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第2章
穢れた心
しおりを挟む思いがけない言葉だった。
一体どういう意味だろう?
「穢れている……って、どういうことですか?」
思わず聞き返していた。
「文字通りの意味だよ。僕の心は穢れている。だからこそ、僕の魔法は未熟なんだ」
「未熟? って、何言ってるんですか。まもりさんの魔法は、全然失敗したりしないじゃないですか」
私は反論した。
彼の魔法は完璧だった。
私のストラップを探してくれたときも、あの小さな男の子の人形を直したときも。
まもりさんのおかげでストラップは見つかったし、人形の腕も元通りになった。
けれどまもりさんはどこか暗い顔をしたまま、
「ごめんね。実は、僕は君に一つ嘘を吐いたんだ」
「嘘?」
どくん、と心臓が跳ねた。
まもりさんが嘘を吐いた?
いつ、何を?
思わず身構える私に、彼は寂しそうな目を向けて言った。
「前に僕は、魔法はタダじゃないと言ったね。魔法を使えばその分だけ、何かしらの代償があると。けれど本当は……魔法を使うときに、僕の心が『穢れて』さえいなければ、報いを受けることなんてないんだ」
「え……?」
心が穢れてさえいなければ、報いを受けることはない。
「どういう、ことですか? それってつまり……魔法がちゃんと成功すれば、報いを受けなくて済むってことですか?」
魔法の代償を受けなくて済む方法が、あるかもしれない。
今までまもりさんが魔法による報いを受けてきたのは、彼の言うように、彼の魔法が『未熟』だったから……なのか?
「そう。僕が報いを受けてしまうのは、それだけ僕の心が穢れていて未熟だからなんだよ」
『未熟』というのがどの程度のことをいうのかはわからない。
けれど、『穢れている』という言葉には、私は納得がいかなかった。
心が穢れている人というのは、自分のことばかり考えて、私利私欲のために他人を蔑ろにするような人のことではないだろうか。
「……何かの、間違いじゃないですか? まもりさんの心が穢れているだなんて、そんな風には思えません。だってまもりさんは、いつも自分のためじゃなくて、人のために魔法を使っているじゃないですか」
魔法を使う人の心が穢れていたら、その報いを受けてしまう――それが本当なら、なぜ、まもりさんは報いを受けてしまうのだろう?
彼は常に自分のことよりも、他人のことを優先する。
魔法を使うときだって、彼は自分のためではなく人のために尽くしているのだ。
そんな思いやりのある人の心が穢れているだなんて、私には到底思えない。
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