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14:あの日の記憶
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久しぶりに聴いた悠の声は、なんだか少しいつもと違う気がした。
でもそれより、自分の声が震えていないか、上擦っていないか。そんなことばかり気になってどうしようもない
何気ない会話の後に、一生分の勇気を振り絞るような気持ちで誘った最初で最後の“デート”
『俺に……会いたい?』だなんて、きっと悠にとっては軽い冗談
でも俺は、それにすべての想いを込めて返事をした。
会いたい
会いたいんだよ、いつだって。
一緒にいたいんだよーーー本当は、ずっと。
翌日
俺が約束の時間より30分も早く着いていたこと、悠は知らなかっただろ?
近くのカフェでずっと待ってたんだ
でも、きっと待たされると思っていたから……約束の時間より前に悠の姿を見つけた時、すごく驚いて、それ以上に嬉しかった。
太陽の下で見る悠は、クラブやベッドの上で見るいつもの悠と少し違ってーーーなんだかどうしようもなく緊張した。
きっとあの時、悠も少し緊張してたよね?
『会いたかった』と素直に告げた俺に、照れたお前のあの顔はきっと一生忘れない
早起きして作った弁当を、美味しそうに食べてくれてありがとう
“デート”だなんて言葉を否定しないでくれてありがとう
抱き締めて、名前を呼んでくれてありがとう
手首を握った俺の手をーーー受け入れてくれて、ありがとう
あの日観た映画、すごく面白かったな
全体的にメチャクチャでドタバタなコメディだったけど、登場人物はみんな自分に素直で愛に溢れていて恋に一生懸命だった。
望みのない恋でも
禁忌と言われる恋でも
誰にも祝われない恋だとしても
相手を好きだというその気持ちだけで、一直線にただ向かっていく姿が……眩しくて。
俺には絶対にできないことだから、なおさら光り輝いて見えたんだ
もし俺がこの映画の主人公のように我儘になれたら
自分の想いのままに突っ走ることができたとしたら
ずっと一緒にいられたり、するんだろうか
身体だけじゃなく心にも、触れることができるだろうか
そんなくだらないことを考えていたからーーー自分が泣いていることにも、それを悠に見られていたことにも気付かなくて
涙を拭われた時は心底びっくりしたんだよ
でも、その指は本当にいつも優しい
頰を包む手も、見つめる瞳も、宥めるように触れた唇も
悠、お前はいつも優しすぎるんだ
泣いた理由も聞かず、手を握ってくれたり
嫌だと言いながら、写真を撮ってくれたり
あぁ、あの日撮ったポラロイド写真は悪いけど捨てられない
これからもきっとずっと持っておくけど許してよ
でも、イツキから受け取ったかな
俺の身勝手な想いを込めたあの写真は、破って捨ててくれないか
お前の中に俺を残さないで
カケラ1つ残さず消し去ってほしいんだ
初めて出逢ったあの日のように、俺の中にだけ痛みとともに残ってくれればいい
本当は夜になる前にさよならをするつもりだったのに、結局流されて家に行ってしまう俺は……本当にどうしようもないね
でも当然のように俺の手を引く悠を、俺が拒めるわけないんだよ
一緒に夕飯の買い物をして
手を繋いで同じ道を歩いて
月明かりの下でキスをして
ゴハンを食べて、笑い合って、乾杯して
何度も何度も、キスをして
その手が
目が
唇が
悠のすべてが、愛おしかった。
抱かれるたびに愛されているような錯覚を起こす
そんなセックスがひどく心地良くて、ひどく痛い
どうせなら壊れるほど身勝手に抱いてくれればいいのにーーー悠はいつだって、優しい
意識を飛ばすほど激しくしても、抱き締めてくれる手はいつだって優しい
その優しさを解いて帰ることができなくて、最後だからと何度も自分に言い訳をして、初めて抱き締められたまま眠りについたあの日
目が覚めた時にまだお前の腕の中にいた俺は……初めて幸せの意味を知った気がした。
きっとこうして悠と抱き合って眠って、抱き締められたまま目覚めて、おはようと言い合える日々がーーー俺にとっての幸せなんだと思った。
でもそれは、お前の幸せとは違う
心から愛し合える人と、誰もに祝福される未来
温かい家庭を築いて、孤独なんか感じない未来
悠は、命を繋いでいくことができるから。
どうか、あるべき道で、あるべき人と幸せになってほしい
そんな想いでさよならを告げた俺に、少し動揺した悠
そうだよね。突然でごめん。勝手でごめん。
好きになって、愛してしまって、ごめんね
上手に始めることも、終わることもできなくて
ひと時の遊びとして想い出にすることもできなくて
巻き込んでしまったのは俺
勝手に一目惚れして、一夜だけという名目で悠を引き込んでしまったんだ
こんな不毛な関係を、想いを、悠は知らなくてよかったのに。
でも、それでも
最後のキスをした時、悠の唇と指先が震えていたことをーーー俺は嬉しく思ってしまったんだよ
こんな、最低な俺を許さないで
でも、すべて忘れて
『ばいばい、悠』
そう言った俺は、ちゃんと笑えていたかな
ドアを閉めた瞬間に堪えきれず流した涙を、お前は知らなくていい
この胸の痛みもなにもかも、すべて俺が持っていくから
悠はただ笑っていてほしい
幸せになってほしい
好きだから
愛してるから
ばいばい、悠ーーー
でもそれより、自分の声が震えていないか、上擦っていないか。そんなことばかり気になってどうしようもない
何気ない会話の後に、一生分の勇気を振り絞るような気持ちで誘った最初で最後の“デート”
『俺に……会いたい?』だなんて、きっと悠にとっては軽い冗談
でも俺は、それにすべての想いを込めて返事をした。
会いたい
会いたいんだよ、いつだって。
一緒にいたいんだよーーー本当は、ずっと。
翌日
俺が約束の時間より30分も早く着いていたこと、悠は知らなかっただろ?
