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第一章 フーバスタン帝国編
第6話 〈再会!!〉
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アッシュ・クロウ 21歳 男性
【S】〈戦士〉
【レベル】1
体力 ──E
力 ──D
耐久力──E
俊敏性──G
魔力 ──H
知力 ──SS
運 ──E
【スキル】みなぎる力、不屈の闘志、目覚める力
ランクはS級のままなのか!?
それになんなんだ、このステータスは!
レベルが1なのは分かるが、知力がSSなのは何故だ?
転職する際の引き継ぎ特典みたいなもんがあるのか?
だとしたら戦士に知力は、ほぼほぼ要らないから意味ないんですけど?
しかもスキルも何なのコレ?
【不屈の闘志】は分かるよ? 即死レベルの攻撃食らってもギリギリ耐えるスキルでしょ?
それに【みなぎる力】ってアレだろ?
魔力を変換して一時的に攻撃力を上げるスキルだろ!?
魔力Hで役に立つのか?
それに【目覚める力】って何だよ!?
初めて聞いたよ。
なんか俺の中で眠ってる力でもあるのか!?
ていうか名前! 名前変わっちゃってるけど、これはインティーナ様の配慮なのかな?
俺ほどの有名人がレベル1になってたら大騒ぎになっちゃうからね。
世界的なニュースになっちゃうよ。
イヤイヤ、一回落ち着け俺。
深呼吸だ、深呼吸をしろ。
ハーーー、スーーー、ハーーー、スーーー。
深呼吸は吐くことの方が肝心なんだぜ。
冷静になって考えてみると、レベルが1なのだからステータスが低いのも、スキルとのバランスが悪いのも仕方がない事ではないか?
しかも俺はわざわざ適性の低い戦士に転職したのだから。
それに受付のお姉さんも、転職して、冒険者ランクとレベルが釣り合わない人の対応が初めてじゃなかっただけかもしれないな。
転職自体は絶対不可能な事ではないのだから。
それにしても知力がSSで良かった。
もし知力が低かったら、この答えに辿り着けずパニックに陥っていたかもしれない。
ステータスは今さらどうしようも出来ない。
足りない部分は装備で補えばいい。
こうして俺は鍛冶職人が経営する武器屋に向かった。
「らっしゃい」
いかにも鍛冶職人の塩対応……鍛冶の腕と引き換えにサービス精神を何処かに無くしてしまったらしい。
だがそんな些末な事はどうでもいい。
俺に最高の武器を売ってくれ。
「戦士なんだが、打撃武器で軽めのオススメはある?」
「ああん? 剣や槍じゃなくて打撃武器限定か?」
「うむ。男だからな」
「オメェ……なかなか漢のロマンがわかってるじゃねえか」
「ほう……店主もコチラ側か?」
打撃武器好きな俺と店主は目を合わせずにニヤリと笑い合う。
「よし、待ってな」
そう言って店主は店の奥に入っていった。
暫くして戻ってくると、店主の手には一挺のハンマーを持っていた。
「星屑ハンマーだ。ウォーハンマーの一種だが、コイツでガツンと殴ると、殴られた相手が星を見る事からその名前が付いた。まあ只のミスリルのハンマーに毛が生えた程度の代物だが、名前からしてお前さんにピッタリだろう?」
────!?
「店主……気付いていたのか?」
「まぁな。俺は半年前のセレモニーでお前さん達四人を間近で見る事が出来たのよ」
あの場に店主が居たのか……こんなナリして案外ミーハーなんだな。
セレモニーとか絶対参加せずに鉄叩いてそうなのに。
「名前からして、お前さんに使われるべくして生まれた武器よ。まさか転職してるとは思わなかったが……なあ星屑の?」
「この事は内密にお願いします」
「わかっとる。俺も客商売を長くしとるんだ。客の情報を流したりはせんよ」
「店主……」
「その店主と言うのをやめんか。ここいらではスミスのオヤッサンで通っとるんだ。それより戦士になったんなら、防具もいるだろう? そのローブの上からでも着けられるミスリル製の軽いハーフメイルがあるんだ、それも持ってけ!」
「オヤッサン……何から何までありがとう」
「馬鹿やろう、金は貰うぞ?」
「もちろんです。金には困ってませんしね」
「ったく、救世の英雄様は言うことが違うね」
「はは。また武器変える時は絶対オヤッサンの店で変えるんでヨロシク!」
「期待せずに待っとくよ。毎度あり~」
支払いを済ませ店を出る。
こうして俺はスミスのオヤッサンの店で、憧れ続けた近接打撃武器の星屑ハンマーとミスリル製のハーフメイルを手に入れた。
新しく装備を手に入れると何でこんなにも気分が高揚するのだろう。
大通りの商店のガラスに映る自分を、何度も何度も見てしまう。
立ち止まり、一枚ガラスに映った自分を見て、マントの端を持って思わずカーテシーをしてしまう。
……男なのに俺は何をやっているんだ。
こんな事をしている所を、瓦版の記者にでも見られたら一大事だぞ。
号外が出てしまうレベルだ。
見出しは、【星屑の魔道士】クロウリー男爵、新装備に思わずご機嫌カーテシー!
