『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

文字の大きさ
59 / 75
第三章

第三章17 〈カミングアウト〉

しおりを挟む
 
「よーし、これで買い忘れなしと。準備も万全だな」

 ダンジョンに潜るための、食料や日用品、俺の冬服に、タロがダンジョンに行くならどうしても欲しいと譲らなかったサファリハットを購入して、目的のダンジョンへと向かう。

 ダンジョンは帝都からタロの脚で、およそ三時間ほどの場所にある大きな山の麓にあるとの情報だ。
 大臣から貰った地図を頼りに進む。

 俺たちがダンジョンに突入したら、大臣の手配で常に外に連絡班や医療班が待機してくれるらしい。
 至れり尽くせりだが、それだけ皇帝が本気という表れだろう。



「ここか……」

「大きい洞窟ね~……」

「リリル、本当に待ってなくて良かったのか?」

「しつこいわね~。行くって何度も言ってるでしょ!? 一人で留守番するくらいなら、最初からエンドレスサマーで待ってるわよ!」

「そうか……そうだよな」

「そうよ」

 リリルは頑として譲らない。
 タロもカナもお手上げといった表情だ。

「じゃあ行くぞ」

「ゴーゴーだぞ。オイラにしっかりとついてくるんだぞ」

 サファリハットの顎紐を調整しながらタロが言う。
 しかしよくこの世界にもサファリハットがあったもんだと俺は思った。
 しかし、タロはなぜあんなにもサファリハットを欲しがったのか……また変な知識じゃないだろうな。


「ユウタ、ぼんやりしてると危険だぞ? 大丈夫か?」

「おう、すまんすまん」

「オラぁ、そこの人間二人! イチャついてないでちゃんとついて来い!!」

 タロがニヤニヤしながら冷やかしてきた。

「な!? べ、別にイチャついていたワケじゃないぞ!? ユウタがボンヤリしてたから注意を促してだな……」

 カナさん……アナタの普段の言動とのギャップはなんなのでしょうか?
 そんなにキョドると余計変に思われるよ?

「大丈夫大丈夫。タロの言ってる事なんて適当に聞き流しとけばいいんだから。早く追いつかないと、またなんか言われるよ?」

「そ、そうか」

 俺とカナは足早にタロを追いかける。


 しかしこの洞窟は広いな、タロのオリジナルサイズでも十分戦闘が出来る広さだ。
 そりゃドラゴンがダンジョンマスターやってるくらいなんだから、ドラゴンが通れる規模なのは理解出来るけど……広過ぎない?
 高速道路なんかにあるトンネルよりも随分と大きく見える。
 もしかしでドラゴン並みに大きい魔物ばっかり出てきたりしないだろうな。


「テレレレッレレーレッレ テレレレッレレ」

 オイ、タロ。
 お前はそのメロディをどこで覚えたんだよ……。
 その冒険番組でよく聞くメロディをたまたま口ずさんだなんて言わせないぞ。

「タロ、その曲どこで覚えた?」

「今のってタロが適当に口ずさんでただけじゃないの!?」

「私も知らないメロディだったな」

 リリルとカナは知らないようだ。

「ん? 今のか? なんか子供の頃に聞いたような、教えてもらったような……あ、思い出した。子供の頃一緒に旅してた人間に教えて貰ったんだぞ」

「!!」

 突然のカミングアウトだ。

「だからアンタ人間の言葉話せるのね」

「高位のドラゴンなんかの魔物は人間の言葉を話すと聞くから、フェンリルのタロが話しているのも、私は違和感なく受け入れてたわ」

 まさかタロにそんな過去があったとは……。
 しかし一緒に旅していた人間か……もしかしたら日本から転生か転移してきた人なのかもな。
 それだったなら、タロの今までの偏った知識もうなずける。

「懐かしいなぁ。人間だからとうの昔に死んじゃってるだろうけど、今思えばその人はユウタに少し似てたかもな」

 先頭を歩くタロが、索敵をしながら昔を思い出して語る。
 死んでるだろうってことは、ずっと一緒に居たわけではないんだな。

「へえ? どんな所が?」

「その人もさ、本当に人間かと思うくらい強かったんだよ」

「ユウタ、無茶苦茶だもんね」

 神様にチート能力貰ってるからな。
 要望通りではなかったけど。

「まあ、ユウタみたいに何でも出来るって感じじゃなかったと思うけど、とにかく強かった。そもそもが子供のオイラが捕まってるところを助けてくれた恩人だしな」

「え!?」

「ほう……幼体とはいえフェンリルを……捕らえた者も、更にその者を倒した人間もただ者ではあるまい」

「アンタって、そんな過去があったのね」

「何に捕まったのかは覚えてないけどな。とにかく気付いたら助けられてたんだよ。で、オイラはその人間に興味が出て一緒に旅してたのさ」

「で、その時に色々教え込まれたと。冒険するならサファリハットは必需品だってか?」

「よく分かったな」

 間違いない。
 間違いなく日本から来た人間だな。
 そうか….俺以外にもこの世界に来てたのか……もしかしたらヤキメンやオコノヤキ、それにまだ見ぬ『らうめん』も転移なり転生なりしてきた日本人が、故郷の味を思って再現したのが始まりの食べ物なのかも知れないな。
 それに、過去だけじゃなくて、今現在、俺と同時期に来てる地球人もいるかもしれない。
 もし居るのなら会ってみたいな……。

 突然のタロのカミングアウトに日本を思い出し、少しだけ淋しくなった。

 そして第一階層は何事もなく、俺達は第二階層へと進んだ。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...