。愛美とは別れたし」
「は?」
笑って言う勇気に全然大丈夫じゃないと思う隼人と勝だった。
*
「どうした?顔引きつってるぞ?」
「いや、だって、、、なぁ?」
隼人は勝に同意を求める。
「へ?あ、いや、そうっすねぇ。」
勝は返答に困る。
「愛美もいつみもあぁ見えてサバサバしてるから心配ない。」
勇気の言葉に隼人と勝は顔を見合わせる。
そしてまたあたしたちの方を見る。
(仲良く笑い合っている。)
「だ、大丈夫そうっすね。」
そう言いながら頭をかく勝。
しかし、隼人は複雑だった。
優馬さんが死んで、いやその前からいつみと関係がある自分。
勇気さんはきっと気づいている。
いつみのことが好きとかいう感情よりも先にそういう行為に対して興味がありやったことだ。
つまりは自分は最低なのだ。
でも勇気さんだって、、、。
そう思っていた。
しかしながら今は勇気さんは可憐だけにしているみたいだ。
美咲から聞いたことだけど。
(可憐ってそんな魅力あるのか?)
でも手を出したら勇気さんに殺されそうな気がして、、、。
「とにかくルテインを撃つまでは軽はずみな行動はとるなよ。」
勇気さんは笑って言ったが、隼人にはその言葉が重く感じたのだった。
若さだけが売りの俺たち。
20歳前から酒を飲み、辛い生活から団結してルテイン王を撃った。
相馬さんの裏切りも無事解決して、今まさに嵐の前の静けさ状態。
可憐が勇気さんを変えたのか?
優馬さんはもう死んでしまっている。
自分の浅はかな行為をきっと気づいていつみから可憐に心が動いたとしたら、優馬さんに謝れなかったことが悔やまれる。
隼人は1人悩むのだった。
*
「勇気さん。ちょっと話できますか?」
隼人は意を決して言おうと決めた。
いつみと関係があることを。
優馬さんがどう思っていたかを。
「勝、ちょっと外してくれ。」
「あ、あぁ。」
隼人に言われ勝は船内に戻っていく。
その背中を見つめ、隼人は暗い表情だ。
「どうした?俺に話があるんだろ?」
勇気にはだいたいの話の内容は分かっているようだ。
「はい、気づいていたとは思いますが、、、俺、、、いつみと関係があって、、、。優馬さんに本当に申し訳ないっていうか、、、。優馬さんが可憐に心が動いたのは俺のせいなんです。すみません。」
「そんなことか、、、。兄貴が可憐を好きになったのはそのせいじゃないと思う。本気で愛する人が見つかれば分かることだ。俺も散々遊んだし、隼人のことは責められないよ。」
勇気は苦笑いを浮かべて言った。
「本気、、、ですか、、、?」
隼人は勇気の瞳を見る。
昔より澄んでいて、でも少し切なそうな瞳だった。
「俺も実際のところよく分からねーんだよ。ただ遊んでるのが馬鹿らしくなってな。隼人にもそういう時が絶対来るさ。焦るなよ。」
「そうですか。分かりました。」
隼人はなんだか気分が晴れない。
怒られた方がよっぽどましだとも思うくらいだ。
優馬さんが生きていたら何と言うだろうか?
