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黒猫バロンの悩み
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主である魔女ノエリアが物欲に負けて、契約に囚われて以来、使い魔のバロンも不本意なことに猫の姿を強いられている。
猫の姿で、お腹は膨れやすいから食にはあまり困らない。
あとは新たな視点から見る世界と言うのも、まぁ、悪くは無い。
ただ、どうしても耐え難いのはノエリアが完全にペット扱いをしてくることだ。
喉元を撫でられると、自然とゴロゴロと喉を鳴らしてしまう自分が憎い。そうされる度、自分が今は猫でしかない事実を突きつけられ、絶望を感じる。
猫のままでは、ノエリアとくっつくことは日常茶飯事でも全然色気のない戯れにしかならないからだ。
胸元に抱かれれば、当然柔らかい感触に包まれる訳だが、それだけだ。バロンはずっと生殺しされている気分なのだ。
おまけに、契約の表向きなものは皇太子との婚約である。バロンとしては、あの馬鹿な皇太子とノエリアを接触させたくないし、二人きりなんてもってのほか。
有難く、最近は皇太子が他の女に執心している為、少しは安心出来るが、気に食わないものは気に食わない。
なので、ノエリアが皇太子に会う時には絶対に付き添い、皇太子がバロンに触れようとすれば、その手を引っ掻いてやった。他意はない。後悔も一切ない。
おまけに、涙目で悲鳴を上げた皇太子を、バロンは尻尾で引っぱたいた。いい気味だ。ノエリアも横で笑いを堪えていた。
そんなわけで、バロンはずっと不機嫌な日々を送っていた訳だが、ようやくノエリアが契約を破棄しようと動き出したので、ほっとしている。まさか、このまま悪戯が楽しいからと契約に縛られるのを受け入れるつもりかと、ひやひやしていたので、バロンとしては安堵した。
バロンも協力できることはやると、覚悟していた。
まさか、ライラへの悪戯に猫としての役割を求められるとも知らず。
ある日の悪戯は、ノエリアの愛猫としてお茶会に一緒に行くが、無邪気な黒猫が皇太子から贈られたと自慢するライラのドレスを引っ掻いて台無しにするという筋書きである。
代わりのドレスは流行遅れのものしかなく、ライラが泣き出してしまうところに、皇太子が駆けつけ、バロンとその飼い主であるノエリアを罵った。
本来、バロンは猫ではないが、普通、猫にそこまで怒るか?というレベルで皇太子は怒鳴った。
イラッときたので、バロンは皇太子の頭の飛び乗り、セットされた髪をぐしゃぐしゃにしてやった。
更に怒りをヒートアップさせる皇太子に、侍従や令嬢達が恐る恐る仲裁の声を上げる。
そこに、ノエリアが煽りの一言。
「まぁ、皇太子殿下が猫に怒るだなんて、そんな器の小さいことをなさるわけないでしょう?」
「と、当然だ!これは猫に怒っているのではなく、破れやすいドレスを作った職人への怒りだからな」
アホだ。そして、餓鬼だ。周りの冷めた目線に気づいていないのは皇太子とライラだけだ。
帰った後、ノエリアは珍しく呆れた表情でバロンに語りかけた。
「もう、あれは計画にないわよ。急に皇太子に飛びかかるからびっくりしたじゃない」
「別に最終的には筋書き通りだろ。それに、ノエリアを侮辱する奴は万死に値する」
ふん、と鼻を鳴らしてバロンが腕を組む。その可愛い猫らしくない行動にノエリアが頬を緩める。
「仕方ない子だこと。最初に会った頃は小さくて素直で可愛かったんだけど。どうしてこうなっちゃったのかしらね」
「待て、何勝手な初対面を作り出しているんだ。俺は初対面から変わらんだろうが」
…………猫にはなっているが、それ以外は何も変わらないはずだ。