近くのカフェでずっと待ってたんだ
でも、きっと待たされると思っていたから……約束の時間より前に悠の姿を見つけた時、すごく驚いて、それ以上に嬉しかった。
太陽の下で見る悠は、クラブやベッドの上で見るいつもの悠と少し違ってーーーなんだかどうしようもなく緊張した。
きっとあの時、悠も少し緊張してたよね?
『会いたかった』と素直に告げた俺に、照れたお前のあの顔はきっと一生忘れない
早起きして作った弁当を、美味しそうに食べてくれてありがとう
“デート”だなんて言葉を否定しないでくれてありがとう
抱き締めて、名前を呼んでくれてありがとう
手首を握った俺の手をーーー受け入れてくれて、ありがとう
あの日観た映画、すごく面白かったな
全体的にメチャクチャでドタバタなコメディだったけど、登場人物はみんな自分に素直で愛に溢れていて恋に一生懸命だった。
望みのない恋でも
禁忌と言われる恋でも
誰にも祝われない恋だとしても
相手を好きだというその気持ちだけで、一直線にただ向かっていく姿が……眩しくて。
俺には絶対にできないことだから、なおさら光り輝いて見えたんだ
もし俺がこの映画の主人公のように我儘になれたら
自分の想いのままに突っ走ることができたとしたら
ずっと一緒にいられたり、するんだろうか
身体だけじゃなく心にも、触れることができるだろうか
そんなくだらないことを考えていたからーーー自分が泣いていることにも、それを悠に見られていたことにも気付かなくて
涙を拭われた時は心底びっくりしたんだよ
でも、その指は本当にいつも優しい
頰を包む手も、見つめる瞳も、宥めるように触れた唇も
悠、お前はいつも優しすぎるんだ
泣いた理由も聞かず、手を握ってくれたり
嫌だと言いながら、写真を撮ってくれたり
あぁ、あの日撮ったポラロイド写真は悪いけど捨てられない
これからもきっとずっと持っておくけど許してよ
でも、イツキから受け取ったかな
俺の身勝手な想いを込めたあの写真は、破って捨ててくれないか
お前の中に俺を残さないで
カケラ1つ残さず消し去ってほしいんだ
初めて出逢ったあの日のように、俺の中にだけ痛みとともに残ってくれればいい
本当は夜になる前にさよならをするつもりだったのに、結局流されて家に行ってしまう俺は……本当にどうしようもないね
でも当然のように俺の手を引く悠を、俺が拒めるわけないんだよ
一緒に夕飯の買い物をして
手を繋いで同じ道を歩いて
月明かりの下でキスをして
ゴハンを食べて、笑い合って、乾杯して
何度も何度も、キスをして
その手が
目が
唇が
悠のすべてが、愛おしかった。
抱かれるたびに愛されているような錯覚を起こす
そんなセックスがひどく心地良くて、ひどく痛い
どうせなら壊れるほど身勝手に抱いてくれればいいのにーーー悠はいつだって、優しい
意識を飛ばすほど激しくしても、抱き締めてくれる手はいつだって優しい
その優しさを解いて帰ることができなくて、最後だからと何度も自分に言い訳をして、初めて抱き締められたまま眠りについたあの日
目が覚めた時にまだお前の腕の中にいた俺は……初めて幸せの意味を知った気がした。
きっとこうして悠と抱き合って眠って、抱き締められたまま目覚めて、おはようと言い合える日々がーーー俺にとっての幸せなんだと思った。
でもそれは、お前の幸せとは違う
心から愛し合える人と、誰もに祝福される未来
温かい家庭を築いて、孤独なんか感じない未来
悠は、命を繋いでいくことができるから。
どうか、あるべき道で、あるべき人と幸せになってほしい
そんな想いでさよならを告げた俺に、少し動揺した悠
そうだよね。突然でごめん。勝手でごめん。
好きになって、愛してしまって、ごめんね
上手に始めることも、終わることもできなくて
ひと時の遊びとして想い出にすることもできなくて
巻き込んでしまったのは俺
勝手に一目惚れして、一夜だけという名目で悠を引き込んでしまったんだ
こんな不毛な関係を、想いを、悠は知らなくてよかったのに。
でも、それでも
最後のキスをした時、悠の唇と指先が震えていたことをーーー俺は嬉しく思ってしまったんだよ
こんな、最低な俺を許さないで
でも、すべて忘れて
『ばいばい、悠』
そう言った俺は、ちゃんと笑えていたかな
ドアを閉めた瞬間に堪えきれず流した涙を、お前は知らなくていい
この胸の痛みもなにもかも、すべて俺が持っていくから
悠はただ笑っていてほしい
幸せになってほしい
好きだから
愛してるから
ばいばい、悠ーーー
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