「兄貴は可憐が好きだった。だからいつみのことでは怒らなかったと思うぜ?」
隼人の心を見透かすように勇気は言った。
その言葉に隼人は瞳を輝かせる。
「そうでしょうか?」
「いつみも悪いんだよ。俺たちは若い。まだまだこれからだ。本気で愛するのもな。気にすんな!」
その言葉でようやく隼人の心の重みが少し軽くなったのだった。
*
甲板の上でワインを飲みながらとりとめもないことを話す。
いつみも愛美も何事もなかったように笑っていて。
でも勇気や優馬の話はでなかった。
気を使っているのか、それとも話したくないのか、、、。
「可憐はごく身近な未来が分かるのよね?」
「うん。」
「そっかぁ。自分の未来かー。でもさ、変えることもできるってすごいことよね。」
「うん。でも、、、あたしは夢見ははっきり言って嫌なの。変えることができる未来と変えることができない未来。父上や母上はあたしの夢見を悪用して死んだわ。変えられない夢見だった。そういう夢は嫌。もちろんみんなを苦しめた父上や母上が悪いんだけど、あたしの夢見ばかりを頼りにして悲劇が起こるのが怖い。」
あたしはうつむきながら言った。
「この力は神からのもの。みんなが悪用すればまた天の裁きが下るわ。」
愛美は瞳を細め、いつみは髪をかきあげる。
「あたしたちは悪用なんてしないわよ。きっといい国にする。可憐はあたしたちを信用できないの?」
「そんなことない。でも悪用しようとする人たちが出てくる気がして、、、とっても怖いの。」
愛美はため息をついた。
「聖なる宝玉で可憐の死の呪いが解ければ、夢見の力はなくなるんでしょう?大丈夫!絶対手に入れてみせるから!」
「でも、、、」
「あーもう!大丈夫だって!心配しないで!」
いつみも笑って言った。
聖なる宝玉、、、。
手に入れられるだろうか?
いつみと愛美の優しさが少し痛かった。
「、、、。」
「あたしも自分の死の運命で悩みいじけていたの。でもそんなのは甘えに過ぎないと今は思うわ。」
あたしはそう言ってしゃがみ込んでいる相馬の元を離れた。
悲観的になってもいいことなんかなかったな、、、。
相馬は今までを振り返る。
かけてみるか?
こっちには天の申し子が2人もいる。
いや天の申し子とか関係ない。
勇気を王にする。
そう。
勇気が王だったらきっといい国になる。
相馬の瞳に光がやどった。
雨がポツポツと降り出した。
島に船をつけいかりをおろす。
「よし!じゃあ俺ら牢屋に戻る。武器は取り上げか?」
さっきまでの勇気ではない。
この男、、、。
「勇気。俺はお前にかけてみようと思う。」
相馬の輝いた瞳。
「なんだ?いきなり。」
「俺はお前たちにかけると言ったんだ!今度こそ本当に。救ってくれ、いや俺たちでみんなをルテインから救おう!」
相馬の瞳に勇気が映る。
「覚悟あるのか?戦争だぞ?痛い思いが嫌なんじゃなかったのか?」
「俺は、、、もう怖がったりしない。勇気。お前たちを信じよう。」
勇気はその言葉を聞きニヤリと笑った。
*
「勝負はやってみないと分からない。でも最初から諦めていたら前進はない。勇気。今度こそ本当の仲間になってくれませんか?」
相馬はすまなそうに、でもはっきりと言った。
「そうこなくっちゃな。相馬はもう俺たちの仲間だよ。」
「疑わないんですか?一度裏切ったのに。」
「いちいち疑っていたら仲間なんてできねーよ。」
勇気、、、。
お前なら信じられる。
「ありがとうございます。」
「それより作戦考えよう。雨も強くなってきた。船の中に戻るぞ。」
勇気の言葉にみんなは船の中に戻った。
「嵐来たわね?あのままだったら死者が出ていたわ。夢見本当に当たるのね?」
メイ女王が言った。
「メイ女王もこの船に乗っていたのか?」
「ええ。会いに行くのは相馬にダメだと言われていたからよ?悪かったわ。」
エメラルドグリーンの髪をいじりながらメイ女王は相馬の方を見る。
「ルテインを今治めているのは誰なのかしら?」
「バトラーとエイリアです。コードネームだと思われますが、、、本名は分かりません。」
「そう。これからどうしましょう?」