だが、変わったとすればそれはーー恐らく、主のノエリアの影響に違いない。
それはノエリアとの時間が長いという証拠とも思えて、バロンは珍しく笑った。
猫の姿で、お腹は膨れやすいから食にはあまり困らない。
あとは新たな視点から見る世界と言うのも、まぁ、悪くは無い。
ただ、どうしても耐え難いのはノエリアが完全にペット扱いをしてくることだ。
喉元を撫でられると、自然とゴロゴロと喉を鳴らしてしまう自分が憎い。そうされる度、自分が今は猫でしかない事実を突きつけられ、絶望を感じる。
猫のままでは、ノエリアとくっつくことは日常茶飯事でも全然色気のない戯れにしかならないからだ。
胸元に抱かれれば、当然柔らかい感触に包まれる訳だが、それだけだ。バロンはずっと生殺しされている気分なのだ。
おまけに、契約の表向きなものは皇太子との婚約である。バロンとしては、あの馬鹿な皇太子とノエリアを接触させたくないし、二人きりなんてもってのほか。
有難く、最近は皇太子が他の女に執心している為、少しは安心出来るが、気に食わないものは気に食わない。
なので、ノエリアが皇太子に会う時には絶対に付き添い、皇太子がバロンに触れようとすれば、その手を引っ掻いてやった。他意はない。後悔も一切ない。
おまけに、涙目で悲鳴を上げた皇太子を、バロンは尻尾で引っぱたいた。いい気味だ。ノエリアも横で笑いを堪えていた。
そんなわけで、バロンはずっと不機嫌な日々を送っていた訳だが、ようやくノエリアが契約を破棄しようと動き出したので、ほっとしている。まさか、このまま悪戯が楽しいからと契約に縛られるのを受け入れるつもりかと、ひやひやしていたので、バロンとしては安堵した。
バロンも協力できることはやると、覚悟していた。
まさか、ライラへの悪戯に猫としての役割を求められるとも知らず。
ある日の悪戯は、ノエリアの愛猫としてお茶会に一緒に行くが、無邪気な黒猫が皇太子から贈られたと自慢するライラのドレスを引っ掻いて台無しにするという筋書きである。
代わりのドレスは流行遅れのものしかなく、ライラが泣き出してしまうところに、皇太子が駆けつけ、バロンとその飼い主であるノエリアを罵った。
本来、バロンは猫ではないが、普通、猫にそこまで怒るか?というレベルで皇太子は怒鳴った。
イラッときたので、バロンは皇太子の頭の飛び乗り、セットされた髪をぐしゃぐしゃにしてやった。
更に怒りをヒートアップさせる皇太子に、侍従や令嬢達が恐る恐る仲裁の声を上げる。
そこに、ノエリアが煽りの一言。
「まぁ、皇太子殿下が猫に怒るだなんて、そんな器の小さいことをなさるわけないでしょう?」
「と、当然だ!これは猫に怒っているのではなく、破れやすいドレスを作った職人への怒りだからな」
アホだ。そして、餓鬼だ。周りの冷めた目線に気づいていないのは皇太子とライラだけだ。
帰った後、ノエリアは珍しく呆れた表情でバロンに語りかけた。
「もう、あれは計画にないわよ。急に皇太子に飛びかかるからびっくりしたじゃない」
「別に最終的には筋書き通りだろ。それに、ノエリアを侮辱する奴は万死に値する」
ふん、と鼻を鳴らしてバロンが腕を組む。その可愛い猫らしくない行動にノエリアが頬を緩める。
「仕方ない子だこと。最初に会った頃は小さくて素直で可愛かったんだけど。どうしてこうなっちゃったのかしらね」
「待て、何勝手な初対面を作り出しているんだ。俺は初対面から変わらんだろうが」
…………猫にはなっているが、それ以外は何も変わらないはずだ。
だが、変わったとすればそれはーー恐らく、主のノエリアの影響に違いない。
それはノエリアとの時間が長いという証拠とも思えて、バロンは珍しく笑った。
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