と、こんな感じだろう。
ダメだ!
こんな見出しの瓦版が出てしまったら、俺は潔く自死を選ぶ。
そんな事より、せっかく武器も買ったんだから早速クエストを受けよう。
俺は冒険者ギルドへと急いだ。
ギルドに入り、クエストボードを見てみる。
ランク毎に実にさまざまな依頼がある。
採取クエストに討伐クエスト、護衛クエストに運搬クエスト、果てはパーティーメンバー募集の張り紙まである。
うーん……どれにしようかな?
S級冒険者の俺はどの依頼でも受けられるけど、レベルが1しかないから高難度クエストは避けた方が無難だろう。
出来れば強い冒険者とパーティーを組んでクエストを受注すると安全でレベルが上げやすいんだが……。
高レベル冒険者が低レベル冒険者とパーティーを組んで、高難度クエストをクリアしてレベル上げをする、いわゆるパワーレベリングというヤツだな。
クエストボードを隅から隅まで見渡して、いい条件の依頼がないか探す。
すると一つの依頼が目に止まった。
「なになに….」
『S級冒険者でパーティーを組んでくれる方募集します! 当方もS級冒険者ですので安全に高難度クエストをクリア出来ると思います! 興味のある方は受付まで』
ふむ……これは中々いいぞ。
俺はS級冒険者だが、今の状態はそこいらのE級冒険者以下だ。
メンバー募集をしている人がS級なら、クエストについて行くだけでレベル上げが出来そうだ。
俺はその張り紙をクエストボードから剥がすと、受付の職員に渡した。
「メンバー募集ですね。確認の為、冒険者カードをお願いします」
俺は冒険者カードを見せる。
「はいS級……と、問題ありませんね。依頼主に連絡しますので掛けてお待ち下さい」
俺はギルドに併設された食堂の椅子に座って待つ事にした。
すぐに受付の女性が来て10分ほどでギルドに依頼主が来るそうだ。
初顔合わせか……こんな緊張するものだったか?
ああ、そうか。
以前奴らとパーティーを組んだ時は、すでに強かったし、国の代表として集められたわけだから緊張する要素がなかったもんな。
「お待たせしました~」
来た!
声からして女だ。
振り返ると、そこにはなんとも懐かしい顔があった。
メンバー募集に応募した俺に声を掛けて来たのは、なんとかつての仲間、英雄の一人【聖女】アンナ・フランシェスカだった。
「ア、アンナ!?」
「嘘!? アッシュさん!? キャーー!」
お互い予期せぬ再会に、驚きを隠せない。
思わぬ再会に喜ぶと同時に、俺はマズイ事になったなと考えていた。
「アッシュさんは何故アンセムに?」
「いや……用事のついでにアンナに会いにフォルテッシモに行ったんだぜ? 入れ違いだったみたいだけど」
「そうなんですかー!? アッシュさんがわざわざ会いに来てくれてたなんて嬉しいな」
「あくまでも用事のついでな? それでまたしても用事のついでにミレーヌの顔を見に来たってわけ」
「わたしもミレーヌちゃんに会いに来たのに居ないんですもの~」
「それな。俺なんて二連続で空振りだぞ。それで? 何でアンセムでパーティー募集してんの?」
俺の問いにアンナが動揺した様に目を泳がせる。
「パーティー解散して冒険しなくなってから、どうも運動不足で……で、たまにはミレーヌちゃんとでもクエスト受注しようかな~なんて……」
「ふーん……まあ俺も似たようなものだけどな。……それよりアンナ雰囲気変わった!?」
「────!? そ、そんな事ないですよ! それより何かクエスト、クエスト受注しましょう!」
何処かアンナの様子がオカシイ気がするが、アンナはよくオドオドしてたし、こんなもんだった気もするから、気にせずパーティーを組んでクエストに挑戦する事にした。
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