メイ女王は勇気に視線を向ける。
「ラバースに行くしかないだろう。」
「でもそれじゃ相馬の裏切りがバレてしまわない?」
「そうか。どうすっかな?相馬はどう思う?」
「勇気に任せます!未来の王ですからね!」
勇気は笑った。
「ラバースの王子とルテインの王女で手を組みルテインを落とす!勇気は王の器がある!頑張って倒しましょう!」
*
「お?この前とは全く違うな?どういう気持ちの変化だ?」
そう言いながらも勇気は嬉しそうだ。
「私は勇気に王の器となるものを感じました。仲間を信じ、大切にしているところも魅力いや、それ以上の何かを見たのです。ただそれだけだけど、不思議と仲間になり、闘う勇気をもらえました。」
「私は初めて会った時から感じてましたわよ?」
メイ女王は微笑んだ。
「ただ相馬のことを考えると言い出せなかったの。」
うつむくメイ女王。
「仕方ありませんよ。あたしだって初めはわがままばかりだったし、ルテインの血のこと、自分の運命のこといろんなことを考えて大切な人を失ってしまった。」
「大切な人とは可憐の恋人ですか?」
相馬の言葉にあたしは首を横に振る。
「優馬という人。血は繋がってないけど勇気のお兄さん。」
「そうですか、、、。闘いは犠牲になってしまう人も出る。悲しいことです。」
「だからもう誰も死なせない!聖なる宝玉はいいの!咲歩様を助けてルテインを打つ。それだけでも大変なのに、、、あたしは大丈夫だから。」
「可憐。それは違います。可憐も仲間なんですよ?死なせる訳にはいきません!」
相馬は優しく微笑む。
「それにバトラー達は聖なる宝玉を既に手にしている可能性があります。」
「そうなのか?」
勇気が言った。
「青い宝石ですよね?見たような、、、。曖昧な記憶ですがね。ラバースを制圧して手に入れたのかもしれません。」
「よし!決まりだ!みんなでこれからの作戦を練ろう!」
勇気の一声にみんなは沸き立った。
*
「とりあえずラバースに行ってルテインを打つだけの兵力が必要だ。」
「でもそれじゃ相馬が、、、。」
あたしはルテインに酷い目にあった相馬が心配だった。
「私は平気ですよ。どうせルテインに先に行っても同じことだと思います。」
「ラバース王妃を救い出す!それからラバース兵達を味方につける。それでいいか?」
勇気の言葉。
いよいよ闘いになる。
「ラバースまでどれくらいだ?」
「今座標を合わせたのだが、ルテインより近い。半月ほどかな?」
みんな真剣な顔だ。
「ラバース兵を殺さないこと。ラバースはルテインのせいで疑い深くなっている。1人でも殺せば、味方につけることは難しい。」
相馬の言葉だった。
「まず、捕まろう。そして仲間になってくれるように頼む。信じてもらえるまで待つ。」
「でも勇気?ラバースにルテイン兵がいたら、、、そうしたらどうするの?」
勇気は笑って、
「俺たちは捕まるんだ。そして中から切り崩す。母さんを助けルテイン兵を倒す。その方法しかないだろ?」
そう言った。
勇気の瞳。
金色に輝く瞳には濁りがない。
無謀だと思われる作戦もうまくいくような気がする。
勇気には何かみんなを惹きつける魅力がある。
あたしは、、、。
あたしには何ができる?
天の申し子だと言われているが、自分に勇気ほどの人望を集めることはできないと思った。
何故あたし?
あたしは夢見。
だけど、、、。
あたしは勇気の存在に自分はかなわないと思った。
*
「勇気はすごいね。」
あたしは思わず言った。
「は?何が?」
勇気自身は気付いていない。
「みんながあの相馬までが仲間になった。勇気には魅力がある。あたしは、、、あたしにはそんなものない、、、。」
「可憐には可憐の良さがある。人は誰しもが良いところを持っているものだぜ?」
「そう、、、かな?」
あたしの良いところってどこだろう?
「可憐。自分を信じて突き進むしかない。」
外は大雨が降ってる。
「嵐を避けられたのも可憐の夢見のおかげだろ?」
そうだけど、、、。
あたしを変えたのは勇気だ。
魅力があるからみんな勇気を頼りにするんだ。
あたしの魅力、、、。
夢見だけ?
