恋をしたから終わりにしよう

夏目流羽

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なんでもない夜の話2

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湊人とのセックスの後は、そのまま飛んでしまいそうな意識を繋ぎ止めるために煙草をふかす。
何度繰り返しても……いや、繰り返すたびに快感が増していくようなセックスなんて初めてだ
それが不思議で、でも気持ち良くて
自分が“男”とのセックスにハマるなんて考えてもみなかった。

隣にはくったりとシーツに埋もれて眠っている湊人
泣いて喘いで俺に縋り付いて乱れる湊人は、疲れ果てるのかセックスの後いつも少し眠る。
でもそれは本当に少しの間で、ほんのわずかな刺激にも目を覚ましてしまうからーーーできるだけ音を立てずに眺めるようにしている
だって、ちょっと汗を拭ったり頰を撫でたりするだけで起きるんだ。いつも眠りが浅いのかな。
起きたらすぐにシャワーを浴びて帰ろうとするから、最近ではどれだけ起こさずにいられるかゲームのようになっている

静かな部屋でぼんやりと煙草をふかしながら湊人を眺めるーーーその時間が、なんとなく好きで。
まだ上気したままの頰や目尻に残る涙
汗に濡れた艶やかな髪に触れたい衝動を、じわりと押し込めているのに

「ん……」

紅い唇から微かな声が零れて綺麗な形の眉が少し寄った。

あぁ、起きる

触ってもいないのに、なんで


「……っ、悠……」
「うん」
「ごめん、また寝ちゃった」
「別にいいよ」
「シャワー、借りていい?」

ーーーダメって言ったら、どうするんだろう

なんて、言うわけないけど。

「いちいち聞かなくていいって」
「そういうわけにはいかないよ」

よいしょと上半身を起こしてから、ふとこちらを見た湊人が苦笑混じりに囁く

「煙草、やめなよ」

それもう何回聞いたかな

「やだ」
「身体に悪いよ」
「でも色々役に立つ」
「ふっ、なんの役に立つの」

眠気を覚ましたり、余計な言動を押し込めたり、口寂しさを紛らわしてくれる……なんて、くすくす笑っている湊人にはわからないだろうから言わない

「湊人は煙草嫌いだね。匂い?煙?」
「別に嫌いじゃないけど、悠の身体が心配なんだよ」

せめて、本数減らしたら?と俺のくわえた煙草を自然に取って灰皿に押し付けた指先
そのまま小さく笑ってベッドを降りようとするから、咄嗟に腕を掴んで引き寄せた。
しっとりと馴染む素肌の心地良さに目を細め、少し開いた唇を柔く食んだらーーーもう、止められない
深く、深く。溶け合うように絡ませる舌
もっともっと、このまま、ずっと

「は、ぁ……も、悠……」 
「ん、湊人、口開けて」
「だ、んぅ、ふ……っ」

繰り返すたびに快感が増していく感覚
それは、セックスだけじゃないみたいだ
唇を押し付けて、舌を掬って、吐息も唾液もなにもかも溶け合わせるような湊人とのキス
それはいつだって

「甘い……」
「はぁ……ん、なに……?」
「なんでこんなに甘いんだろう」

濡れ光るふっくらとした唇を舐めれば、やっぱり甘く感じる
砂糖っていうより、蜜って感じの甘さかな
“美味しい”よりも“クセになる”ような。

「煙草のせいじゃない?」
「煙草?」
「うん。喫煙者は非喫煙者とのキスを甘く感じるらしいよ」
「……へぇ」

でも、湊人以外とのキスで甘いと感じたことはないけど。多分、非喫煙者もいたはずだけど。
……まぁ、いいけど。

「じゃあ非喫煙者は喫煙者とのキスをどう感じるの?」
「うーん。苦い、かな」
「……そうなんだ」

それは、知らなかった
俺は湊人とのキスを甘く感じているのに、湊人にとっては“苦い”キスなんだ
それは、なんか、嫌だな……

「ふふっ、そんな顔しないでよ」
「……どんな顔」
「苦くても嫌いじゃないよ」
「…………」
「クセになる苦さ、かな」

だからもう少しだけキスしよう?

そう囁いた湊人がそっと唇を重ねてきたから、俺は目を瞑ってそれを受け入れた。
角度を変え何度も唇を食んで、舌を絡めては離しまた絡める
歯を食い込ませたくなるような柔らかい唇も
器用に動く熱い舌も、欲情を煽る吐息も
合間に見つめ合うその濡れた瞳や俺の肌をなぞる指先だってぜんぶぜんぶ、甘いのに

「湊人、やっぱり苦い?」
「……うん。苦い」
「……そう」
「苦いよ」

もう一度呟いた湊人の瞳から、ぽろりとこぼれた綺麗な雫
頰を伝うそれを啄ばんだ唇がじわりと熱をもつ
押し付けるように唇を合わせてから見つめれば、見つめ返す瞳が少し寂しげに揺れるから

いつか湊人も、甘く感じてくれればいいのに……なんて

くだらない想いをかき消すように頰を撫で、目尻をなぞり、艶やかな髪に指を絡めながらキスをした。

そんな、なんでもない夜の話ーーー
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