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――私を孤独に追い込んだあいつらが許せない……
また声が聞こえた。まるで自分が考えているように錯覚してしまいそうな声だ。しかし、先程から聞こえるその言葉達には、心当たりが全く無い。
だが、次に聞こえた台詞に彼女はやっと合点が行った。
――虐めなんてする奴らは、みんな滅びれば良いんだ……
“虐め”と言う単語には身に覚えがある。多分奴は悪魔か何かの類で、彼女の過去の虐めの記憶を読み取り復讐させる代償に、魂か何かを奪おうという魂胆なのだろう。
コスプレ変態野郎のストーカーかとも考えたが、違う。そう言うものとは一線を画す気配、重々しい空気を感じるのだ。
『その願い、叶えてやろうか……』
案の定次の段階に進んだ。一際ハッキリと声が響く。先程までとは違う、地を這うように低い、男の声だ。
さて、どうしたものかと彼女は考える。こう言う悪魔の甘言的なものには反応しないのが鉄則だと漫画や小説で散々読んだ。勿論魂などくれてやるつもりはいし、復讐にも興味が無い。
この人ならざるものは上手く彼女の心の内を代弁したつもりかもしれないが、全く持って見当違いも良い所である。
実際は、退職に追い込まれた虐めはブラックな会社から逃げる良い口実になっただけだし、出ると思っていなかった退職金も出た。今までろくに休めず、使わずに貯め込んでいた貯金とで、暫くは遊んで暮らすつもりで居るくらいだ。
引き篭もりだ喪女だと言う者も居るが、ただ自由を謳歌しているだけだと彼女は思っていた。
27にもなって恋人はおろか友人すら居ないのは、ほんの少し寂しく感じているのも事実ではあるのだが、復讐など面倒な事は一度も考えた事が無い。
考えていると、向けられていた刺すような視線が、何故かふと消えたような気がした。不思議に思い、白い顔に再び視線を向けた彼女は気が付いた。
この人ならざるものは、よく見ると綺麗な顔をしていたのだ。一瞬見惚れたその美しい顔が、ぐらりと傾く。
バタンッ!!
大きな物音に驚き、彼女は咄嗟に後ろを振り返ってしまう。しまったと思ったが、視線の先にあるものに目を疑った。
「……えっ?!」
ベッドの下、フローリングの床に大きな物体が転がっている。先程までゲーム機の画面越しに見ていた、人ならざるもののようだ。
錯覚、妄想、拭い切れないそんな考えがどこかにあったが、現実で間違いなさそうだ。
「本物……」
ソレは目を閉じ、苦悶の表情を浮かべて倒れている。顔色が悪く見えたのは本当に具合が悪かったらしい。
「え? や、えぇぇ……?」
また声が聞こえた。まるで自分が考えているように錯覚してしまいそうな声だ。しかし、先程から聞こえるその言葉達には、心当たりが全く無い。
だが、次に聞こえた台詞に彼女はやっと合点が行った。
――虐めなんてする奴らは、みんな滅びれば良いんだ……
“虐め”と言う単語には身に覚えがある。多分奴は悪魔か何かの類で、彼女の過去の虐めの記憶を読み取り復讐させる代償に、魂か何かを奪おうという魂胆なのだろう。
コスプレ変態野郎のストーカーかとも考えたが、違う。そう言うものとは一線を画す気配、重々しい空気を感じるのだ。
『その願い、叶えてやろうか……』
案の定次の段階に進んだ。一際ハッキリと声が響く。先程までとは違う、地を這うように低い、男の声だ。
さて、どうしたものかと彼女は考える。こう言う悪魔の甘言的なものには反応しないのが鉄則だと漫画や小説で散々読んだ。勿論魂などくれてやるつもりはいし、復讐にも興味が無い。
この人ならざるものは上手く彼女の心の内を代弁したつもりかもしれないが、全く持って見当違いも良い所である。
実際は、退職に追い込まれた虐めはブラックな会社から逃げる良い口実になっただけだし、出ると思っていなかった退職金も出た。今までろくに休めず、使わずに貯め込んでいた貯金とで、暫くは遊んで暮らすつもりで居るくらいだ。
引き篭もりだ喪女だと言う者も居るが、ただ自由を謳歌しているだけだと彼女は思っていた。
27にもなって恋人はおろか友人すら居ないのは、ほんの少し寂しく感じているのも事実ではあるのだが、復讐など面倒な事は一度も考えた事が無い。
考えていると、向けられていた刺すような視線が、何故かふと消えたような気がした。不思議に思い、白い顔に再び視線を向けた彼女は気が付いた。
この人ならざるものは、よく見ると綺麗な顔をしていたのだ。一瞬見惚れたその美しい顔が、ぐらりと傾く。
バタンッ!!
大きな物音に驚き、彼女は咄嗟に後ろを振り返ってしまう。しまったと思ったが、視線の先にあるものに目を疑った。
「……えっ?!」
ベッドの下、フローリングの床に大きな物体が転がっている。先程までゲーム機の画面越しに見ていた、人ならざるもののようだ。
錯覚、妄想、拭い切れないそんな考えがどこかにあったが、現実で間違いなさそうだ。
「本物……」
ソレは目を閉じ、苦悶の表情を浮かべて倒れている。顔色が悪く見えたのは本当に具合が悪かったらしい。
「え? や、えぇぇ……?」
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