これから始まる闘いの中であたしは夢見だけしかできない。
歯がゆい思いだ。
考え込むあたしに、、、。
「可憐?可憐は魅力的な女だ。それじゃなきゃ俺は、、、」
可憐を愛したりはしなかっただろう。
最後の言葉を勇気は飲み込む。
「俺は何?」
勇気はそっぽ向いてあたしの顔を見ずに、、、。
「惚れてない。」
そう言った。
ほ、、、?
「もっと自信持て。後ろ向きだと魅力も半減するぞ?」
照れながら言った勇気。
あたしはドキってしてしまった。
勇気、、、。
なんだか不思議。
顔が熱い。
*
そこへ愛美さんがやって来た。
「勇気、ちょっと話があるの。」
聞かれてたかな?
さっきの話。
婚約者としては面白くないだろう。
「あたし、行くね。夢見頑張るよ。あたしはそれくらいしかできないから。」
愛美さんは勇気に何の話があるんだろう。
少し気になりはしたが、あたしは邪魔のようだったから自分から離れた。
雨が横なぐりに降っている。
船もかなり揺れていて、、、。
あたしはヨタヨタ歩いていた。
「可憐!大丈夫か?」
気付けば勇気があたしを支えていて、愛美さんはいつも強気な発言をするけど今回は寂しそうな顔をしていた。
何だか悪いことをしているようでいたたまれない。
愛美さんの表情が、勇気の気持ちが離れていると感じているようであたしは、、、。
「大丈夫だから!」
つい強い口調で言ってしまった。
愛美さんの表情は固く、勇気にはそれが分からないのだろうか?
勇気が愛美さんを放っておいてあたしを気遣うのは愛美さんにとってどれだけ辛いか。
「可憐?どうした?何故怒る?」
鈍い勇気。
愛美さんは固い表情であたしを見る。
これじゃあたしが悪いことをしているみたいじゃないか。
ただ愛美さんと話してあげてと言うのも愛美さんを傷つけるようで言えない。
「とにかくあたしは夢見があるから。」
あたしはおぼつかない足取りで歩き出す。
勇気の気持ち。
愛美さんの気持ち。
あたしの、、、気持ち。
どうして神様はこんな関係にさせたの?
「勇気、、、可憐のこと好きでしょ?」
ついに愛美さんは言ったのだった。
*
「可憐もいて!」
聞こえないフリをして立ち去ろうとするあたしの背中から愛美さんの声が震えているのを感じ取る。
嵐で揺れる船内。
こんな修羅場にあたしはいなければならないのか?
あたしはいたたまれなくて愛美さんと勇気に背中を向けたまま硬直する。
勇気の表情を見るのも愛美さんの表情を見るのも怖い。
「どうなの?っていうかバレバレよ。勇気は可憐ばかりを見てる。あたしから別れを切り出すのを待つつもり?それじゃああんまりにも卑怯じゃない?」
愛美さんの震えた声。
勇気を好きなんだろう。
きっと愛美さんが勇気に求める言葉は、、、。
そんなことない。
その言葉だろう。
しかし勇気は、、、。
「あぁ。俺は可憐が、、、。」
「やだ!!あたし別れないわよ!」
愛美さんの震えた声が響く。
「愛美、、、ごめん。俺は可憐が好きなんだ。惚れた。愛美にはわるいが、俺は可憐を愛してる。」
背中越しに聞こえる勇気の声。
外は嵐。
でも船内は静まりかえっている。
「愛?ふざけないで!散々浮気して!愛なんて分かるの?あたしは勇気のなんだったのよ!!」
静まりかえっている船内に悲鳴のような愛美さんの声が響く。
「可憐も!!背中向けてないでこっち見なさいよ!」
あたしは足がすくんで動けない。
それは愛美さんに失礼だっただろうけど、あたしは2人の表情を見るのが怖くて背中を向けたままだ。
「ふざけんな!!」
愛美さんはつかつかとあたしに近づきあたしに平手打ちをかました。
愛美さんの表情を見れず下を向く。
「可憐は関係ないだろ!」
