『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

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第三章

第三章18 〈アンデッド〉

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「そう言えばユウタ」

「なに?」

 第二階層に入って少し進んだ所でカナが話掛けてきた。

「ドランゴニアに来た目的って温泉よね?」

「そうだよ」

 カナは少し首を傾げてから、

「皇帝は私達の目的が転移石だと分かってるって言ってなかった?」

 カナの言葉に俺はユーリィ・ドランゴニア三世の言葉を思い出してみた。

 ーー「其方らが転移石目当てで、入国したのは分かっておる。コチラの条件さえ飲んでくれれば、発見した転移石は好きにするがよい」

 確かにこんな風に言ってたな。

 前に転移石が欲しいとは言ってたことあったけど、現実的じゃないって保留してたし、スパイを放ってるって言ってた割には情報が古いな。

 それともあれか?
 入国する奴のほとんどが転移石目当てだからカマかけられたのか?
 そりゃ転移石は欲しいけどね。

「これでスパイってのが、エンドレスサマー内部に居ないのだけは確定したな。皇帝が持ってる情報が古すぎるから」

「その確率は高いけど、連絡出来なかっただけの可能性もあるからな、決めつけは厳禁だぞ」

 俺がカナの言葉に頷くと同時にタロと俺の索敵に敵が引っかかる。

「ユウタ!」

「分かってる! カナはリリルと後方にいてくれ」

「私も戦う!」

「カナの戦闘技術は、正面からぶつかるより奇襲向きだろ? 正直この辺りの敵ならタロだけでも十分なくらいだからさ。後方でリリルを守ってやっててくれ」

「……分かった」

 カナが渋々と言った表情で俺の指示に従ってくれた。
 俺はそのままタロに合流する。

 どうやら敵は、ゲームなんかによく出てくる骨格標本が武器を持ったアンデットのようだ。
 仮にガイコツ剣士としておく。

「……アンデッド?」

 俺は火魔法でガイコツ剣士を蹴散らしながら疑問に思う。

「どうした?」

 タロも火魔法で応戦して、ガイコツ剣士を近づけないようにしている。

「……おかしくないか?」

 タロには俺の疑問が分からないようで、何が? と言った顔をしている。

「ここのダンジョンマスターはドラゴンなんだろ?」

 俺の言葉に、タロはやっと気付いたようだ。

「ダンジョンはマスターの特性が色濃く出るからな。ドラゴンがマスターなのにアンデッドが出てくるのは違和感があるぞ!」

「もちろんドラゴンがアンデッドを配置した可能性もあるんだけどな」

 迫り来るガイコツ剣士を倒しながら考えていた。


「しかし弱いわね~。これなら私でも倒せそう」

 そう言ったのは、カナの肩に乗っているリリルだ。

「確かに弱いな。弱点の火属性で攻めているとはいえ」

 アンデッドの弱点は火属性だというのは、日本でゲームのRPGなんかをやった事があれば誰でも知っているだろう。

「この手の敵は相手がビビった隙に攻撃するってのが常套手段だからな。ビビらなきゃ余裕だぞ」

 俺とタロで、襲ってきたガイコツ剣士は危なげなく倒す事が出来た。


「完勝完勝」

「私は、こんな化け物二人を暗殺しようとしていたのか……」

 ガイコツ剣士が、武器の届く距離に近づく前に殲滅されたのを見て、自分の戦った相手が化け物だったとカナは今更ながらに後悔していた。

「いやいや化け物って……」

「そうだぞ。カナの方がよっぽど強かったぞ」

 タロの言う通り、場所などのハンデはあったけど、カナの方が余裕で強い。


「サクサク進んでサクサク攻略するぞ!」

 そう言って立ち止まらずタロは進む。
 次に出てきた敵もガイコツ剣士と弓を持ったガイコツ、さらにはミイラ男みたいなのが混合部隊で出てきたが、ガイコツ弓兵を先に魔法で倒した後は火魔法で圧倒して、またしても俺たちの完勝だった。


「またアンデッドだったな」

「すえた臭いするから勘弁してほしいぞ」

「タロは嗅覚で索敵だもんな。キッツイな~」

 しかし、ここまでの道中でアンデッド以外の魔物が一切出ないのは、やはり不自然だ。
 ダンジョンマスターが、変わった趣味のあるドラゴンなのだとしたら、アンデッドしか配置していない確率もゼロではない。

 だけど、エンドレスサマーになる前のダンジョンを俺が攻略した時だって、守護者であるフェンリルのタロの眷属である狼の魔物が多く出てきていた。

 守護者とダンジョンマスターの違いはあれど、普通は自分の眷属を配置すると思うんだけどな~。


「一体も出て来ないのはな~。やっぱりおかしいよな~」

「確かに不自然だぞ。すえたニオイに邪魔されて判りづらいけど、確かにトカゲ系のニオイが微かにするんだぞ」

「凄いなタロは。私なんかはアンデッドが近くに来るまで洞窟内の埃っぽいニオイしかしないのに」

「えっへん」

 トカゲ系のニオイが残ってるって事は、やはり爬虫類系の魔物がいたってことなんだよな。
 急に魔物の配置を変えたのか、それとも……。


「皇帝や大臣は、どんな魔物が出るって言ってたっけ?」

「特に言って無かった気がするけど……」

 そうか……あの謁見の時点では、俺たちにわざわざ言う必要がない状態だったって事だ。
 ドラゴンがダンジョンマスターのダンジョンに攻略に向かう人間に、敵がアンデッド主体なのを教えないはずがない。
 つまりあの時点では、皇帝や大臣達はアンデッドが出てくるのを知らなかったんじゃないのか?
 だとすると……。

「先を急ごう。少しペースを早めるぞ」

 俺は嫌な予感がして、ダンジョンの攻略速度を上げていく事にした。
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