勇気があたしにつっかかる愛美さんを止める。
「あんたなんか、、、死んじゃえばいい!!」
「愛美!!いい加減にしろ!!俺が勝手に惚れてるだけなんだ!可憐は悪くない!!」
愛美さんの怒りはそれでもおさまらないようだった。
*
「へーそう。そんなに可憐が大事なの?あたしのことはそうは思わないわけ?」
愛美さんは絞り出すように言葉を続ける。
「可憐と会う前の勇気はもっと女を手玉にとる感じで、はっきり言って今の勇気はカッコよくないわね。いいわよ!そんなに好きなら勝手にすれば?男なんて他にもいるから!いつみも言ってた。優馬を取られたってね。でもね。優馬は可憐のせいで死んだの。本当に疫病神ね。」
人は嫉妬に狂うとどうしようもないけど、確かにあたしは疫病神かもしれない。
愛美さんの言葉には棘があったけど、陰で言うことをしないだけいいと思った。
あたしは愛美さんの顔をまともに見ようという気がしたのははっきりと思ったことを言ってくれたからだろう。
あたしは愛美さんを見つめる。
「愛美さん。あたしは優馬の死を呼んだ疫病神かもしれない。それは否定できない。でもね。これからはみんなを守る。その中には愛美さんも入っている。それだけは分かって欲しい。」
凛とした物腰。
罵倒されても動じない瞳。
愛美さんはあたしのそんな態度に少し動揺を見せた。
まだまだ罵倒される覚悟だったが、愛美さんの言葉は違うものだった。
「なるほどね。可憐。申し子というのは魅力的なのかしらね。」
「愛美、、、?」
勇気は愛美さんの諦めたような言動に面を食らったようだった。
「可憐、勇気。もういいわ。あたしの負け。あたしも少し女を磨くわ。」
愛美さんは勇気と別れると付け加えた。
「ふられたんじゃないわよ?あたしが振ったんだからね。」
愛美さんは辛そうに笑った。
*
「愛美、、、本当に悪い。」
勇気にはそれしかかける言葉がなかったのだろう。
しかし愛美さんには辛すぎる事実。
「惨めになるからもう聞きたくない!さよなら!!」
愛美さんはそう言うと走ってその場から去っていった。
あたしと勇気の間に重い沈黙が流れる。
「俺、カッコ悪いな、、、。」
勇気はそう呟いたけど、あたしは答えなかった。
なんて言っていいかわからなかったのだ。
「可憐?」
あたしは黙っている。
「呆れたか?」
あたしは首を横に振る。
「俺、今までいい加減に生きてきた。愛美がいながら浮気もしたし。それがカッコいいのか?正直俺ってなんなんだろうな?笑える。本気で惚れるってのは余裕がなくなるからな。今の俺はカッコ悪いな、、、。」
かける言葉が見つからない。
「でも俺はカッコ悪くても可憐が好きだからな!」
無理して笑う勇気があたしの瞳に映る。
恋か、、、。
勇気は決してカッコ悪くなんてない。
あたしだって恋をしたら嫉妬とかして情けない姿を見せてしまうだろう。
恋に臆病なあたし。
勇気に惹かれている自分が、死のカウントダウンだと思うとどうしても先に進めないのだ。
勇気がカッコ悪いなら、あたしはもっとカッコ悪いのだ。
そもそもカッコいいとか悪いとか考えてる時点であたしは最低なのだ。
全力で勇気を想う愛美さんが少し羨ましい。
相手のことを自分よりも大切に想うこと。
あたしももう少し女を磨かなければならないな。
無理に笑う勇気の前であたしはそう思った。
*
「いつみ。あたし勇気と別れた。」
「えっ!?」
愛美といつみの会話である。
「可憐は不思議な女の子ね。あの澄んだ瞳に見つめられると何も言えない。さすが王族って感じ。勇気にも同じようなところがあるわ。そこに惹かれたんだけどね。あたしの負け。」
愛美はいつみに何を言いたいのか?
「浮気とかがカッコいいとか思っていたけど、違うみたい。本気で愛するっていうのがカッコいいのかも。」
嵐は過ぎ去ろうとしていた。
でも雨はまだ降っている。
「2人で話したいっていうから甲板に来たけどそんな話?」
雨に濡れながら片手にワイン。
「まー聞いてよ。可憐はひ弱に見えるけど芯の強さがある。優馬もそこに惹かれたのよ。いつみも浮気なんかやめて本気の恋をした方がいいわ。女を磨くのよ。」
「だいぶ可憐の肩を持つじゃない?」
悪戯っぽい笑みを浮かべていつみは言った。
「別に。ただ嫌いになれなかった。可憐を。」
「そ。」
だいぶ小雨になりワインを飲みながら愛美といつみは甲板の上で黄昏ていた。
「おい。勇気?どうした?」
気まずい沈黙が続いて勇気とあたしがいるところに智也がやって来た。
「可憐も。なんか空気重たいんだけど。あはは。」
ノー天気な智也にあたしと勇気はペースを乱される。
「なんでもない。」
勇気は苦笑いを浮かべて言った。
「そうか?ならいいんだけど。」
「嵐通り過ぎたか?」
「もう少しかな?」
智也のおかげで重たい雰囲気が晴れた。
「目指すはラバースだ!しっかりしろよ!2人にかかってるんだから。」
そう言うと智也は豪快に笑った。
*
「快晴だな!」
甲板の上。
空を見上げ勇気が伸びをする。
「もう出航できますが、どうしますか?」
相馬が勇気に言った。
「ラバースに行く。相馬は俺が全力で守る。」
「俺たちがだろ?」
智也だった。
「みんな仲間だ!可憐、夢見は大丈夫だったか?何か予言はないか?」
智也の問いに対してあたしは、、、。
「不吉なものは見ていないわ。」
そう答えた。
「だってさ!勇気!」
「よし!ラバースへ向けて出航だ!!」
勇気はいつの間にかみんなをまとめている。
リテール兵もデュアル兵もサイナ、ボレル、ミッド兵たちも勇気を輝いた瞳で見ている。
未来を命をかけている瞳だ。
「ラバース兵たちは絶対殺すな!信頼されるには時間がかかるだろう。でも信頼されるにはこっちも誠意ある対応しなければならない!」
「はい!!」
勇気の言葉にみんなが団結し、同調した。
「兵たちはみな勇気を信頼しているのね?不思議な男だわ。勇気は。」
メイ女王は目を細めて勇気を見る。
「可憐?あなたも何か言いたいことがあるのではないかしら?」
一斉にみんなの視線があたしに集まる。
「あたしは、、、ルテインの血を引く者です!でも全力でみんなを守ります!一緒にルテインを撃ちましょう。決して死なせない!あたしは、、、あたしはみんなが幸せな王国を作りたい!!」
何故だろう?
何か熱いものが込み上げてくる。
勇気。
そしてみんなが願う王国。
そんな王国が近い未来見られるように、あたしは願ってやまなかった。
*
「まずはいつまでも牢屋に入れておけないのでみなさんの部屋割りを決めたいと思うのですが、、、。」
相馬がそう言うと、、、。
「いや、牢屋でいい。俺らは反乱をしたとはいえルテインの者だ。ラバース兵を味方につけるにはルテインを抑えたことを伝える方がいいだろう。」
勇気はそう答えた。
「そういうわけにはいきません!仲間なのですから。それに勇気たちが仲間だと後から気付かれればラバース兵の信頼を損ねることになるでしょう?」
「あー。そうかもしれないな。でも、、、。」
「遠慮はいりません。船室は余ってますから。」
「悪いな、、、。」
こうしてあたしたちは牢屋を出ることになった。
海は穏やかで、天気も良く船旅は順調に進んでいく。
あたしは1人で甲板の上にいた。
風が気持ちいい。
すると、、、。
「可憐。一緒にワインでもどう?」
愛美さんだった。
いつみさんもいる。
「お酒は、、、ちょっと、、、。」
「大丈夫よ。少しくらい。」
愛美さんは昨日のことは忘れてしまったかのように優しく言った。
謝るのも変だし。
勇気の名を出して雰囲気が悪くなるのもやだったので、ワインのグラスを受け取った。
「可憐、ごめんなさいね。優馬と勇気が可憐を気にかけてばかりで、、、ちょっとヤキモチ焼いてたの。」
あたしはいつみさんの言葉にワインを吹き出した。
「大丈夫?」
いつみさんに悪気はない。
優しくハンカチを差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「敬語やめて。仲間じゃない。」
「は、、、いや、うん。ありがとう。」
いつみさんの瞳は驚くほど澄んでいて、あたしは優馬が選んだ訳が分かったようなきがした。
もちろん愛美さんも。
女の子の友達、、、。
あたしにはいないんだよな。
友達になってくれないかな、、、。
あたしはそんなことを考えていた。
*
「あ、あの、、、。」
あたしはしどろもどろになりながら言葉を探す。
「勇気や優馬の事はもういいのよ?あたしたちの魅力が可憐に及ばなかっただけのことだから。」
愛美さんは笑った。
ちょっと無理している感じだけどもう割り切っている様子だ。
「そう、、、じゃなくて、、、。友達になって欲しいなって、、、。」
あたしがそう言うと、愛美さんもいつみさんもキョトンとした顔をして、、、いきなり笑い出した。
「可憐ってけっこう気が強いよね?あたしの家に住む話が出た時かなり言われたから。友達はいらないのかと思ってた。」
「あ、あれは、、、。ごめんなさい!」
そういえばあたし、愛美さんにかなりキツイこと言った気がする。
「まーいいわよ。過ぎたこと色々言ったって仕方ないもの。」
愛美さんって優しいんだなぁ。
そんなことぼんやり考えた。
「いつみと愛美って呼んで!今日から友達よ?」
いつみさんが言った。
「うん!!」
あたしは喜んでうなづいた。
「隼人、勝?何やってんだ?」
「へ?」
甲板の上、あたしたちの様子を見ていた隼人と勝。
そこへ勇気がやって来た。
「いや、なんか気になって、、、。」
「いつみに愛美に可憐か。笑ってるようだから大丈夫じゃね?」
「女って怖いっすからねー。勇気さん大丈夫っすか?」
勝が言う。
「あー大丈夫だよ。愛美とは別れたし」
「は?」
笑って言う勇気に全然大丈夫じゃないと思う隼人と勝だった。
*
「どうした?顔引きつってるぞ?」
「いや、だって、、、なぁ?」
隼人は勝に同意を求める。
「へ?あ、いや、そうっすねぇ。」
勝は返答に困る。
「愛美もいつみもあぁ見えてサバサバしてるから心配ない。」
勇気の言葉に隼人と勝は顔を見合わせる。
そしてまたあたしたちの方を見る。
(仲良く笑い合っている。)
「だ、大丈夫そうっすね。」
そう言いながら頭をかく勝。
しかし、隼人は複雑だった。
優馬さんが死んで、いやその前からいつみと関係がある自分。
勇気さんはきっと気づいている。
いつみのことが好きとかいう感情よりも先にそういう行為に対して興味がありやったことだ。
つまりは自分は最低なのだ。
でも勇気さんだって、、、。
そう思っていた。
しかしながら今は勇気さんは可憐だけにしているみたいだ。
美咲から聞いたことだけど。
(可憐ってそんな魅力あるのか?)
でも手を出したら勇気さんに殺されそうな気がして、、、。
「とにかくルテインを撃つまでは軽はずみな行動はとるなよ。」
勇気さんは笑って言ったが、隼人にはその言葉が重く感じたのだった。
若さだけが売りの俺たち。
20歳前から酒を飲み、辛い生活から団結してルテイン王を撃った。
相馬さんの裏切りも無事解決して、今まさに嵐の前の静けさ状態。
可憐が勇気さんを変えたのか?
優馬さんはもう死んでしまっている。
自分の浅はかな行為をきっと気づいていつみから可憐に心が動いたとしたら、優馬さんに謝れなかったことが悔やまれる。
隼人は1人悩むのだった。
*
「勇気さん。ちょっと話できますか?」
隼人は意を決して言おうと決めた。
いつみと関係があることを。
優馬さんがどう思っていたかを。
「勝、ちょっと外してくれ。」
「あ、あぁ。」
隼人に言われ勝は船内に戻っていく。
その背中を見つめ、隼人は暗い表情だ。
「どうした?俺に話があるんだろ?」
勇気にはだいたいの話の内容は分かっているようだ。
「はい、気づいていたとは思いますが、、、俺、、、いつみと関係があって、、、。優馬さんに本当に申し訳ないっていうか、、、。優馬さんが可憐に心が動いたのは俺のせいなんです。すみません。」
「そんなことか、、、。兄貴が可憐を好きになったのはそのせいじゃないと思う。本気で愛する人が見つかれば分かることだ。俺も散々遊んだし、隼人のことは責められないよ。」
勇気は苦笑いを浮かべて言った。
「本気、、、ですか、、、?」
隼人は勇気の瞳を見る。
昔より澄んでいて、でも少し切なそうな瞳だった。
「俺も実際のところよく分からねーんだよ。ただ遊んでるのが馬鹿らしくなってな。隼人にもそういう時が絶対来るさ。焦るなよ。」
「そうですか。分かりました。」
隼人はなんだか気分が晴れない。
怒られた方がよっぽどましだとも思うくらいだ。
優馬さんが生きていたら何と言うだろうか?
「兄貴は可憐が好きだった。だからいつみのことでは怒らなかったと思うぜ?」
隼人の心を見透かすように勇気は言った。
その言葉に隼人は瞳を輝かせる。
「そうでしょうか?」
「いつみも悪いんだよ。俺たちは若い。まだまだこれからだ。本気で愛するのもな。気にすんな!」
その言葉でようやく隼人の心の重みが少し軽くなったのだった。
*
甲板の上でワインを飲みながらとりとめもないことを話す。
いつみも愛美も何事もなかったように笑っていて。
でも勇気や優馬の話はでなかった。
気を使っているのか、それとも話したくないのか、、、。
「可憐はごく身近な未来が分かるのよね?」
「うん。」
「そっかぁ。自分の未来かー。でもさ、変えることもできるってすごいことよね。」
「うん。でも、、、あたしは夢見ははっきり言って嫌なの。変えることができる未来と変えることができない未来。父上や母上はあたしの夢見を悪用して死んだわ。変えられない夢見だった。そういう夢は嫌。もちろんみんなを苦しめた父上や母上が悪いんだけど、あたしの夢見ばかりを頼りにして悲劇が起こるのが怖い。」
あたしはうつむきながら言った。
「この力は神からのもの。みんなが悪用すればまた天の裁きが下るわ。」
愛美は瞳を細め、いつみは髪をかきあげる。
「あたしたちは悪用なんてしないわよ。きっといい国にする。可憐はあたしたちを信用できないの?」
「そんなことない。でも悪用しようとする人たちが出てくる気がして、、、とっても怖いの。」
愛美はため息をついた。
「聖なる宝玉で可憐の死の呪いが解ければ、夢見の力はなくなるんでしょう?大丈夫!絶対手に入れてみせるから!」
「でも、、、」
「あーもう!大丈夫だって!心配しないで!」
いつみも笑って言った。
聖なる宝玉、、、。
手に入れられるだろうか?
いつみと愛美の優しさが少し痛かった。
0
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